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第2章
信じることから始めよう 10
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今日はフォーマルを着るべきか?
貴族としての生活は、たとえ自邸内でも周囲に非常に気を遣う。
その場その場に相応しい服装を間違いなく着用しないと、後から何を言われるか分からない。
俺は考えるのが面倒になり、執事を呼び鈴で呼び出した。
気難しい年配の執事は俺の見張り役を兼ねているようで、銀縁眼鏡の奥の瞳がいつも冷ややかで、気に入らない。
「お呼びでございますか」
「なぁ、父に呼ばれているが、何を着て行けばいい?」
「……坊ちゃま、その位の事は、もうお一人で判断されませんと」
「なんだよ、急に……」
「……こちらでよろしいのでは」
「わかった」
執事に着替えを手伝ってもらいながら、また頭の中で君のことを考えていた。
君はどこの大学に通っているのか。
大学では、どんなクラブに入ったのか。
俺は乗馬をやっているよ。
何故あの日が最後だと、勝手に決別して消えてしまったのか。
もしかして、進学先が言い出せないレベルだったのか。
君の背景は何も知らないが、君自体が好きなんだ。
だから、どんな君でもいい。
まだ諦めない。
諦めていないよ。
湖に続く道に書かれた『YOU&I』という文字が、俺を勇気づけてくれる。
あの日、君は絶対に近くにいた。
まだロンドンにいるはずだ!
絶対探してみせる!
「やれやれ、タイが曲がっておりますよ。もういい加減に覚えてください」
「これも執事の仕事だろう」
「なるほど……アーサー様がこんな調子で私に依存しているからなんですね、今回の配置は……」
「ん? 何のことだ?」
「いえ、そろそろお時間です。旦那さまがお待ちです」
「あぁ、終わったら部屋に紅茶を持ってきてくれよ」
「……そうですね。後任の者が持参するでしょう」
「後任? お前、俺の仕事を放棄するのか」
今日の執事はいつになく口が悪いなと苦笑しながら、父の書斎に向かった。
俺に紹介したいという人は、まだ部屋にいなかった。
「父様、一体、誰を紹介して下さるのですか」
「あぁ、お前専属の執事を雇ったんだ。まぁ正確には違うが……とにかくお前には、もう少し次期当主としての威厳を持ってもらわないとな」
「はぁ?」
今更、俺専属の執事? 今度はどんなお目付け役だよ? それとも素行調査のための探偵もどきか。
嫌な気分になってしまった。
「次期当主らしく執事に仕えさせる練習にもなるだろう。お前にとっても実地研修になるな」
父の言っている意味がよく分からなかったが、どうやら新しい執事をあてがわれるようだ。
どんな奴でも構わない。
ただ命令通りに、俺の世話を四六時中する人間だ。
「よし、待たせたね。では入りなさい」
相手は、部屋の扉の向こうに待機していたらしい。
最初に顔を出したのは、屋敷の筆頭執事だった。
その後ろに、ぴったりと若い男性が控えていた。
おいおい、今度の執事は随分若いようだな。
しかし陰に隠れてよく見えないじゃないか。
「ルイ、さぁ前に出なさい」
「……はい」
俯いたまま俺の前に立った青年に目を向けた時、心臓が跳ねた。
えっ、似てる。
短い返事も、背格好もその黒髪も、何だか……
まさか……
「か、顔を上げてくれ」
執事らしいタキシード姿で、前髪を後ろにしっかり整えているが……
「……はい」
青年は俯いていたが、意を決したように顔を上げた。
その顔を見て、思わず息を呑んだ。
だって……だって、君は……
君じゃないか!
貴族としての生活は、たとえ自邸内でも周囲に非常に気を遣う。
その場その場に相応しい服装を間違いなく着用しないと、後から何を言われるか分からない。
俺は考えるのが面倒になり、執事を呼び鈴で呼び出した。
気難しい年配の執事は俺の見張り役を兼ねているようで、銀縁眼鏡の奥の瞳がいつも冷ややかで、気に入らない。
「お呼びでございますか」
「なぁ、父に呼ばれているが、何を着て行けばいい?」
「……坊ちゃま、その位の事は、もうお一人で判断されませんと」
「なんだよ、急に……」
「……こちらでよろしいのでは」
「わかった」
執事に着替えを手伝ってもらいながら、また頭の中で君のことを考えていた。
君はどこの大学に通っているのか。
大学では、どんなクラブに入ったのか。
俺は乗馬をやっているよ。
何故あの日が最後だと、勝手に決別して消えてしまったのか。
もしかして、進学先が言い出せないレベルだったのか。
君の背景は何も知らないが、君自体が好きなんだ。
だから、どんな君でもいい。
まだ諦めない。
諦めていないよ。
湖に続く道に書かれた『YOU&I』という文字が、俺を勇気づけてくれる。
あの日、君は絶対に近くにいた。
まだロンドンにいるはずだ!
絶対探してみせる!
「やれやれ、タイが曲がっておりますよ。もういい加減に覚えてください」
「これも執事の仕事だろう」
「なるほど……アーサー様がこんな調子で私に依存しているからなんですね、今回の配置は……」
「ん? 何のことだ?」
「いえ、そろそろお時間です。旦那さまがお待ちです」
「あぁ、終わったら部屋に紅茶を持ってきてくれよ」
「……そうですね。後任の者が持参するでしょう」
「後任? お前、俺の仕事を放棄するのか」
今日の執事はいつになく口が悪いなと苦笑しながら、父の書斎に向かった。
俺に紹介したいという人は、まだ部屋にいなかった。
「父様、一体、誰を紹介して下さるのですか」
「あぁ、お前専属の執事を雇ったんだ。まぁ正確には違うが……とにかくお前には、もう少し次期当主としての威厳を持ってもらわないとな」
「はぁ?」
今更、俺専属の執事? 今度はどんなお目付け役だよ? それとも素行調査のための探偵もどきか。
嫌な気分になってしまった。
「次期当主らしく執事に仕えさせる練習にもなるだろう。お前にとっても実地研修になるな」
父の言っている意味がよく分からなかったが、どうやら新しい執事をあてがわれるようだ。
どんな奴でも構わない。
ただ命令通りに、俺の世話を四六時中する人間だ。
「よし、待たせたね。では入りなさい」
相手は、部屋の扉の向こうに待機していたらしい。
最初に顔を出したのは、屋敷の筆頭執事だった。
その後ろに、ぴったりと若い男性が控えていた。
おいおい、今度の執事は随分若いようだな。
しかし陰に隠れてよく見えないじゃないか。
「ルイ、さぁ前に出なさい」
「……はい」
俯いたまま俺の前に立った青年に目を向けた時、心臓が跳ねた。
えっ、似てる。
短い返事も、背格好もその黒髪も、何だか……
まさか……
「か、顔を上げてくれ」
執事らしいタキシード姿で、前髪を後ろにしっかり整えているが……
「……はい」
青年は俯いていたが、意を決したように顔を上げた。
その顔を見て、思わず息を呑んだ。
だって……だって、君は……
君じゃないか!
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