ランドマーク ~そこに君がいてくれるから~

志生帆 海

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第2章

信じることから始めよう 9

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 とても美しい英国式庭園イングリッシュ・ガーデンだった。

 渡された地図を指で辿り、確認してみる。

 ここが『フォーマルガーデン』か。

 広大なイギリスの伝統的な整形式庭園だな。

 お城のように巨大な屋敷の前方に広がる庭には、植栽と常緑樹の垣根が整然と並び、石の彫刻や噴水、外壁などで落ち着いた雰囲気をつくり出していた。

 庭といっても寛ぐためというより、貴族の館としての威厳と格式を高めるような存在だ。

 背筋を伸ばして真っ直ぐに歩きたくなるな。

『フォーマルガーデン』を抜けて奥に入ると、景色が突然ガラッと変わった。

 地図によると『コテージ・ガーデン』のエリアに入ったようだ。

 イギリスの田園地方を表現した庭で井戸があり、ハーブやリンゴ、さくらんぼ、ブルーベリーなどの果樹などが植えられ、庶民の温かな生活感を醸し出していた。

 ここは落ち着く……

 植物と趣のある古いレンガの折り重なる小径はイギリスの長閑な雰囲気が味わえ、次々と美しい花が咲き誇るのだろう。

 僕は何故か懐かしく、優しい気持ちになっていた。

「あ、あそこに、うさぎがいる」

 庭には柵で囲まれたエリアがあり、そこに白うさぎと茶系のうさぎが跳ねていた。

 その光景にあのクリスマスイブ……ロンドンから離れた田舎の小径を君と歩いたのを思い出す。

 僕の君……元気? 

 今どこにいる?

 柵の中に入って、兎を間近で見つめた。赤い目のは僕のよう。こっちの茶系のは、なんだか君のようだね。

 草むらにしゃがんで仲睦まじい様子をうっとり見つめていると、突然背後から声がかかった。

「君は誰?」












 慌てて振り返ると、ボールを手に持った少年が立っていた。
 
「あっ……」

 すぐに返事が出来ないのは、少年の髪が綺麗なアッシュブロンドだったから。

「ここは兄さまのお気に入りのお庭だよ。許可もなく勝手に入るなんて。それに見ない顔だね」
「申し訳ありません。私は……」

 きっとこの少年はお屋敷のご子息だ。

 そう思うと、無礼な事をしてしまったと、一気に気が引き締まる。

 ここではもう『僕』ではなく『私』の世界なのだ。

 更に『フォーマルガーデン』の方から、僕を呼ぶ声が響いた。

「ルイ、どこにいるんだ? そろそろ戻って来なさい」
「あっ! 申し訳ありません。今行きます。あ、あの……」
「いいよ。もう行って!」
「後ほど、きちんとご挨拶いたします。僕……私はルイと申します」
「ふぅん……」

 少年はさして関心がなさそうに、もう背を向けて走り出していた。

 きっと、どこかへ遊びにいく途中だったのだろう。


****

「ただいま戻りました」
「アーサーか、お帰り。着替えたらもう一度書斎に来てくれ。お前に紹介したい人がいる」
「……? 分かりました」

 珍しいな、こんな時間に来客なんて。

 不思議に思いながら廊下を歩いた。

 回廊の窓からふと屋敷前に広がるフォーマルガーデンに目をやると、ハッとする光景が目に入った。
 
 あれは……?

 執事と歩いているのは……誰だ?

 遠目でよく見えない。

 あぁ曲がってしまうのか。

 タキシード姿の黒髪の男性のようだが……

 この屋敷の中で黒髪を見る事は滅多にないので、ドキっとしてしまう。

「あーあ、俺って相当……重症だな。黒髪でほっそりした青年を見かける度に過敏に反応し過ぎだろう」


 



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