重なる月

志生帆 海

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第7章 

期待と不安 2

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【R18】

 涼は躰の力を抜いてベッドに身を委ねるようにしてくれたので、そっとその膝を立てるようにして足を大きく割り開いて、涼の秘所をじっくりと眺めた。恥ずかしいのだろう。微かにそこがひくついている。

「涼のここ綺麗だ……本当に……俺しか知らないから」
「安志さん……お願い。そんなにじっくり見ないでよ、恥ずかしくなる」

 手を顔の前で交差させ、赤く染まった顔を隠そうとする涼のいつもの仕草。顔を覆う涼の手を掴んで頭上で一つに押さ込んで、キスをしてやる。そのまま首筋をなぞるように舌を這わし、さらにもう片方の指にジェルをたっぷりつけ涼の中を慣らしていく。上からも下からも涼を感じさせていくと、堪えきれない声が漏れだしていくのを俺は知っているから。

「あっ、く……うぅ…」

 指を何度も抜き差しして、くちゅくちゅと卑猥な音が立つ頃には、涼がきつく目を閉じて震えてくるので、そっとその頬を撫でてやる。

「涼、大丈夫か。力抜いて」

 熟れて来たそこへ指を奥深くまで差し込んで、かき混ぜるように中を探り、涼の感じる部分を的確に擦っていく。

「涼、ここ気持ちいいか」

 もう我慢できない表情で、涼がコクコクと頷く。

 もっと感じさせて、気持ち良くさせてやりたい。もっと感じる躰にさせたい。もっと俺が欲しくなるように、もっと俺を求めてくれるように……緩やかな愛撫で涼がじれったくなって、俺を強く欲しがって欲しい。

 俺はこんな人間だったのかと呆れるほど、涼のことが愛おしいんだ。

「安志さん……もう挿れて……欲しい。ここ変になるから」

 やがて、ふるふると涙目の涼がもう我慢できないといったような、甘い声で誘ってくれる。それが合図のように俺は涼の尻をぐいっと力強く抱え上げ、赤く熟れて震える窄まりに一気に高まったものを押し付けて、押し入れていく。

「は、あっ……」

 一気に根元まで押し進めると涼の細身の躰が腹の下で大きく震えた。そして震える手を俺に向けて、伸ばしてくれる。まるでねだるような仕草だ。

「んっ……ん……あっ…あっ」

 次第に快楽の波に乗った涼は胸を大きく上下させて喘ぎだす。可愛いこの声……この表情は全部俺のものだ。今この時だけは。

「うっ……あっ……」
「くっ」

 そう思うと自分自身の興奮も更に高まり、涼も感じれば感じるほど中を収斂させてくるので、もう耐えられず、最奥目指して熱を一気に弾けさせた。涼の方もほぼ同じタイミングで弾けたらしく、白濁のものが俺の腹に届いた。

「大丈夫か。涼の中すごく気持ち良かったぞ」

 感極まった涼の頬をそっと撫でてやると、涼は面映ゆい顔をした。絶頂の気持ち良さ、涼を抱けた満足感、共に達した満足感。いろんな幸せを感じるんだ。涼……君を抱くと。

「本当に好きだ」

 そう耳元で囁くと、涼の方も俺が望む答えを届けてくれる。

「安志さんだけだ。安志さんが好き」

 モデルという世界に進もうとしている君を引き留めたりはしない。涼の活躍を願っていることは本心だ。だがそれによって俺たちがどうなっていくのか、一抹の不安もあるのが事実だ。ここ数日そのことで気を揉んでいたが、こうやって新しい年になってすぐに涼を思う存分抱いて…その不安はいくらか薄らいでいった。

 きっと大丈夫だ。俺達。
 何があっても……そう信じよう。


 そのまま涼を風呂場へ抱いて連れて行き綺麗に処理してやり、いつものパジャマを着せてやった。風呂上がりで上気した桜色の頬にまた欲情しそうになったが、ぐっと我慢して、手を繋いで一緒に朝日が昇るまで眠った。

 こんな幸せな日が、今年、何度も迎えられますように。


****

 プルルル…プルル…

 朝になり、電話の呼び出し音で目が覚めた。

 こんな朝早くに誰だ?

 涼はまだぐっすりと眠っているので、起こさないようにそっとベッドを抜け出し、受話器を取った。


「もしもし」
「あっ安志?」

 その声の主は洋だったので一気に目が覚めていく。今の洋は俺にとって大事な幼馴染で大事な友人であり、一生の友と呼べる人だ。

「おっおう」
「あっ……ごっごめん、もしかしてまだ寝ていた? 」

 何かを察知したように焦った声に洋がなっていくのが、なんだかおかしかった。きっと……今、涼と一緒だってバレバレなんだろうな。寝ぐせのついた髪を手で押さえながら、俺は思わず微笑んでしまった。

「いや、もう大丈夫」
「そうかよかった。えっと安志、新年あけましておめでとう!」
「おめでとう。今年もよろしくな。で、なんだよ、そんな改まって」
「あっうん。あのさっ俺、安志に報告があるんだ」

 洋の声はいつもよりずっと弾んでいたので、いい報告だなと思うと、俺の心もぱっと明るくなった。

「洋、何かいいことあったみたいだな」
「えっ分かる? 」
「バレバレだ」
「ふふっ」

 くすぐったそうに笑う洋の声にはっとする。改めてこんな風に洋の幸せそうな笑い声を聞くと嬉しくなるものだな。電話越しだから一層そう思うのだろうか……新年早々届いた洋の幸せそうな声は、涼を抱いて幸せな朝を迎えたばかりの俺の気分も一層よくしてくれた。

 あぁこんな風に感じられて良かった。そう心から感じることが出来た。
 それは俺がもう完全に洋のことを吹っ切れていると、実感できる瞬間だった。

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