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小学生編
しあわせ図鑑 8
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「えっ、お父さん、行けないの?」
夏休みに入って最初の週末。
日曜日は、車で江の島の海に遊びに行く予定だった。
それが急にキャンセルになってしまったもんだから、芽生はがっくりと肩を落とした。
「……ボク、すっごく楽しみにしていたのに……」
やっちまったな。
「ごめんな、急に仕事入って、昼には出ないと間に合わないんだ」
「そっか……」
「瑞樹と二人で行ってくるか」
「……ううん、家族全員で行きたかったから、いいよ」
「……芽生くん」
あーあ、拗ねちまったな。
無理もない。やっと一緒に夏休みらしいことができると思っていた芽生にとって、この日曜は特別な意味を持っていたのだろう。
瑞樹もどうしたものかと、悩んでいるようだ。
「……うーん」
何か芽生が喜ぶことはないだろうか。
いつもと違った特別な何かがいいよな。
その時、先日兄から電話があって、「日曜日は空いているか」と聞かれ、海に行くからと断ったことを思い出した。
「じゃあさ、兄さんを家に呼ぶのはどうだ? この前電話があって、芽生に会いたがっていたし」
「……ほんと? 憲吾おじさん来てくれるの?」
芽生の表情がぱっと明るくなる。
早速兄さんに電話すると、二つ返事で来てくれることになった。
「じゃあ、宗吾が出かけた頃にお邪魔するよ。ちょうど芽生にいい話があって、直接誘いたかったんだ」
……兄さんも変わったな。
口調も雰囲気も、何もかも。
電話口の向こうで、きっといい笑顔を浮かべているんだろうな。
「よし、芽生、兄さん、OKだってさ。瑞樹、そうしてもいいか?」
瑞樹も内心、俺が出かけてしまうのが寂しいようだったので、笑顔になってくれた。
やっぱり兄さんの人気、爆上がりだな。
「憲吾さんに会えるのですか、嬉しいです」
「そうだ! お兄ちゃん、ボク、おじさんが来てくれたら、なんか作っておもてなししたいな!」
「うんうん、じゃあデザートを作ってみようか」
瑞樹も、芽生の提案に頷いた。
「何がいいかな?」
「そうだね、暑い中来てくれるのだから、爽やかで元気になるような……そうだ、大沼のお母さんに聞いてみようか」
「お兄ちゃん、いいね! 大沼のおばあちゃん、おしゃれなお菓子いっぱい知ってるもんね!」
瑞樹は、すぐに大沼の実家へ電話をかけた。
これは、実にいい傾向だ。
君はもう一人で頑張らなくていいんだ。
君の周りには、頼れる人が大勢いるし、頼ってもらいたい人が大勢いるのだから。
「お母さん、僕です」
「まぁ、瑞樹なの。変わりはない?」
「うん、元気にしてるよ。実は明日、憲吾さんがうちに来てくれることになって、何か手作りの冷たいお菓子を作って迎えたいんだけど、いいアイディアないかなって」
息子らしく可愛く甘える瑞樹に、思わず笑みが漏れる。
「あら、ちょうどいいわ。この夏、ログハウスの前にキッチンカーを出して、ちょっとした森のカフェをやることになったの。それで試作でレモンゼリーを作ったら、すごくおいしくできてね」
「レモンゼリー? それ、いいね!」
「レモンの皮を少しすりおろして入れると、風味がぐっと爽やかになるのよ。ハーブも少し飾るときれいよ」
「ハーブなら育てているよ」
「じゃあレシピを教えてあげるわ」
「いいの?」
「ふふっ、瑞樹には特別ね」
「ありがとう、お母さん」
瑞樹は、レシピのメモを取りながら、口元を緩めていた。
芽生も隣で目を輝かせ、早速冷蔵庫を開けに走っていった。
「あっ、レモンあったよ、おじさん! 絶対に喜んでくれるよね!」
「よかったな」
「やったー!」
芽生はレモンを見つけて大喜びだ。
「宗吾さん、僕、頑張ってみます!」
「任せたよ。瑞樹がいてくれるから助かるよ」
「お役に立てて嬉しいです」
芽生と瑞樹の明るい笑顔に、俺も思わず破顔する。
日曜の午後。
予定が一つ変わったことにより、芽生の夏はまた違う色に染まっていくようだ。
でもそれは、ちゃんと嬉しい、幸せな色だった。
なぁ、芽生……
物事がスムーズに進まなくても、いろんな道がある。
だから焦らず楽しめ。
人生って、案外そういうもんだ。
おまけ
夏休みスペシャルとして妄想レシピを付録として掲載します。
基本のゼリーのレシピからのアレンジなので、たぶん大丈夫なはず。私も作ってみます!
*****
『北国のひんやりレモンゼリー🍋🍃』
瑞樹、これはね、キュンと冷たくて甘酸っぱい、まるで初恋のようなゼリーよ。作ってみてね。
― 北国の森のくまさんカフェより
🍋材料(4人分)
レモン果汁 大さじ3(約1.5個分)
レモンの皮のすりおろし(国産のレモンがよい) 少々
水 300ml
砂糖 大さじ3
粉ゼラチン 5g
ミント適量(飾り用)
◇作り方
ゼラチンは大さじ2の水(分量外)でふやかしておく。
小鍋に水とお砂糖を入れて中火にかけて、お砂糖が溶けたら火を止める。
そこにゼラチンを加えて、ヘラで混ぜる。
粗熱が取れたらレモン果汁とすりおろしたレモンの皮を加えてよく混ぜる。
ガラスの器に注いで、冷蔵庫で2~3時間冷やして固めれば完成。
仕上げにミントやレモンのスライスを飾るのがおすすめ。
◆大沼のお母さんからのプチ、アドバイス
仕上げにハチミツを少し垂らすとまろやかになるわよ。
夏休みに入って最初の週末。
日曜日は、車で江の島の海に遊びに行く予定だった。
それが急にキャンセルになってしまったもんだから、芽生はがっくりと肩を落とした。
「……ボク、すっごく楽しみにしていたのに……」
やっちまったな。
「ごめんな、急に仕事入って、昼には出ないと間に合わないんだ」
「そっか……」
「瑞樹と二人で行ってくるか」
「……ううん、家族全員で行きたかったから、いいよ」
「……芽生くん」
あーあ、拗ねちまったな。
無理もない。やっと一緒に夏休みらしいことができると思っていた芽生にとって、この日曜は特別な意味を持っていたのだろう。
瑞樹もどうしたものかと、悩んでいるようだ。
「……うーん」
何か芽生が喜ぶことはないだろうか。
いつもと違った特別な何かがいいよな。
その時、先日兄から電話があって、「日曜日は空いているか」と聞かれ、海に行くからと断ったことを思い出した。
「じゃあさ、兄さんを家に呼ぶのはどうだ? この前電話があって、芽生に会いたがっていたし」
「……ほんと? 憲吾おじさん来てくれるの?」
芽生の表情がぱっと明るくなる。
早速兄さんに電話すると、二つ返事で来てくれることになった。
「じゃあ、宗吾が出かけた頃にお邪魔するよ。ちょうど芽生にいい話があって、直接誘いたかったんだ」
……兄さんも変わったな。
口調も雰囲気も、何もかも。
電話口の向こうで、きっといい笑顔を浮かべているんだろうな。
「よし、芽生、兄さん、OKだってさ。瑞樹、そうしてもいいか?」
瑞樹も内心、俺が出かけてしまうのが寂しいようだったので、笑顔になってくれた。
やっぱり兄さんの人気、爆上がりだな。
「憲吾さんに会えるのですか、嬉しいです」
「そうだ! お兄ちゃん、ボク、おじさんが来てくれたら、なんか作っておもてなししたいな!」
「うんうん、じゃあデザートを作ってみようか」
瑞樹も、芽生の提案に頷いた。
「何がいいかな?」
「そうだね、暑い中来てくれるのだから、爽やかで元気になるような……そうだ、大沼のお母さんに聞いてみようか」
「お兄ちゃん、いいね! 大沼のおばあちゃん、おしゃれなお菓子いっぱい知ってるもんね!」
瑞樹は、すぐに大沼の実家へ電話をかけた。
これは、実にいい傾向だ。
君はもう一人で頑張らなくていいんだ。
君の周りには、頼れる人が大勢いるし、頼ってもらいたい人が大勢いるのだから。
「お母さん、僕です」
「まぁ、瑞樹なの。変わりはない?」
「うん、元気にしてるよ。実は明日、憲吾さんがうちに来てくれることになって、何か手作りの冷たいお菓子を作って迎えたいんだけど、いいアイディアないかなって」
息子らしく可愛く甘える瑞樹に、思わず笑みが漏れる。
「あら、ちょうどいいわ。この夏、ログハウスの前にキッチンカーを出して、ちょっとした森のカフェをやることになったの。それで試作でレモンゼリーを作ったら、すごくおいしくできてね」
「レモンゼリー? それ、いいね!」
「レモンの皮を少しすりおろして入れると、風味がぐっと爽やかになるのよ。ハーブも少し飾るときれいよ」
「ハーブなら育てているよ」
「じゃあレシピを教えてあげるわ」
「いいの?」
「ふふっ、瑞樹には特別ね」
「ありがとう、お母さん」
瑞樹は、レシピのメモを取りながら、口元を緩めていた。
芽生も隣で目を輝かせ、早速冷蔵庫を開けに走っていった。
「あっ、レモンあったよ、おじさん! 絶対に喜んでくれるよね!」
「よかったな」
「やったー!」
芽生はレモンを見つけて大喜びだ。
「宗吾さん、僕、頑張ってみます!」
「任せたよ。瑞樹がいてくれるから助かるよ」
「お役に立てて嬉しいです」
芽生と瑞樹の明るい笑顔に、俺も思わず破顔する。
日曜の午後。
予定が一つ変わったことにより、芽生の夏はまた違う色に染まっていくようだ。
でもそれは、ちゃんと嬉しい、幸せな色だった。
なぁ、芽生……
物事がスムーズに進まなくても、いろんな道がある。
だから焦らず楽しめ。
人生って、案外そういうもんだ。
おまけ
夏休みスペシャルとして妄想レシピを付録として掲載します。
基本のゼリーのレシピからのアレンジなので、たぶん大丈夫なはず。私も作ってみます!
*****
『北国のひんやりレモンゼリー🍋🍃』
瑞樹、これはね、キュンと冷たくて甘酸っぱい、まるで初恋のようなゼリーよ。作ってみてね。
― 北国の森のくまさんカフェより
🍋材料(4人分)
レモン果汁 大さじ3(約1.5個分)
レモンの皮のすりおろし(国産のレモンがよい) 少々
水 300ml
砂糖 大さじ3
粉ゼラチン 5g
ミント適量(飾り用)
◇作り方
ゼラチンは大さじ2の水(分量外)でふやかしておく。
小鍋に水とお砂糖を入れて中火にかけて、お砂糖が溶けたら火を止める。
そこにゼラチンを加えて、ヘラで混ぜる。
粗熱が取れたらレモン果汁とすりおろしたレモンの皮を加えてよく混ぜる。
ガラスの器に注いで、冷蔵庫で2~3時間冷やして固めれば完成。
仕上げにミントやレモンのスライスを飾るのがおすすめ。
◆大沼のお母さんからのプチ、アドバイス
仕上げにハチミツを少し垂らすとまろやかになるわよ。
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