922 / 1,865
小学生編
積み重ねるのも愛 1
しおりを挟む
水族館を堪能して時計を見ると、もう16時過ぎだった。
楽しい時間は、過ぎるのが早いな。
「さーてと、そろそろ帰るか」
「えー!! もう?」
芽生は今日遊園地に来られると思っていなかったので、ずっとハイテンションだった。だから案の定、途端にふくれっ面になってしまった。
「ボク……まだ、いたい! ここで、もっとあそびたいよ。のってないのいっぱいあるよ」
「おいおい、もう日が暮れちゃうぞ。今日はもともと買い物だけのつもりだったんだから贅沢言うな」
「……でもぉ」
芽生が俯いて、ほっぺたをぷぅと膨らませた。
「ほら、行くぞ!」
「やっぱり、いや! もっとあそぶ!」
俺はこういう時になかなか優しくできないので、ついキツい言葉を投げつけてしまった。
「芽生、あんまり我が儘言うな! ちょっと聞き分けないぞ!」
あっ、しまった……またやっちまった。
「うう……パパなんてキライ! あっ……」
芽生も俺に似て、こういう時は急に負けん気が強くなって言い返してくる。でも瑞樹に似た優しさも持っているから、すぐにその言葉を後悔して、うるうると涙を浮かべた。
「ううっ……ぐすん」
俺と芽生の様子を傍でじっと見守っていた瑞樹が、流石に我慢できない様子で、芽生の前にしゃがみ込んだ。
「宗吾さん、あのっ、僕、少し芽生くんと話しても?」
「あぁ……ごめん。俺も言い過ぎた、その……頼むっ」
あぁ……まだまだだな。
父親として俺は本当に未熟だ。母親がいない分、二倍の愛で包んでやりたいと思っているのに、あんなにキツい言い方をしてしまうなんて。
それにしても……芽生からの『パパなんてキライ』には凹んだ。
「宗吾さん、大丈夫ですよ」
瑞樹が俺の落ち込みを察してニコッと微笑んでくれるのが、天使のように見えた。
「芽生くん、もっといたいんだね、どうしてかな?」
「うん……楽しかったから。お兄ちゃんもパパも、すごくごきげんで楽しそうだったからぁ……」
芽生の切ない理由に、胸が痛くなった。
こんなに純粋に俺と瑞樹の笑顔を喜んでくれていたのか。悪い事したな。
「芽生くん、そうなんだね。僕も帰りたくないよ。芽生くんの笑顔が可愛くて、宗吾さんが楽しくって……とても名残惜しいよ」
お? そう来るのか。
事の成り行きを見守ることにした。
「お兄ちゃんも?」
「うん、そうなんだ」
「あのね……お兄ちゃんも? いっしょのキモチなの?」
「そうだよ」
「わぁ……うれしいよ」
芽生の涙は笑顔に変わり、頑なな心は解けていく。
「そうなんだ。だから今度はもっと早くからゆっくり来ない? 今日はもう暗くなってきて、寒いから」
「そうだね、その方がいいね。お兄ちゃんがおカゼひいたら、イヤだもん」
あぁ、こんな風に芽生の優しさを引きだしてくれる瑞樹が、俺は大好きだ。
胸の奥が熱くなってくる。
「芽生くん、ありがとう。パパもお風邪ひいたらイヤだもんね」
「あ……うん、パパぁ……さっきはごめんなさい」
「芽生! いいんだよ。パパも悪かった。ごめんな、乱暴だった」
「ううん。そんなことないよ! パパはつよくて、かっこよいよ」
「コイツ! かわいいことを」
芽生の言葉が、本当に有り難かった。
こんな俺を心から慕ってくれる我が子が、愛おしい。
「パパ、だっこー」
「おーし」
芽生を思いっきり高く抱っこしてやると、黒い瞳をキラキラと輝かせていた。
「パパ、だいすきだよ」
ちょっと冷えた、ぷるぷるの頬を擦り寄せてくれたので、俺もすりすりしてやった。
「わー! おひげくすぐったい」
「宗吾さんってば」
「はは、なんかホッとしたよ」
「また来ましょう。僕も来たいです! 思い出は何度でも積み重ねて行けばいいんですね」
「そうさ!」
マリンラインでの帰り道、ダウンコートの袖に隠れて、俺と芽生と瑞樹は手を繋ぎあった。
「えへ、ボクたち、チームだね」
「おう!」
「そうだね」
「あー はやくお家にかえって、コタツで、ぬくぬくしたいな~」
「いいね」
今日の寄り道は終わりだが、またしよう。
外は冷えてきたが、ポカポカな気持ちで帰ろう!
次は函館旅行だな。
それまで頑張って働こう!
「宗吾さん、明日からまた仕事が少し忙しくなりますが、今日の思い出と、これからの楽しみがあるので、頑張れます」
「俺も同じ気持ちだよ」
「ボクもしゅくだいがんばるよー」
みんなが同じ気持ちで前に向かっている。
ワクワク、ドキドキ。
日常がこんなに楽しいなんて――
楽しい時間は、過ぎるのが早いな。
「さーてと、そろそろ帰るか」
「えー!! もう?」
芽生は今日遊園地に来られると思っていなかったので、ずっとハイテンションだった。だから案の定、途端にふくれっ面になってしまった。
「ボク……まだ、いたい! ここで、もっとあそびたいよ。のってないのいっぱいあるよ」
「おいおい、もう日が暮れちゃうぞ。今日はもともと買い物だけのつもりだったんだから贅沢言うな」
「……でもぉ」
芽生が俯いて、ほっぺたをぷぅと膨らませた。
「ほら、行くぞ!」
「やっぱり、いや! もっとあそぶ!」
俺はこういう時になかなか優しくできないので、ついキツい言葉を投げつけてしまった。
「芽生、あんまり我が儘言うな! ちょっと聞き分けないぞ!」
あっ、しまった……またやっちまった。
「うう……パパなんてキライ! あっ……」
芽生も俺に似て、こういう時は急に負けん気が強くなって言い返してくる。でも瑞樹に似た優しさも持っているから、すぐにその言葉を後悔して、うるうると涙を浮かべた。
「ううっ……ぐすん」
俺と芽生の様子を傍でじっと見守っていた瑞樹が、流石に我慢できない様子で、芽生の前にしゃがみ込んだ。
「宗吾さん、あのっ、僕、少し芽生くんと話しても?」
「あぁ……ごめん。俺も言い過ぎた、その……頼むっ」
あぁ……まだまだだな。
父親として俺は本当に未熟だ。母親がいない分、二倍の愛で包んでやりたいと思っているのに、あんなにキツい言い方をしてしまうなんて。
それにしても……芽生からの『パパなんてキライ』には凹んだ。
「宗吾さん、大丈夫ですよ」
瑞樹が俺の落ち込みを察してニコッと微笑んでくれるのが、天使のように見えた。
「芽生くん、もっといたいんだね、どうしてかな?」
「うん……楽しかったから。お兄ちゃんもパパも、すごくごきげんで楽しそうだったからぁ……」
芽生の切ない理由に、胸が痛くなった。
こんなに純粋に俺と瑞樹の笑顔を喜んでくれていたのか。悪い事したな。
「芽生くん、そうなんだね。僕も帰りたくないよ。芽生くんの笑顔が可愛くて、宗吾さんが楽しくって……とても名残惜しいよ」
お? そう来るのか。
事の成り行きを見守ることにした。
「お兄ちゃんも?」
「うん、そうなんだ」
「あのね……お兄ちゃんも? いっしょのキモチなの?」
「そうだよ」
「わぁ……うれしいよ」
芽生の涙は笑顔に変わり、頑なな心は解けていく。
「そうなんだ。だから今度はもっと早くからゆっくり来ない? 今日はもう暗くなってきて、寒いから」
「そうだね、その方がいいね。お兄ちゃんがおカゼひいたら、イヤだもん」
あぁ、こんな風に芽生の優しさを引きだしてくれる瑞樹が、俺は大好きだ。
胸の奥が熱くなってくる。
「芽生くん、ありがとう。パパもお風邪ひいたらイヤだもんね」
「あ……うん、パパぁ……さっきはごめんなさい」
「芽生! いいんだよ。パパも悪かった。ごめんな、乱暴だった」
「ううん。そんなことないよ! パパはつよくて、かっこよいよ」
「コイツ! かわいいことを」
芽生の言葉が、本当に有り難かった。
こんな俺を心から慕ってくれる我が子が、愛おしい。
「パパ、だっこー」
「おーし」
芽生を思いっきり高く抱っこしてやると、黒い瞳をキラキラと輝かせていた。
「パパ、だいすきだよ」
ちょっと冷えた、ぷるぷるの頬を擦り寄せてくれたので、俺もすりすりしてやった。
「わー! おひげくすぐったい」
「宗吾さんってば」
「はは、なんかホッとしたよ」
「また来ましょう。僕も来たいです! 思い出は何度でも積み重ねて行けばいいんですね」
「そうさ!」
マリンラインでの帰り道、ダウンコートの袖に隠れて、俺と芽生と瑞樹は手を繋ぎあった。
「えへ、ボクたち、チームだね」
「おう!」
「そうだね」
「あー はやくお家にかえって、コタツで、ぬくぬくしたいな~」
「いいね」
今日の寄り道は終わりだが、またしよう。
外は冷えてきたが、ポカポカな気持ちで帰ろう!
次は函館旅行だな。
それまで頑張って働こう!
「宗吾さん、明日からまた仕事が少し忙しくなりますが、今日の思い出と、これからの楽しみがあるので、頑張れます」
「俺も同じ気持ちだよ」
「ボクもしゅくだいがんばるよー」
みんなが同じ気持ちで前に向かっている。
ワクワク、ドキドキ。
日常がこんなに楽しいなんて――
11
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる