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小学生編
誓いの言葉 45
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泡の弾ける音。
グラスが合わさる音。
小鳥のさえずりに葉の揺れる音、心地良い春風と降り注ぐ祝福の光。
そんな空間に、大切な人達の祝福の声が重なって行く。
中心には潤くんと菫さんが笑って、それを皆が取り囲んでいる。
瑞樹も蕩けるような表情で、時折肩を軽く揺らして、楽しそうだ。
可憐で清楚な君には、こんな自然な場所がよく似合う。
こんなに穏やかで和やかな結婚式は、俺の記憶にはない。
仕事柄、同期や先輩後輩の結婚式に参列することも多いが、どれも都内の超一流ホテルで執り行われる豪華絢爛なものだ。
俺自身も……かつてはその中にいた。
作り笑いに疲れ、酒に身を任せていた。
だから……今は、こんな場所が好きだ。
本当に大切な人に囲まれて、心から祝福が集う場所が好きだ。
「宗吾さん……」
瑞樹と目が合うと綺麗な口元を綻ばせて、上品に微笑みかけてくれる。
ヤバいな。ブラックスーツを着た瑞樹が可愛すぎるぞ。
おいでと手招きすると、瑞樹はコクンと頷いて歩み寄ってくれる。
高嶺の花だと思っていた君は、あまりに清らかで、儚げで……
俺なんかが手を出してはならない、触れてはいけない相手だと本気で思っていた。
あの日までは――
「宗吾さん?」
「あぁ……すまん」
「大丈夫ですか」
「……瑞樹に見惚れていたのさ」
小首を傾げる耳元に甘く囁いてやると、瑞樹はその場で頬を染める。
「宗吾さんって……」
ヤバイ。今日は飛ばしすぎか。
遊んでいるヤツと思われたか。
「……情熱的で……ドキドキします」
「お、おう! 愛しの瑞樹だからな」
「くすっ、いい結婚式でしたね。お天気もいいし、薔薇も満開で、何もかも上機嫌なんだなって思っていました」
「そういう瑞樹も上機嫌そうだな」
瑞樹が甘く笑う。
「宗吾さん、僕の弟はカッコイイですよね。背も高いし小麦色に日焼けしていて爽やかだし……白いタキシードが似合っていますよね……もう兄として自然と頬が緩みますよ」
上機嫌で……褒め言葉をどんどん並べる瑞樹は、まるで惚気ているようだぞ。
「むむっ」
「え? あの……なにか怒っています?」
「俺は、俺はどうだ?」
「え……」
茶色の瞳をじっと覗き混むと、俺が映った。
「そんなの……決まっているじゃないですか」
「口に出してくれよ」
「あの……毎日……加速していくんです」
「何が?」
瑞樹が耳朶まで赤くして、片手で顔を覆う。
相当恥ずかしいようだ。
「ここで言わないと駄目ですか……それ」
「あぁ、言ってくれ」
「も、もう―― 宗吾さんが好きな気持ちが膨れ上がって……空に飛んでいきそうですよ」
「よし、よく言えたな。じゃあ次の企画だ」
「え? まだあるんですか」
「あぁ、職業柄かな? 腕が鳴るんだよ」
「くすっ、宗吾さんらしいです。僕には出来ないことは宗吾さんがしてくれるので安心です」
瑞樹から俺の手を取って、左手の薬指同士の指輪をコツンと重ねてくれた。
長い睫毛を伏せて、紡がれる言葉は……
「宗吾さん……あ……愛しています」
「え! いきなり」
「さ、さっきの返事ですよ」
「やるなぁ、さぁ皆の所にいって、企画をお披露目しよう」
「今度は、何をするのですか」
「次の演出は『バルーンリリース』だ」
バルーンリリースとは風船を空高く飛ばすことで、一般的には「新郎新婦の幸せ、ゲストの幸せが天まで届きますように」との願いが込められているそうだ。ロマンティックな演出だろう?
このメンバーだから、必要な演出だと思った。
「手伝ってくれるか」
「あ……はい!」
白と水色で揃えた風船を、瑞樹と手分けして配った。
風船は人の心を童心に帰してくれるようで、皆、ワクワク期待に満ちた顔になっていく。
「今から皆さんの願いを天に届ける『バルーンリリース』をしたいと思います。皆さんには、きっと……この、晴れやかな幸せを伝えたい人が天上にいると思います。この風船に思いを込めて飛ばしましょう。では、せーの!」
皆の手から、一斉に飛び立つ風船。
「わぁ!」」
「きれいー」
いっくんと芽生の無邪気な歓声に押されて、風船はぐんぐん上昇する。
「お父さん……お母さん、僕は地上で幸せに暮らしています。今日は弟の結婚式だったんですよ。それからくまさんがお父さんになってくれました! 僕……幸せが集う場所にいます」
瑞樹の静かな祈りが聞こえる。
「大樹さん、澄子さん、なっくん、俺、結婚しました。みーくんの父親として生きていくこと、どうか見守ってください」
勇大さんの祈りも聞こえる。
「あなた……ありがとう。新しい人生をスタートさせてくれて……元気にやっていきます」
菫さんとお母さんの静かな声が……重なっていく。
「お父さん……記憶になくてもオレはあなたの息子です。あなたの息子は今日結婚しました。最高に可愛い嫁さんと息子と家族になりました」
潤くんの声が、大きく響く。
「おほしさまになったパパぁ~ おーい、いっくんだよ! みえるかなぁ? ふうせんあげるね!」
いっくんの無邪気な声も。
それぞれの願いを乗せた白と青のバルーンが、一斉に空に舞い上がる光景は、しみじみと深い感動を与えてくれる。
さぁ、これで全ての報告は完了だな。
潤くん、新しいスタートを気持ち良く切ってくれ!
「Good luck!」
グラスが合わさる音。
小鳥のさえずりに葉の揺れる音、心地良い春風と降り注ぐ祝福の光。
そんな空間に、大切な人達の祝福の声が重なって行く。
中心には潤くんと菫さんが笑って、それを皆が取り囲んでいる。
瑞樹も蕩けるような表情で、時折肩を軽く揺らして、楽しそうだ。
可憐で清楚な君には、こんな自然な場所がよく似合う。
こんなに穏やかで和やかな結婚式は、俺の記憶にはない。
仕事柄、同期や先輩後輩の結婚式に参列することも多いが、どれも都内の超一流ホテルで執り行われる豪華絢爛なものだ。
俺自身も……かつてはその中にいた。
作り笑いに疲れ、酒に身を任せていた。
だから……今は、こんな場所が好きだ。
本当に大切な人に囲まれて、心から祝福が集う場所が好きだ。
「宗吾さん……」
瑞樹と目が合うと綺麗な口元を綻ばせて、上品に微笑みかけてくれる。
ヤバいな。ブラックスーツを着た瑞樹が可愛すぎるぞ。
おいでと手招きすると、瑞樹はコクンと頷いて歩み寄ってくれる。
高嶺の花だと思っていた君は、あまりに清らかで、儚げで……
俺なんかが手を出してはならない、触れてはいけない相手だと本気で思っていた。
あの日までは――
「宗吾さん?」
「あぁ……すまん」
「大丈夫ですか」
「……瑞樹に見惚れていたのさ」
小首を傾げる耳元に甘く囁いてやると、瑞樹はその場で頬を染める。
「宗吾さんって……」
ヤバイ。今日は飛ばしすぎか。
遊んでいるヤツと思われたか。
「……情熱的で……ドキドキします」
「お、おう! 愛しの瑞樹だからな」
「くすっ、いい結婚式でしたね。お天気もいいし、薔薇も満開で、何もかも上機嫌なんだなって思っていました」
「そういう瑞樹も上機嫌そうだな」
瑞樹が甘く笑う。
「宗吾さん、僕の弟はカッコイイですよね。背も高いし小麦色に日焼けしていて爽やかだし……白いタキシードが似合っていますよね……もう兄として自然と頬が緩みますよ」
上機嫌で……褒め言葉をどんどん並べる瑞樹は、まるで惚気ているようだぞ。
「むむっ」
「え? あの……なにか怒っています?」
「俺は、俺はどうだ?」
「え……」
茶色の瞳をじっと覗き混むと、俺が映った。
「そんなの……決まっているじゃないですか」
「口に出してくれよ」
「あの……毎日……加速していくんです」
「何が?」
瑞樹が耳朶まで赤くして、片手で顔を覆う。
相当恥ずかしいようだ。
「ここで言わないと駄目ですか……それ」
「あぁ、言ってくれ」
「も、もう―― 宗吾さんが好きな気持ちが膨れ上がって……空に飛んでいきそうですよ」
「よし、よく言えたな。じゃあ次の企画だ」
「え? まだあるんですか」
「あぁ、職業柄かな? 腕が鳴るんだよ」
「くすっ、宗吾さんらしいです。僕には出来ないことは宗吾さんがしてくれるので安心です」
瑞樹から俺の手を取って、左手の薬指同士の指輪をコツンと重ねてくれた。
長い睫毛を伏せて、紡がれる言葉は……
「宗吾さん……あ……愛しています」
「え! いきなり」
「さ、さっきの返事ですよ」
「やるなぁ、さぁ皆の所にいって、企画をお披露目しよう」
「今度は、何をするのですか」
「次の演出は『バルーンリリース』だ」
バルーンリリースとは風船を空高く飛ばすことで、一般的には「新郎新婦の幸せ、ゲストの幸せが天まで届きますように」との願いが込められているそうだ。ロマンティックな演出だろう?
このメンバーだから、必要な演出だと思った。
「手伝ってくれるか」
「あ……はい!」
白と水色で揃えた風船を、瑞樹と手分けして配った。
風船は人の心を童心に帰してくれるようで、皆、ワクワク期待に満ちた顔になっていく。
「今から皆さんの願いを天に届ける『バルーンリリース』をしたいと思います。皆さんには、きっと……この、晴れやかな幸せを伝えたい人が天上にいると思います。この風船に思いを込めて飛ばしましょう。では、せーの!」
皆の手から、一斉に飛び立つ風船。
「わぁ!」」
「きれいー」
いっくんと芽生の無邪気な歓声に押されて、風船はぐんぐん上昇する。
「お父さん……お母さん、僕は地上で幸せに暮らしています。今日は弟の結婚式だったんですよ。それからくまさんがお父さんになってくれました! 僕……幸せが集う場所にいます」
瑞樹の静かな祈りが聞こえる。
「大樹さん、澄子さん、なっくん、俺、結婚しました。みーくんの父親として生きていくこと、どうか見守ってください」
勇大さんの祈りも聞こえる。
「あなた……ありがとう。新しい人生をスタートさせてくれて……元気にやっていきます」
菫さんとお母さんの静かな声が……重なっていく。
「お父さん……記憶になくてもオレはあなたの息子です。あなたの息子は今日結婚しました。最高に可愛い嫁さんと息子と家族になりました」
潤くんの声が、大きく響く。
「おほしさまになったパパぁ~ おーい、いっくんだよ! みえるかなぁ? ふうせんあげるね!」
いっくんの無邪気な声も。
それぞれの願いを乗せた白と青のバルーンが、一斉に空に舞い上がる光景は、しみじみと深い感動を与えてくれる。
さぁ、これで全ての報告は完了だな。
潤くん、新しいスタートを気持ち良く切ってくれ!
「Good luck!」
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