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小学生編
HAPPY HOLIDAYS 23
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夜中にもう一度起きると、身体がぐっと楽になっていた。
クリスマス前から身体にこびりついていた怠さが消滅し、頭もクリアになっていた。
目が慣れてくると、お母さんが僕の布団にもたれるように転た寝をしているのが見えた。
「お母さん……」
ぐっすり眠っているようで、返事はない。
お母さんもベッドで寝ないと風邪を引いてしまうよ。
そこで、ようやく気がついた。
この部屋って、お父さんとお母さんの寝室だ。
僕が寂しくないようにとお父さんが気を利かせて1階に寝かしてくれたのは嬉しかったけれども……ものすごくお邪魔してしまったのでは?
冷静になると、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「ごめんなさい……」
いつもの癖で謝ってしまったが、その後、言い直した。
「お母さん、ありがとう」
「ん……瑞樹、どうしたの?」
「あの……お母さんたちの部屋を、僕に使わせてくれてありがとう」
「そんなこと……あのね、昔、あなたが風邪を引いた時、1階のお店が見える部屋にお布団を敷いてあげたらよかったって思っていたの。お店が忙しくても、私が忙しくても……姿が見えたら安心したんじゃないかって、ずっと後悔していたのよ。瑞樹、ごめんね……ずっと寂しかったでしょう」
突然そんな風に言われて、僕はどう答えていいのか分からなくなってしまった。
引き取ってもらっただけでも、ありがたいと本心で思っていた。
遠い親戚のおじさんたちは、皆、威圧的で怖かった。
居候させてもらったとしても、かなり厳しい状況だっただろう。
そこを、お母さんと広樹兄さんが救ってくれたんだ。
だから病気になったりしたら迷惑をかけてしまう。
病気になっても、絶対に迷惑はかけない。
寂しくても怖くても、ひとりで耐える。
僕は……僕だけ生き残ってしまったのだから、その位我慢しないと。
そんなことばかり思って、一人で布団の中で震えていた。
「瑞樹……もう我慢しないで。寂しかったでしょう。ごめんね」
「お母さん……」
お母さんが僕の手を握ってくれる。
優しく擦ってくれる。
今までなら「そんなことないよ。大丈夫だったよ」と言うところだが……
今のお母さんになら……
お母さんが待っている言葉を素直に伝えられそうだ。
甘えてみてもいいのだろうか。
「お母さん……本当は寂しかった……怖かったよ」
「そうよね、そうだったわよね。本当のことを言ってくれてありがとう。その言葉を言って欲しかったの。もう大丈夫よ。あなたは一人じゃない。宗吾さんに芽生くん、勇大さんに私……広樹に潤もいる。大家族の一員よ」
「うん……本当に賑やかになったね」
「ね、お母さんもびっくりよ。そしてお母さんも瑞樹に負けない位幸せよ」
「良かった。僕たち幸せになれて――」
こんな会話をお母さんと交わせる日が来るなんて。
信じられないが、信じられる確かな日々。
手を伸せば、小さな幸せが沢山散らばっているのが見えるんだ。
「お母さんもちゃんと寝ないと」
「そうね、隣のベッドで眠ってもいい?」
「もちろんだよ。そこはお母さんのベッドでしょう? ここはお父さんのベッドで」
「ふふ、勇大さんってね、とっても寝相がいいのよ。あんなに大きな身体なのに冬眠しているくまさんみたいに静かなの」
「そうなんだね」
そこに2階からドタンと大きな音が聞こえた。
「まぁ、何かしら?」
「たぶん宗吾さんの寝相が……」
「まぁ、宗吾さんって寝相悪いの」
「悪いというか、寝ても覚めても元気な人なんだ」
「まぁ」
「えっと……寝てもって……その、深い意味はないから」
しまった。余計ないことをまた……
あぁもう、自分で話して真っ赤になって……
すっかり僕は元気になったんだと苦笑した。
「ふふ、瑞樹、到着した時は立っているのが精一杯だったのに、今は楽しそうね」
「お、お母さんっ」
「宗吾さんのことが好きって、顔に書いてあるわ」
「え、そんな」
「ふふっ、息子と恋バナするのも悪くないわね。私は息子しかいないし、広樹と潤がそういうタイプでないの、瑞樹だって知っているでしょう? やっぱり瑞樹がいてくれてよかったわ」
「う、うん……そうかな?」
「そうよ、可愛い子……大好きよ。おやすみなさい」
「あ、うん……僕も……」
こんな風に面と向かって伝えたことは殆どないので、照れくさい。
でも、今大切な人が目の前にいて笑ってくれるのなら、言葉でちゃんと伝えたい。
「僕もお母さんが大好きだよ。お母さんの子供になれて良かった」
「瑞樹ってば……お母さんを泣かせないで」
「でも……幸せだから、ちゃんと伝えたくて……すべての事柄には意味があったんだね。お母さんの息子になれて、宗吾さんと芽生くんと出会えて……今の僕がいる。羽を休めることの出来る実家がある」
「そうね。私、今日はいい夢をみられそうよ」
「僕もだよ」
熱は下がったのに、身体はまだ火照っていた。
きっと心が温まったからだろう。
「明日は一緒に……」
「明日も一緒によ」
「うん」
「おやすみ、瑞樹」
「おやすみなさい。お母さん」
穏やかな夜がやってきた。
こんな夜なら怖くない、寂しくない。
こんな日々を、僕は毎日丁寧に大切に生きていきたい。
クリスマス前から身体にこびりついていた怠さが消滅し、頭もクリアになっていた。
目が慣れてくると、お母さんが僕の布団にもたれるように転た寝をしているのが見えた。
「お母さん……」
ぐっすり眠っているようで、返事はない。
お母さんもベッドで寝ないと風邪を引いてしまうよ。
そこで、ようやく気がついた。
この部屋って、お父さんとお母さんの寝室だ。
僕が寂しくないようにとお父さんが気を利かせて1階に寝かしてくれたのは嬉しかったけれども……ものすごくお邪魔してしまったのでは?
冷静になると、申し訳ない気持ちで一杯だ。
「ごめんなさい……」
いつもの癖で謝ってしまったが、その後、言い直した。
「お母さん、ありがとう」
「ん……瑞樹、どうしたの?」
「あの……お母さんたちの部屋を、僕に使わせてくれてありがとう」
「そんなこと……あのね、昔、あなたが風邪を引いた時、1階のお店が見える部屋にお布団を敷いてあげたらよかったって思っていたの。お店が忙しくても、私が忙しくても……姿が見えたら安心したんじゃないかって、ずっと後悔していたのよ。瑞樹、ごめんね……ずっと寂しかったでしょう」
突然そんな風に言われて、僕はどう答えていいのか分からなくなってしまった。
引き取ってもらっただけでも、ありがたいと本心で思っていた。
遠い親戚のおじさんたちは、皆、威圧的で怖かった。
居候させてもらったとしても、かなり厳しい状況だっただろう。
そこを、お母さんと広樹兄さんが救ってくれたんだ。
だから病気になったりしたら迷惑をかけてしまう。
病気になっても、絶対に迷惑はかけない。
寂しくても怖くても、ひとりで耐える。
僕は……僕だけ生き残ってしまったのだから、その位我慢しないと。
そんなことばかり思って、一人で布団の中で震えていた。
「瑞樹……もう我慢しないで。寂しかったでしょう。ごめんね」
「お母さん……」
お母さんが僕の手を握ってくれる。
優しく擦ってくれる。
今までなら「そんなことないよ。大丈夫だったよ」と言うところだが……
今のお母さんになら……
お母さんが待っている言葉を素直に伝えられそうだ。
甘えてみてもいいのだろうか。
「お母さん……本当は寂しかった……怖かったよ」
「そうよね、そうだったわよね。本当のことを言ってくれてありがとう。その言葉を言って欲しかったの。もう大丈夫よ。あなたは一人じゃない。宗吾さんに芽生くん、勇大さんに私……広樹に潤もいる。大家族の一員よ」
「うん……本当に賑やかになったね」
「ね、お母さんもびっくりよ。そしてお母さんも瑞樹に負けない位幸せよ」
「良かった。僕たち幸せになれて――」
こんな会話をお母さんと交わせる日が来るなんて。
信じられないが、信じられる確かな日々。
手を伸せば、小さな幸せが沢山散らばっているのが見えるんだ。
「お母さんもちゃんと寝ないと」
「そうね、隣のベッドで眠ってもいい?」
「もちろんだよ。そこはお母さんのベッドでしょう? ここはお父さんのベッドで」
「ふふ、勇大さんってね、とっても寝相がいいのよ。あんなに大きな身体なのに冬眠しているくまさんみたいに静かなの」
「そうなんだね」
そこに2階からドタンと大きな音が聞こえた。
「まぁ、何かしら?」
「たぶん宗吾さんの寝相が……」
「まぁ、宗吾さんって寝相悪いの」
「悪いというか、寝ても覚めても元気な人なんだ」
「まぁ」
「えっと……寝てもって……その、深い意味はないから」
しまった。余計ないことをまた……
あぁもう、自分で話して真っ赤になって……
すっかり僕は元気になったんだと苦笑した。
「ふふ、瑞樹、到着した時は立っているのが精一杯だったのに、今は楽しそうね」
「お、お母さんっ」
「宗吾さんのことが好きって、顔に書いてあるわ」
「え、そんな」
「ふふっ、息子と恋バナするのも悪くないわね。私は息子しかいないし、広樹と潤がそういうタイプでないの、瑞樹だって知っているでしょう? やっぱり瑞樹がいてくれてよかったわ」
「う、うん……そうかな?」
「そうよ、可愛い子……大好きよ。おやすみなさい」
「あ、うん……僕も……」
こんな風に面と向かって伝えたことは殆どないので、照れくさい。
でも、今大切な人が目の前にいて笑ってくれるのなら、言葉でちゃんと伝えたい。
「僕もお母さんが大好きだよ。お母さんの子供になれて良かった」
「瑞樹ってば……お母さんを泣かせないで」
「でも……幸せだから、ちゃんと伝えたくて……すべての事柄には意味があったんだね。お母さんの息子になれて、宗吾さんと芽生くんと出会えて……今の僕がいる。羽を休めることの出来る実家がある」
「そうね。私、今日はいい夢をみられそうよ」
「僕もだよ」
熱は下がったのに、身体はまだ火照っていた。
きっと心が温まったからだろう。
「明日は一緒に……」
「明日も一緒によ」
「うん」
「おやすみ、瑞樹」
「おやすみなさい。お母さん」
穏やかな夜がやってきた。
こんな夜なら怖くない、寂しくない。
こんな日々を、僕は毎日丁寧に大切に生きていきたい。
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