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みたくない
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「うわぁぁぁーっ。やめろぉぉ!崖に落ちてしまう!」
ロウが一歩前に進むと、氷の壁がズズッと前に動く。
ロウにそんな力があったなんて。
怒りは恐ろしい力を生み出したのか……
あっという間に、ピューマを崖と氷の間に閉じ込めてしまった。
ピューマはそこから出て来られない。この隙に北の国逃げ込めば、助かるのでは!
「もういいっ、もうそこまででいいから、早く俺の元に戻って来てくれ!」
とにかくロウがこのままでは、危険だ!
俺と交わした日々を……情を忘れてしまう!
「ロウ──っ、ロウ、ロウ!俺はここだ! 」
力の限りに叫ぶと、完獣となったロウが鋭い牙を見せながら、振り向いた。
通じた? 聴こえたのか……
ロウの表情が読めない。だが本能的に俺を守ろうと、助けようとしている事だけは伝わって来る。
グルルルゥ……
ロウの言葉が聞き取れないが、背中に乗れと言っているようだ。
俺たちの前で躰を大地に伏せた。
アペに襲われそうになっていた俺を救ってくれた日のように、お前のふさふさの背中に乗って、俺とトイは一目散にピューマに攫われた道を戻る。
両隣にはロウの兄さんたちが並走してくれる。
「もう少しだ! 頑張れ!」
「ロウっ、ロウ──」
今は俺の声が聴こえないのか。
でもロウだ……お前は俺の番のロウだ。
こんなに躰が冷たくなって……
今にもすべて凍ってしまいそうなお前の躰に、俺は涙を注いだ。
どうか融けて……
ポロポロと零れる涙は風に攫われ、雪花になる。
北の国に近づけば近づくほど、外気が冷えて来る。
やがて辺りは……この季節にありえない、吹雪となっていた。
「寒い……」
ロウの躰はますます冷えてしまっている。
早く温めてやりたい。俺を助けるためにこんな姿になってしまったお前を抱きしめて、お前の好きな俺の乳を沢山与えたいよ。
「見えて来たぞ」
「早く中へ!」
氷の壁にピューマは閉じ込めたが、凍らせてしまったわけでもなく、崖に突き落としたわけでもない。なので……いつまた追手がくるか分からない。
気ばかり急いてしまう!
あと一歩……もう一歩だ。
突然、ドンっと俺とトイは北の大地の境界線の中へ投げ込まれた。
そこからのロウの唸り声は、大地を轟かす程だった。
ゴオォォォォ──
吹き荒れる雪に氷柱が立ち始める。
ロウの呻き声に呼応するように、境界線に沿って氷柱がザーッと立ちはだかっていく。
「ロウ! もういいから。早くお前もこっちに!」
「ロウ、こっちに来い!」
「ロウ──」
兄たちと一緒に、必死にロウを呼ぶ。
なのに……どんなに呼んでもロウには聴こえない。
このままでは……ロウだけが、森に取り残されてしまうよ。
嫌だ! こんな形で守ってもらうのは嫌だ。
思いの丈を込めて、力を振り絞って叫んだ。
「ロウー!! トカプチの元に戻れ! トカプチがお前の生きる大地だ!」
それまで俺の声が聴こえてなかった様子だったのに、ロウが雷に打たれたように突然震え、振り返り……確実に俺を見てくれた。
「トカプチっ──無事だったのか」
「あぁ無事だ! 何も汚されていない。俺はお前の番のままだ!」
「……良かった」
「早く中へ入って」
「だが……こんな姿では」
「何を言う? どんなお前でも愛し抜くよ!早く──」
ロウが氷柱の隙間から入ろうとした瞬間だった。
その悲劇が起きたのは……
「いやだぁぁぁぁぁぁ! ロウ!ロウ──!」
恐ろしい数のピューマが、黒い塊となって、ロウに背後から襲いかかった!
ロウが一歩前に進むと、氷の壁がズズッと前に動く。
ロウにそんな力があったなんて。
怒りは恐ろしい力を生み出したのか……
あっという間に、ピューマを崖と氷の間に閉じ込めてしまった。
ピューマはそこから出て来られない。この隙に北の国逃げ込めば、助かるのでは!
「もういいっ、もうそこまででいいから、早く俺の元に戻って来てくれ!」
とにかくロウがこのままでは、危険だ!
俺と交わした日々を……情を忘れてしまう!
「ロウ──っ、ロウ、ロウ!俺はここだ! 」
力の限りに叫ぶと、完獣となったロウが鋭い牙を見せながら、振り向いた。
通じた? 聴こえたのか……
ロウの表情が読めない。だが本能的に俺を守ろうと、助けようとしている事だけは伝わって来る。
グルルルゥ……
ロウの言葉が聞き取れないが、背中に乗れと言っているようだ。
俺たちの前で躰を大地に伏せた。
アペに襲われそうになっていた俺を救ってくれた日のように、お前のふさふさの背中に乗って、俺とトイは一目散にピューマに攫われた道を戻る。
両隣にはロウの兄さんたちが並走してくれる。
「もう少しだ! 頑張れ!」
「ロウっ、ロウ──」
今は俺の声が聴こえないのか。
でもロウだ……お前は俺の番のロウだ。
こんなに躰が冷たくなって……
今にもすべて凍ってしまいそうなお前の躰に、俺は涙を注いだ。
どうか融けて……
ポロポロと零れる涙は風に攫われ、雪花になる。
北の国に近づけば近づくほど、外気が冷えて来る。
やがて辺りは……この季節にありえない、吹雪となっていた。
「寒い……」
ロウの躰はますます冷えてしまっている。
早く温めてやりたい。俺を助けるためにこんな姿になってしまったお前を抱きしめて、お前の好きな俺の乳を沢山与えたいよ。
「見えて来たぞ」
「早く中へ!」
氷の壁にピューマは閉じ込めたが、凍らせてしまったわけでもなく、崖に突き落としたわけでもない。なので……いつまた追手がくるか分からない。
気ばかり急いてしまう!
あと一歩……もう一歩だ。
突然、ドンっと俺とトイは北の大地の境界線の中へ投げ込まれた。
そこからのロウの唸り声は、大地を轟かす程だった。
ゴオォォォォ──
吹き荒れる雪に氷柱が立ち始める。
ロウの呻き声に呼応するように、境界線に沿って氷柱がザーッと立ちはだかっていく。
「ロウ! もういいから。早くお前もこっちに!」
「ロウ、こっちに来い!」
「ロウ──」
兄たちと一緒に、必死にロウを呼ぶ。
なのに……どんなに呼んでもロウには聴こえない。
このままでは……ロウだけが、森に取り残されてしまうよ。
嫌だ! こんな形で守ってもらうのは嫌だ。
思いの丈を込めて、力を振り絞って叫んだ。
「ロウー!! トカプチの元に戻れ! トカプチがお前の生きる大地だ!」
それまで俺の声が聴こえてなかった様子だったのに、ロウが雷に打たれたように突然震え、振り返り……確実に俺を見てくれた。
「トカプチっ──無事だったのか」
「あぁ無事だ! 何も汚されていない。俺はお前の番のままだ!」
「……良かった」
「早く中へ入って」
「だが……こんな姿では」
「何を言う? どんなお前でも愛し抜くよ!早く──」
ロウが氷柱の隙間から入ろうとした瞬間だった。
その悲劇が起きたのは……
「いやだぁぁぁぁぁぁ! ロウ!ロウ──!」
恐ろしい数のピューマが、黒い塊となって、ロウに背後から襲いかかった!
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