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凶悪な邪魔者たち
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日本がバブル景気にまだまだ浮かれていた1988年2月23日午前3時ごろ、愛知県名古屋市港区の金城ふ頭に一台のトヨタ・カムリが停まっていた。
中に乗っていたのは高倉隆志(仮名・25歳)と木村有希(仮名・19歳)。
少々歳の差があるカップルである。
この金城ふ頭はその夜景の美しさにより当時からデートスポットとして有名であって、週末にはカップルの乗った多くの車がやって来ていたが、この日は平日の火曜日深夜。
隆志たちのいるふ頭には他の車は見当たらない。
寂しい気もするが逆に好都合で、気兼ねなく二人だけの時間が楽しめる。
都会の喧騒から離れながらも遠くには名古屋の明かりが輝き、その光が海面に反射した都会的かつ幻想的な光景を車内から堪能するなんて、いかにもデートしてるという感覚に浸れるではないか。
そんなロマンチックな空間に耽溺していた折、他の車が自分たちが独占しているふ頭に入り、こちらにやって来た。
お邪魔虫め、せっかくオレたちだけだと思ったのに。
まあいいか、こっちは車の中なんだし、向こうがこちらの世界に入ってくることは…。
あれ?
隆志も有希もこちらのすぐ近くまで来た車が二台であり、その停まった位置がおかしいことに気づいた。
その白っぽい車と茶色っぽい車は自分たちの車のすぐ後ろ側左右にぴったりと停車し、海に前部を向けて岸壁近くに停まっている自分たちの車の退路を断つような感じなのだ。
しかも、車内から棒のようなものを手にした数人がどやどやと下りてくるではないか!
「クルァー!!こんな時間にナニしとんだてぇぇ!降りて来い!!」
数人のうちの一人、まだ若い十代と思しき男がドスの効いた怒声を発して木刀のようなものでフロントガラスを叩いたため、ガラスは蜘蛛の巣を張ったようにひびが入る。
「うわ!ナニ?ナニ?ナニ!?」「キャーーー!!!」
驚き、慌てふためく隆志と悲鳴を狭い車内に響かせる有希。
パンチパーマだったり髪を染めたような、いかにも暴走族風の男女が車を取り囲んで車体を叩き、外からのドスンドスンという衝撃に冷静でいられるわけがない。
「オルラァ!出ぇてくぉいてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
不良たちは運転席のドアをこじ開けて、気が動転している隆志を車外に引きずり出した。
「くぉのブォケぇ!オゥルァ!オルゥァア!オルアァァ!!!」
先ほどの若い男は多少ろれつの回らない声で吠えながら隆志の顔面を拳で数発殴り、腹に膝蹴りを見舞ってきた。
「何をっ…う痛で!!やめ…ぶぅっ!グハ!!あぐっ!やめっ…痛っっ!!」
木刀を持った奴に頭を殴られ足蹴にされ、もう一人の奴には警棒で連打され、四人くらいに寄ってたかって滅多打ちにされる。
「オラぁ!金ぇ出せぇてぇぇ!金ぇぇえええええ!!」
男たちはシンナーをキメてきたらしく、シンナー臭がする。
「出す出す!出しますから出しますから!」と激痛と恐怖に震えながら隆志は有り金を差し出したが、なおも木刀が頭上に降ってきて、足で蹴り倒された。
「殺される」と恐怖するほどのリンチを受けながらも隆志は六つも年下の可愛い彼女である有希が気になったが、彼女がすでに車から引きずりだされてレディース風の女二人にひどい目に遭わされているのが目に入る。
「オラ!立てて糞女!うわ、汚ったねえツラしてんなあ!」
「やめてください!やめ…ぎゃっ!!痛い痛いいたいいい~!!」
「てめえ、ナニ足ぶつけてんだよ?痛えだろ!コラァ!!」
「ごめんなさい!ごめんなさ…グエェッ~。ううう~もうかんべんし…ゲボォ!!」
髪の毛をつかまれて口汚くののしられながら木刀で殴られ、足で蹴られ踏みつけられて泣きながらのたうち回っている。
「もうやめてくれって!!」
自身もかなりの暴行を受けながらも、隆志は暴行される有希のもとに走ってレディースを突き飛ばし、自分が盾になろうと頭を抱えて丸くなっている有希の体に覆いかぶさった。
「てめえ!ナニ俺の女突き飛ばしとるんだて!」「かっこつけると死ぬよ?」
勇敢な行動があだとなり、自分の女に手を出されて怒り狂ったらしい不良に木刀や警棒でどつき回されて顔に何発もパンチを浴びるなど、さっきより暴行がひどくなる。
有希も女二人に首筋、背中、足とまんべんなく木刀を打ち下ろされ突かれ、七転八倒。
その間に腕時計とこの日のために着てきたお気に入りの高価なトレーナーを脱がされて奪われてしまった。
地獄のような暴行は不良たちがこちらに近づいてくる車に気づいて退散するまで続き、その時間は三十分に満たなかったが、こんなに長い一分一秒は経験したことはない。
何よりこんなひどい目に遭ったのは生まれて初めてだ。
「何でこんなことされなきゃならないんだ…」と憤慨しつつも、ひどい暴行による痛みとショックでうずくまって泣き続けている有希をいたわって「助けを呼んでくる」と声をかけて立ち上がり、向こうの岸壁近くに停泊する貨物船の方に向かってフラフラ歩き出した。
さっきまで世界一幸福だったのに、凶悪なお邪魔虫たちに理不尽な暴力をふるわれて金品を奪われた隆志と有希は一転して世界一不幸になった気分になっていたことだろう。
だが、彼らはまだましな方だった。
それは、その後同じ日同じ犯人たちによってより手ひどい目に遭わされ、命まで奪われるカップルがいたからだ。
中に乗っていたのは高倉隆志(仮名・25歳)と木村有希(仮名・19歳)。
少々歳の差があるカップルである。
この金城ふ頭はその夜景の美しさにより当時からデートスポットとして有名であって、週末にはカップルの乗った多くの車がやって来ていたが、この日は平日の火曜日深夜。
隆志たちのいるふ頭には他の車は見当たらない。
寂しい気もするが逆に好都合で、気兼ねなく二人だけの時間が楽しめる。
都会の喧騒から離れながらも遠くには名古屋の明かりが輝き、その光が海面に反射した都会的かつ幻想的な光景を車内から堪能するなんて、いかにもデートしてるという感覚に浸れるではないか。
そんなロマンチックな空間に耽溺していた折、他の車が自分たちが独占しているふ頭に入り、こちらにやって来た。
お邪魔虫め、せっかくオレたちだけだと思ったのに。
まあいいか、こっちは車の中なんだし、向こうがこちらの世界に入ってくることは…。
あれ?
隆志も有希もこちらのすぐ近くまで来た車が二台であり、その停まった位置がおかしいことに気づいた。
その白っぽい車と茶色っぽい車は自分たちの車のすぐ後ろ側左右にぴったりと停車し、海に前部を向けて岸壁近くに停まっている自分たちの車の退路を断つような感じなのだ。
しかも、車内から棒のようなものを手にした数人がどやどやと下りてくるではないか!
「クルァー!!こんな時間にナニしとんだてぇぇ!降りて来い!!」
数人のうちの一人、まだ若い十代と思しき男がドスの効いた怒声を発して木刀のようなものでフロントガラスを叩いたため、ガラスは蜘蛛の巣を張ったようにひびが入る。
「うわ!ナニ?ナニ?ナニ!?」「キャーーー!!!」
驚き、慌てふためく隆志と悲鳴を狭い車内に響かせる有希。
パンチパーマだったり髪を染めたような、いかにも暴走族風の男女が車を取り囲んで車体を叩き、外からのドスンドスンという衝撃に冷静でいられるわけがない。
「オルラァ!出ぇてくぉいてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
不良たちは運転席のドアをこじ開けて、気が動転している隆志を車外に引きずり出した。
「くぉのブォケぇ!オゥルァ!オルゥァア!オルアァァ!!!」
先ほどの若い男は多少ろれつの回らない声で吠えながら隆志の顔面を拳で数発殴り、腹に膝蹴りを見舞ってきた。
「何をっ…う痛で!!やめ…ぶぅっ!グハ!!あぐっ!やめっ…痛っっ!!」
木刀を持った奴に頭を殴られ足蹴にされ、もう一人の奴には警棒で連打され、四人くらいに寄ってたかって滅多打ちにされる。
「オラぁ!金ぇ出せぇてぇぇ!金ぇぇえええええ!!」
男たちはシンナーをキメてきたらしく、シンナー臭がする。
「出す出す!出しますから出しますから!」と激痛と恐怖に震えながら隆志は有り金を差し出したが、なおも木刀が頭上に降ってきて、足で蹴り倒された。
「殺される」と恐怖するほどのリンチを受けながらも隆志は六つも年下の可愛い彼女である有希が気になったが、彼女がすでに車から引きずりだされてレディース風の女二人にひどい目に遭わされているのが目に入る。
「オラ!立てて糞女!うわ、汚ったねえツラしてんなあ!」
「やめてください!やめ…ぎゃっ!!痛い痛いいたいいい~!!」
「てめえ、ナニ足ぶつけてんだよ?痛えだろ!コラァ!!」
「ごめんなさい!ごめんなさ…グエェッ~。ううう~もうかんべんし…ゲボォ!!」
髪の毛をつかまれて口汚くののしられながら木刀で殴られ、足で蹴られ踏みつけられて泣きながらのたうち回っている。
「もうやめてくれって!!」
自身もかなりの暴行を受けながらも、隆志は暴行される有希のもとに走ってレディースを突き飛ばし、自分が盾になろうと頭を抱えて丸くなっている有希の体に覆いかぶさった。
「てめえ!ナニ俺の女突き飛ばしとるんだて!」「かっこつけると死ぬよ?」
勇敢な行動があだとなり、自分の女に手を出されて怒り狂ったらしい不良に木刀や警棒でどつき回されて顔に何発もパンチを浴びるなど、さっきより暴行がひどくなる。
有希も女二人に首筋、背中、足とまんべんなく木刀を打ち下ろされ突かれ、七転八倒。
その間に腕時計とこの日のために着てきたお気に入りの高価なトレーナーを脱がされて奪われてしまった。
地獄のような暴行は不良たちがこちらに近づいてくる車に気づいて退散するまで続き、その時間は三十分に満たなかったが、こんなに長い一分一秒は経験したことはない。
何よりこんなひどい目に遭ったのは生まれて初めてだ。
「何でこんなことされなきゃならないんだ…」と憤慨しつつも、ひどい暴行による痛みとショックでうずくまって泣き続けている有希をいたわって「助けを呼んでくる」と声をかけて立ち上がり、向こうの岸壁近くに停泊する貨物船の方に向かってフラフラ歩き出した。
さっきまで世界一幸福だったのに、凶悪なお邪魔虫たちに理不尽な暴力をふるわれて金品を奪われた隆志と有希は一転して世界一不幸になった気分になっていたことだろう。
だが、彼らはまだましな方だった。
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