悪法に守られた鬼畜たちの犯罪~1988年・名古屋アベック殺人事件~

44年の童貞地獄

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六匹の野獣

「アイツらも車もボコボコにしたった。あんなとこでいちゃくでやわ!」
「へへへ!あそこまで女の前でやられたら男終わりだで!」
「あの女、輪姦したりゃよかったな。他の車来たでかんわ」
「うわ!トレーナーに血ぃついとるが!こんなん着て歩けんて!」

名古屋市中区栄のセントラルパークでシンナーを吸いつつおぞましい自慢話をしているのは小島茂夫(19歳)、徳丸信久(17歳)、高志健一(20歳)、近藤浩之(19歳)、龍造寺リエ(17歳)、筒井良枝(17歳)の6人。
先ほど金城ふ頭で隆志と有希を襲った張本人たちだ。

どいつもこいつも見るからに悪そうな暴走族風の風体で、1988年当時のここセントラルパークに集ってはシンナー吸引にふける通称「噴水族」と呼ばれた不良少年たちのかたわれである。
それもかなり本格的なワルの部類に入る者たちであり、小島と徳丸は現在こそ鳶の仕事をしているが元々は山口組弘道会傘下の薗田組の組員であり、唯一成人の高志は現役の同組組員、近藤は同じ弘道会傘下の高山組の組員で、女の龍造寺もヤクザの情婦だし、小島の彼女である筒井も暴力団事務所に出入りしていた。

そんな彼らが金城ふ頭に向かうきっかけとなったのは、昨晩いつものようにシンナーを吸いにセントラルパークに集っていたところ、つい先月脱退したとはいえ組員歴が古くて一番偉そうにしている小島が「今から金城ふ頭までバッカン行こまい!」と言い出したことからだ。

「バッカン」とは彼らの間だけで通用する言葉で、カップルを狙って恐喝するカップル狩りを意味する。
デートスポットである金城ふ頭での「バッカン」は彼らが始めたことではなく、他の「噴水族」の不良も以前からやっており、前年の9月には複数のカップルを恐喝していた不良少年のグループが検挙されていた。

小島たちの中にはこのグループの人間と付き合いのあった者がいたことから、「バッカン」の手口をよく知っていたのだ。
実際にやるのは今回が初めてだが、自分たちだってやればできる。

こうして車二台に木刀や鉄パイプを積んで金城ふ頭に向かい、最初に襲ったパルサーに乗ったカップルには警察署に逃げ込まれてしまって失敗したが、二回目のカムリは成功。
昨年捕まったグループより危険な存在であることを自認する彼らは、一回目の失敗のうっぷんを晴らすように張り切って男も女も車もボコボコにしてしまった。

その結果、男の方から奪った現金は86000円、他にも龍造寺と筒井が女から腕時計とトレーナーを奪っている。

一回のカツアゲとしては大戦果と言えるが、小島はまだ満足していなかった。
もう夜が明けようというのにあと二回くらいやろうと言い出している。
彼らの中には分け前をもらって帰りたがっている者もいたが、6人で割ったら大した金にならないからだ。

「また金城ふ頭いくでよ。まだおるかな?」
「でも金城ふ頭はかんて。最初にやったった奴がぜってー通報しとるて。」
「ほんなら大高緑地は?あそこならカップルまだおるんと違う?」
「おお、ええがな。大高緑地行こまい!」

名古屋市緑区にある大高緑地公園は金城ふ頭と同様に週末になるとカップルの車が押し寄せるデートスポットとなっていた。
さっきのカップルみたいにこの平日のこの時間にも来ている奴らがいるかもしれない。

こうして次の狩場が決まり、一行は二台の車に分乗して十数キロ先にある名古屋市緑区の大高緑地公園に向かう。

そのころ大高緑地公園第一駐車場に一台のトヨタ・チェイサーが入ってきて駐車していた。

中に乗っていたのは野村昭善(19歳)と末松須弥代(20歳)、同じ理容店で働く理容師カップルである。
付き合い始めてぼちぼち経った何回目かのデートを楽しむ彼らは、数十分後に自分たちを襲う悲劇的な運命をまだ知る由もない。
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