文字の大きさ
大
中
小
3 / 9
襲いかかる悪意
1988年2月23日未明、名古屋市緑区にある大高緑地公園の公園入口ロータリーに小島の運転するグロリアと近藤の運転するクラウンが到着。
車を降りた6人は獲物となるカップルを探索するために暗闇の公園内に入ってゆく。
公園の第一駐車場は平日とあってがらんとしていたが、一台の白い車が停まっているのが確認できた。
トヨタ・チェイサーだ。
まずは近藤が夜陰に紛れて偵察に向かうとチェイサーにはエンジンがかかっており、中にカップルとみられる男女が乗っているのを視認する。
「よっしゃ、よっしゃ!おったぞ!おったぞ!あそこのチェイサーに乗っとる奴だで」
小島たちが潜む所に戻って来た近藤は喜色満面で報告した。
「こんなド平日のこんな時間までいちゃついとる奴はお仕置きせなかんて!ほんならやったろか!」
もうすでに三回目なので手慣れたもので、6人は手はずどおり車のナンバーに段ボールを貼り付けたりの準備を手際よく行い、トランクから木刀などの得物を取り出して車に乗り込む。
野獣たちにロックオンされたチェイサーの中にいたのは野村昭善(19歳)と末松須弥代(20歳)。
二人とも愛知県大府市内にある同じ理容店で働く理容師カップルである。
昭善は床屋を営む家庭の出身で、中学を卒業してから理容師の世界にいたからすでにいっぱしの理容師、将来は実家の店を継ぐつもりであり、父のために備品を自分の給料を出して購入するなど孝行息子でもあった。
一方の須弥代は定時制高校を卒業後に理容師を志していたからまだ見習いであり、同い年ながらすでにいっぱしの理容師として働いていたから昭善は輝いて見え(昭善は早生まれで須弥代と学年は同じだったようだ)、なおかつ彼のさわやかで人に好かれやすいキャラにも魅かれたのだろう、自然と好意を持って同じ店で働く同僚以上の関係になって交際するようになって久しい。
須弥代も親思いで、両親のために貯金をする孝行娘である。
そんな彼らは将来昭善の実家の店を二人で支えようと共に理容師修行に励んでいたのだから滅多にいないほど健全なカップルであろう。
両家の親たちも反対する理由がなく、その交際は双方から歓迎されていたほどだ。
この前の日、須弥代は父親のチェイサーを借りて昭善を拾ったようだが、ハンドルは彼氏である昭善が握っている。
なお、須弥代は店の仕事が終わった後で同僚には今晩は昭善とデートに行くと告げていたものの父親にはなぜか「女友達の所に行く」と言っていたが、これは後ろめたいからではなく照れ隠しだったのだろうか?
その事情は間もなく永遠に確かめることができなくなる。
それは小島と近藤が運転する車が駐車場に入って近づいてきたと思ったらチェイサーの後方左右に停車したことから始まった。
動きを封じられた後、特攻隊長気取りの徳丸が木刀片手に車を降りて「オラァ出てこいや!!」とこちらに向かって雄叫びを上げたため、昭善と須弥代の二人だけの甘い世界は破られる。
二人とも異変に気付くのが遅すぎた。
ずっと自分たちの世界に浸っていたのもあるが、後ろ向きに駐車していたので後方から向かってくる二台がおかしな動きをしているのが分からなかったのである。
駐車場に他の車が入って来たのには気づいていただろうが、いきなり自分たちの車の所に向かってきて後ろ左右に停まり、中から暴走族風の若者たちが鉄パイプや木刀片手に怒声を上げて降りてきて一気に至福の静寂から奈落の底に落とされた。
どう考えてもこちらに危害を加える気満々の者たちに囲まれ、二人がびっくり仰天したのは言うまでもない。
この時運転席にいた昭善は慌てて逃走を図ろうとチェイサーをバックさせた。
だが、パニックになるあまり昭善はより最悪の結果を招く事態を引き起こしてしまう。
この車は須弥代の父親の車で乗り慣れていない上に、後方は逃げられないように小島と近藤の車が停まっているのである。
昭善のチェイサーは車体を襲撃者の乗って来た車二台にぶつけてしまったのだ。
「オレの車にナニしてくれとるんだ!!コラアァァー!!!!」
外からは不良の怒りの咆哮が響き、木刀や鉄パイプで車体がより強く叩かれ、ガラスにひびが入る。
その大きな声と音、予想される今後を前に二人の心臓は凍り付いた。
車を降りた6人は獲物となるカップルを探索するために暗闇の公園内に入ってゆく。
公園の第一駐車場は平日とあってがらんとしていたが、一台の白い車が停まっているのが確認できた。
トヨタ・チェイサーだ。
まずは近藤が夜陰に紛れて偵察に向かうとチェイサーにはエンジンがかかっており、中にカップルとみられる男女が乗っているのを視認する。
「よっしゃ、よっしゃ!おったぞ!おったぞ!あそこのチェイサーに乗っとる奴だで」
小島たちが潜む所に戻って来た近藤は喜色満面で報告した。
「こんなド平日のこんな時間までいちゃついとる奴はお仕置きせなかんて!ほんならやったろか!」
もうすでに三回目なので手慣れたもので、6人は手はずどおり車のナンバーに段ボールを貼り付けたりの準備を手際よく行い、トランクから木刀などの得物を取り出して車に乗り込む。
野獣たちにロックオンされたチェイサーの中にいたのは野村昭善(19歳)と末松須弥代(20歳)。
二人とも愛知県大府市内にある同じ理容店で働く理容師カップルである。
昭善は床屋を営む家庭の出身で、中学を卒業してから理容師の世界にいたからすでにいっぱしの理容師、将来は実家の店を継ぐつもりであり、父のために備品を自分の給料を出して購入するなど孝行息子でもあった。
一方の須弥代は定時制高校を卒業後に理容師を志していたからまだ見習いであり、同い年ながらすでにいっぱしの理容師として働いていたから昭善は輝いて見え(昭善は早生まれで須弥代と学年は同じだったようだ)、なおかつ彼のさわやかで人に好かれやすいキャラにも魅かれたのだろう、自然と好意を持って同じ店で働く同僚以上の関係になって交際するようになって久しい。
須弥代も親思いで、両親のために貯金をする孝行娘である。
そんな彼らは将来昭善の実家の店を二人で支えようと共に理容師修行に励んでいたのだから滅多にいないほど健全なカップルであろう。
両家の親たちも反対する理由がなく、その交際は双方から歓迎されていたほどだ。
この前の日、須弥代は父親のチェイサーを借りて昭善を拾ったようだが、ハンドルは彼氏である昭善が握っている。
なお、須弥代は店の仕事が終わった後で同僚には今晩は昭善とデートに行くと告げていたものの父親にはなぜか「女友達の所に行く」と言っていたが、これは後ろめたいからではなく照れ隠しだったのだろうか?
その事情は間もなく永遠に確かめることができなくなる。
それは小島と近藤が運転する車が駐車場に入って近づいてきたと思ったらチェイサーの後方左右に停車したことから始まった。
動きを封じられた後、特攻隊長気取りの徳丸が木刀片手に車を降りて「オラァ出てこいや!!」とこちらに向かって雄叫びを上げたため、昭善と須弥代の二人だけの甘い世界は破られる。
二人とも異変に気付くのが遅すぎた。
ずっと自分たちの世界に浸っていたのもあるが、後ろ向きに駐車していたので後方から向かってくる二台がおかしな動きをしているのが分からなかったのである。
駐車場に他の車が入って来たのには気づいていただろうが、いきなり自分たちの車の所に向かってきて後ろ左右に停まり、中から暴走族風の若者たちが鉄パイプや木刀片手に怒声を上げて降りてきて一気に至福の静寂から奈落の底に落とされた。
どう考えてもこちらに危害を加える気満々の者たちに囲まれ、二人がびっくり仰天したのは言うまでもない。
この時運転席にいた昭善は慌てて逃走を図ろうとチェイサーをバックさせた。
だが、パニックになるあまり昭善はより最悪の結果を招く事態を引き起こしてしまう。
この車は須弥代の父親の車で乗り慣れていない上に、後方は逃げられないように小島と近藤の車が停まっているのである。
昭善のチェイサーは車体を襲撃者の乗って来た車二台にぶつけてしまったのだ。
「オレの車にナニしてくれとるんだ!!コラアァァー!!!!」
外からは不良の怒りの咆哮が響き、木刀や鉄パイプで車体がより強く叩かれ、ガラスにひびが入る。
その大きな声と音、予想される今後を前に二人の心臓は凍り付いた。
感想 0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。