クラスに馴染めない少年はいつまで経っても初恋に囚われ続ける

Onfreound

文字の大きさ
24 / 79
EP1

#23

しおりを挟む
 購買のパンをちまちまと食べる黒瀬。

 色々言う気はないが、彼女があまりに少食なのは心配になる。僕も食べない方だとはいえ、これだけで生活していけるのか。

 会話は無く、時々視線が合う。いつもなら何とも思わないのに、少し、意識してしまう。

 白渡との関係を、僕は聞くべきなのだろうか。

 今まで黒瀬の個人的な話を耳にする事はあっても、直接尋ねる事はあまり無かった。というか、質問するのを避けていた。なぜなら、少なくとも彼女独自の事には、彼女の為に、僕が関わらないようにしようとしたからだった。

 それなのに、白渡には尋ねてしまったが。

 聞いたところで何かを得られる訳でもないし、逆に相談でもされたりしたら目的に違反してしまう。どうすべきかなんて明白なのに、白渡の言葉に囚われた僕はつい、"遊んでくれない"理由を確かめたくなってしまう。

   「なぁ」

   「...どうしたの」

   「その、白渡の事って、どう思ってる?」

   「......何その、女子同士で恋愛相談する時の切り出し方みたいなの」

   「え、それ美少女ゲームの話だよな?それよりさ、昨日お前ら気まずそうだったし、今後も僕の前で修羅場やらされたら、巻き添えで僕も喧嘩腰になるかもしれないだろ」

   「...感受性強すぎるんじゃないの」

   「まぁ、僕にはどうにも出来ないけど、関係だけでも知ってれば気が楽だしな」

 白渡には負けるが、屁理屈だけは良く浮かぶものである。昨日も口が動きさえすればどうにかなったかもしれないのに。

 黒瀬は少し下を向く。数秒して、一言だけ告げる。

   「...ちょっと憎い」

   「......憎い、か」

 彼女から、これ程強い言葉を聞いたのは初めてだった。

 憎いから、遊ばない。確かに理屈としては通じる。しかし、肝心な所が抜けている。何故?黒瀬にとって、白渡の何が憎いのか?

 才能、名声、容姿、性格...候補を挙げることは出来る。でも、この答えでは他の可能性、僕にとっては違っていて欲しいと思う内容を否定出来ない。

  黒瀬を見る。相変わらずの無表情で、何も分からない。

   「...学校は楽しいか?」

 話題を変える。僕も、どうやら分かろうとしていない。

   「...楽しいよ、今は」

 含みを持たせた答えを、どう捉えればいいか。今の僕は、考える気にはなれなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。 鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。 名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。 親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。 性と欲の狭間で、歪み出す日常。 無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。 そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。 青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。   前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...