【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第十九章

655 選んだ理由

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( マリオン )

そもそも、何故俺がレガーノの街の小学院を選んだのかには2つ理由があって、1つ目の理由としてはレガーノの小学院には、高位貴族がリーフ様以外にいなかったからだ。


王都に近い小学院では、熾烈な派閥争いが既に始まっていて、子供の上下関係は両親の上下関係に直結している。

そのためそこに入るとすれば、必ず派閥を選ぶ必要があるわけだが……現在存在している派閥から選ぶのは、難しかったのだ。


我がスタンティン家は、一応身分至上主義を掲げてはいるため、実力主義のアーサー派閥と博愛主義のソフィア派閥は入れない。

しかし、エドワード派閥の過激で身勝手な身分至上主義とは全く異なる考えを持っているため、そちらにも完全に加入したくない……。

そのため一定の距離を保ったままでいたいと望み、接触や争いは最小限に留めながら地盤づくりをしたいという狙いがあった。


そして2つ目の理由────それは俺の兄にある


フッと過る兄の記憶は、様々な感情と共に、俺の頭の中を駆け抜けていった。


伯爵 【 スタンティン家 】元長男。

< レイブン >


それが俺の兄で、かつてはこのスタンティン家を継ぐはずであった人物であった。


俺の8歳上の兄レイブンは、魔導具作りに関しては天才的な才能を持ち、幼き頃から両親は絶大な期待を兄に寄せていたのだが……兄本人はそれに反発し続けた。


” 貴族に売る魔導具は、無駄な装飾品が多くて興味がない。 ”

” 生活に本当に必要な魔導具作りがしたい。 ”

” 魔法が使えない者達や、生活に苦労している平民に役に立つ魔導具を作りたい。 ”


そう強く主張を繰り返し、更に我がスタンティン家の在り方全てを否定する物言いまでしだした時から、両親とは顔を合わせば酷い口論になってしまう様になっていった。


兄はスタンティン家のやり方全てを否定し続け、そして両親は両親で、兄の主張を全て否定する。

そんなお互いがお互いを受け入れられずギスギスとした雰囲気で過ごし、やがて成人した兄と両親は決定打となる大喧嘩を経て、兄は廃籍を言い渡された。


” 上等だ!こんなクソみたいな考えの家、出てってやるよ!! ”


売り言葉に買い言葉。

まさしくそんな言い合いの果て、兄は廃籍をあっさり受け入れこの家から出ていった。

その日の事は……今でも良く覚えている。


今まで通り貴族を相手にした確固たる高級ブランド力を持った魔導具を作っていきたい父様。

【 スタンティン家 】という家を守り、存続させていきたい母様。

今後は平民のみをターゲット層に置いた、新たな事業を立ち上げたい兄。


お互いがお互い一歩も譲らず、結局兄は家族と身分を捨てて独立する道を選んだのだ。


今は平民として魔導具専門店を作り ” 安価で扱いやすい魔導具 ” を売りに、好評な売上を上げているそうだと、後に父様の調査書をこっそり見て知った。


” 兄についての話題は出さない。 ” 

兄が出て言って以降、それが我が家でも暗黙のルールとなり、話題には一切上がらなくなったが……父様と母様は時々二人で塞ぎ込んでいるのは知っていた。


きっと今もなお、兄の存在が重く心にのしかかっている。


スタンティン家が歩んできた歴史や、父様と母様の今まで必死に守ってきたものも全て否定する酷い言葉。

それが、きっと今でも傷になってジクジクと痛み続けているのだろう。


その事を思うと、俺の心にも小さな痛みが走るが、続いて浮かんでくるのは、兄に対しての怒りであった。


俺は兄が大嫌いだ。

自分の気持ちだけを優先し、言いたいことだけ言ってさっさと家族を切り捨てた兄が。


俺は兄の様な人間には、決してならない。

あんな父様と母様を悲しませる様な息子にはならずに、【 スタンティン家 】を、もっともっと繁栄させてみせる。

そう誓い、努力をし続ける俺を見て、両親はとても喜んでくれた。


” よくやった。 ”

” マリオンこそ、スタンティン家の未来の当主に相応しいわ。 ”


両親が喜んでくれる姿が、俺は何より嬉しかった。

だから今までどんなに辛くとも努力し続ける事ができたのだ。


しかし、そんな努力も────周りからすれば良いものに映らない事も多々あった。


” 長男はとても優秀なお子であったのに……一体何があったのかしらね? ”

” ご両親の方に、何か問題があったのでは? ”

” あの名門スタンティン家も、落ちぶれたものね。 ”


何も知らないくせに、根拠のない噂話で盛り上がる貴族達。

そいつらは全員、どうにか我が家を陥れる隙を見つけようと躍起になっている連中で、そんな連中の格好の材料となってしまったわけだ、兄の存在は。


” 次期当主であった兄が、廃籍され出ていった。 ” 


その事実によって、我が家は常に足を引っ張られる事になってしまったのだ。


そんな地盤作りが完璧ではない俺を、そんな思惑を持った貴族達の子と積極的に接触させたくない。

そう父様は考え、最終的にレガーノへの入学を決めたのだ。


恐らくレガーノに貴族の子が少ないのは、リーフ様を隠そうとするメルンブルク家に遠慮しての事だろうと思われる。


リーフ様に関しての話題や噂話は、気づく者は気づいているだろうが、メルンブルク家という途方もない強大な力を前に、その最大の禁忌ともいえる存在に、あえて近寄りたくないという事だろう。

勿論我が家がレガーノに進学をと決めた途端、メルンブルク家から無言の重圧の様なものがあった様であったが、両親は鮮やかにそれをスルーしたそうだ。


メルンブルク家としては、理由を逆に聞かれてしまえば困るわけで、流石に弁が立つ父相手では退散せざるを得なかったのだろう。
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