930 / 1,649
第二十七章
914 探してみよう
しおりを挟む
(メル)
そんな生活が続き10歳を越えた頃、いつものように弓の練習の最中に不意に声が掛かる。
「なぁ、それ、楽しいのか?」
声がした方へ視線を向けると、そこには燃えるような赤い髪を持つ犬?の獣人の男の子がいて、メルの持っている弓を指さしてきた。
「……分からない……。」
楽しいか楽しくないかは正直分からない。
そのため正直にそう答えると、その男の子は不思議そうな顔をする。
「はぁ?分からないのに毎日やるのか??……ふ~ん、変わってんな。
俺、最近毎日ここいらに遊びに来ていたんだけどさ、お前、毎日ここで弓打ってんじゃん?
だからよっぽどそれが楽しいんだと思ったんだ。
じゃあ、親にそれをやれって言われてんの?」
メルはその質問に『否』を唱えるため、フルフルと首を横に振る。
すると男の子は益々不思議そうな顔をして「じゃあ、いじめられてて命令されてやってるとか?」と聞いてきたが、それにもメルは首を横に振った。
「じゃあ、なおさらそれをやる理由が分からねぇ。
だってさ、お前ペンギンかウズラの獣人だろ?
戦闘にあまり適さないのに何でそんなに頑張るんだよ。
世の中的には自分の適正ってやつを知って、それに乗っかってく方が幸せになれるんじゃね~の?」
そう言われて真っ先に思い出したのは、母の姿。
母は毎日幸せそうで、今日だって父とメルの為に朝早くから手作りパンを焼いてくれている。
自分の才能のあるものを理解し、それに乗っかって人生を生きていく事が、恐らく『幸せ』への一番の近道なのだろうと思う。
それは頭の悪いメルにも理解できた。
しかし────……。
「……メルには無理。」
キッパリそう言うと、その男の子は吹き出しゲラゲラと笑い転げる。
「めっ……めちゃくちゃシンプルな答えだな!そっか!無理なら仕方ねぇよな~。
じゃあお前は強くなりてぇって事か……ってことは目指すのは王様ってやつ?」
現在この国の王様はライオンの獣人<ライアン様>
ライアン様はまさしく獣人の国の象徴の様な存在で、圧倒的なパワーにスピード、戦となれば真っ先に飛び込み先陣を切る様な人であった。
そんなライアン様は皆憧れと尊敬を持っているし、メルも同じ。
しかし────……。
『圧倒的な力を持つカリスマ的リーダー』、それがなんだか、しっくりこない。
自分の進みたい道はまだ見つからないが、その道の先にそれがない事だけは、なんとなく分かった。
「……違う……。なりたい自分は……これから探す。」
そう答えればその子はまた大笑いした後、メルにスッ……と右手を差し出す。
「俺はレイド!実はさ、俺も探してんだ、なりたい自分ってやつ!
お前面白いし、俺たち気が合いそうだし、よしっ!今から俺たち親友な!これからよろしくな。」
これがレイドとメルの初めての出会いであった。
帰ってから母に、『レイド』という男の子と親友になったと話すと、母は大変驚いてその子の事をメルに説明する。
レイドはここら一帯では敵なしの強さを持つ犬獣人の男爵家の息子で、小さい頃から大人に混じって狩りやモンスター討伐に参加していたそうだ。
その才能は素晴らしく、既に大人顔負けの実力と天性の戦闘センスを持っているそうだが、突然少し前からフラフラ遊び歩く様になり、レイドの両親はヤキモキしているのだとか……。
「貴族の子供は小さい頃から厳しい英才教育をするらしいから、嫌になっちゃったのかしらね。
貴族の義務と言われれば仕方ないかもしれないけど、平民のお母さんからみればちょっと可哀想に思っちゃうわ……。
きっとレイド様は疲れちゃってお休み中なのよ。
丁度いい機会だから、メルちゃん、レイド様と一緒に沢山遊んできなさい。
今までしたことない様な冒険ができるかもよ。」
嬉しそうにそう言う母に、メルはウム厶……と頭を悩ませていると、母はポンッとメルの頭に手を乗せた。
「一人で悩んで出せる答えもあれば、人によって導き出される答えもある。
メルちゃんは一人で悩んで答えが出てないんだから、今度は色んな人と関わってみるといいんじゃないかな。
それにせっかくメルちゃんと仲良くしたいって言ってくれたんだもの~。沢山遊んでおいで。」
『メルちゃんは危ないから辞めた方がいいよ。』
そんな同年代の子供たちから言われた言葉が過ぎり、メルなんかと仲良くなるのは迷惑だと思い悩んだが、母の後押しで親友になる事を喜んで受け入れてみようと思った。
メルは一人で答えを出す才能にも恵まれなかったらしいので、この広い世界の中でその答えを持っている誰かを探してみよう。
そう思いメルは次の日から一人ではなくレイドと一緒にそれを探す事にしたのだ。
そんな生活が続き10歳を越えた頃、いつものように弓の練習の最中に不意に声が掛かる。
「なぁ、それ、楽しいのか?」
声がした方へ視線を向けると、そこには燃えるような赤い髪を持つ犬?の獣人の男の子がいて、メルの持っている弓を指さしてきた。
「……分からない……。」
楽しいか楽しくないかは正直分からない。
そのため正直にそう答えると、その男の子は不思議そうな顔をする。
「はぁ?分からないのに毎日やるのか??……ふ~ん、変わってんな。
俺、最近毎日ここいらに遊びに来ていたんだけどさ、お前、毎日ここで弓打ってんじゃん?
だからよっぽどそれが楽しいんだと思ったんだ。
じゃあ、親にそれをやれって言われてんの?」
メルはその質問に『否』を唱えるため、フルフルと首を横に振る。
すると男の子は益々不思議そうな顔をして「じゃあ、いじめられてて命令されてやってるとか?」と聞いてきたが、それにもメルは首を横に振った。
「じゃあ、なおさらそれをやる理由が分からねぇ。
だってさ、お前ペンギンかウズラの獣人だろ?
戦闘にあまり適さないのに何でそんなに頑張るんだよ。
世の中的には自分の適正ってやつを知って、それに乗っかってく方が幸せになれるんじゃね~の?」
そう言われて真っ先に思い出したのは、母の姿。
母は毎日幸せそうで、今日だって父とメルの為に朝早くから手作りパンを焼いてくれている。
自分の才能のあるものを理解し、それに乗っかって人生を生きていく事が、恐らく『幸せ』への一番の近道なのだろうと思う。
それは頭の悪いメルにも理解できた。
しかし────……。
「……メルには無理。」
キッパリそう言うと、その男の子は吹き出しゲラゲラと笑い転げる。
「めっ……めちゃくちゃシンプルな答えだな!そっか!無理なら仕方ねぇよな~。
じゃあお前は強くなりてぇって事か……ってことは目指すのは王様ってやつ?」
現在この国の王様はライオンの獣人<ライアン様>
ライアン様はまさしく獣人の国の象徴の様な存在で、圧倒的なパワーにスピード、戦となれば真っ先に飛び込み先陣を切る様な人であった。
そんなライアン様は皆憧れと尊敬を持っているし、メルも同じ。
しかし────……。
『圧倒的な力を持つカリスマ的リーダー』、それがなんだか、しっくりこない。
自分の進みたい道はまだ見つからないが、その道の先にそれがない事だけは、なんとなく分かった。
「……違う……。なりたい自分は……これから探す。」
そう答えればその子はまた大笑いした後、メルにスッ……と右手を差し出す。
「俺はレイド!実はさ、俺も探してんだ、なりたい自分ってやつ!
お前面白いし、俺たち気が合いそうだし、よしっ!今から俺たち親友な!これからよろしくな。」
これがレイドとメルの初めての出会いであった。
帰ってから母に、『レイド』という男の子と親友になったと話すと、母は大変驚いてその子の事をメルに説明する。
レイドはここら一帯では敵なしの強さを持つ犬獣人の男爵家の息子で、小さい頃から大人に混じって狩りやモンスター討伐に参加していたそうだ。
その才能は素晴らしく、既に大人顔負けの実力と天性の戦闘センスを持っているそうだが、突然少し前からフラフラ遊び歩く様になり、レイドの両親はヤキモキしているのだとか……。
「貴族の子供は小さい頃から厳しい英才教育をするらしいから、嫌になっちゃったのかしらね。
貴族の義務と言われれば仕方ないかもしれないけど、平民のお母さんからみればちょっと可哀想に思っちゃうわ……。
きっとレイド様は疲れちゃってお休み中なのよ。
丁度いい機会だから、メルちゃん、レイド様と一緒に沢山遊んできなさい。
今までしたことない様な冒険ができるかもよ。」
嬉しそうにそう言う母に、メルはウム厶……と頭を悩ませていると、母はポンッとメルの頭に手を乗せた。
「一人で悩んで出せる答えもあれば、人によって導き出される答えもある。
メルちゃんは一人で悩んで答えが出てないんだから、今度は色んな人と関わってみるといいんじゃないかな。
それにせっかくメルちゃんと仲良くしたいって言ってくれたんだもの~。沢山遊んでおいで。」
『メルちゃんは危ないから辞めた方がいいよ。』
そんな同年代の子供たちから言われた言葉が過ぎり、メルなんかと仲良くなるのは迷惑だと思い悩んだが、母の後押しで親友になる事を喜んで受け入れてみようと思った。
メルは一人で答えを出す才能にも恵まれなかったらしいので、この広い世界の中でその答えを持っている誰かを探してみよう。
そう思いメルは次の日から一人ではなくレイドと一緒にそれを探す事にしたのだ。
355
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる
路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか?
いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ?
2025年10月に全面改稿を行ないました。
2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。
2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。
2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。
2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
腐男子♥異世界転生
よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる