【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十七章

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(メル)

そんな生活が続き10歳を越えた頃、いつものように弓の練習の最中に不意に声が掛かる。
     
「なぁ、、楽しいのか?」

声がした方へ視線を向けると、そこには燃えるような赤い髪を持つ犬?の獣人の男の子がいて、メルの持っている弓を指さしてきた。

「……分からない……。」

楽しいか楽しくないかは正直分からない。
そのため正直にそう答えると、その男の子は不思議そうな顔をする。

「はぁ?分からないのに毎日やるのか??……ふ~ん、変わってんな。
俺、最近毎日ここいらに遊びに来ていたんだけどさ、お前、毎日ここで弓打ってんじゃん?
だからよっぽどそれが楽しいんだと思ったんだ。
じゃあ、親にそれをやれって言われてんの?」

メルはその質問に『否』を唱えるため、フルフルと首を横に振る。
すると男の子は益々不思議そうな顔をして「じゃあ、いじめられてて命令されてやってるとか?」と聞いてきたが、それにもメルは首を横に振った。

「じゃあ、なおさらそれをやる理由が分からねぇ。
だってさ、お前ペンギンかウズラの獣人だろ?
戦闘にあまり適さないのに何でそんなに頑張るんだよ。
世の中的には自分の適正ってやつを知って、それに乗っかってく方が幸せになれるんじゃね~の?」

そう言われて真っ先に思い出したのは、母の姿。

母は毎日幸せそうで、今日だって父とメルの為に朝早くから手作りパンを焼いてくれている。
自分の才能のあるものを理解し、それに乗っかって人生を生きていく事が、恐らく『幸せ』への一番の近道なのだろうと思う。
それは頭の悪いメルにも理解できた。
しかし────……。

「……メルには無理。」

キッパリそう言うと、その男の子は吹き出しゲラゲラと笑い転げる。

「めっ……めちゃくちゃシンプルな答えだな!そっか!無理なら仕方ねぇよな~。
じゃあお前は強くなりてぇって事か……ってことは目指すのは王様ってやつ?」


現在この国の王様はライオンの獣人<ライアン様>

ライアン様はまさしく獣人の国の象徴の様な存在で、圧倒的なパワーにスピード、戦となれば真っ先に飛び込み先陣を切る様な人であった。
そんなライアン様は皆憧れと尊敬を持っているし、メルも同じ。
しかし────……。

『圧倒的な力を持つカリスマ的リーダー』、それがなんだか、しっくりこない。
自分の進みたい道はまだ見つからないが、その道の先にそれがない事だけは、なんとなく分かった。

「……違う……。なりたい自分は……これから探す。」

そう答えればその子はまた大笑いした後、メルにスッ……と右手を差し出す。

「俺はレイド!実はさ、俺も探してんだ、なりたい自分ってやつ!
お前面白いし、俺たち気が合いそうだし、よしっ!今から俺たち親友な!これからよろしくな。」

これがレイドとメルの初めての出会いであった。


帰ってから母に、『レイド』という男の子と親友になったと話すと、母は大変驚いてその子の事をメルに説明する。

レイドはここら一帯では敵なしの強さを持つ犬獣人の男爵家の息子で、小さい頃から大人に混じって狩りやモンスター討伐に参加していたそうだ。
その才能は素晴らしく、既に大人顔負けの実力と天性の戦闘センスを持っているそうだが、突然少し前からフラフラ遊び歩く様になり、レイドの両親はヤキモキしているのだとか……。

「貴族の子供は小さい頃から厳しい英才教育をするらしいから、嫌になっちゃったのかしらね。
貴族の義務と言われれば仕方ないかもしれないけど、平民のお母さんからみればちょっと可哀想に思っちゃうわ……。
きっとレイド様は疲れちゃってお休み中なのよ。
丁度いい機会だから、メルちゃん、レイド様と一緒に沢山遊んできなさい。
今までしたことない様な冒険ができるかもよ。」

嬉しそうにそう言う母に、メルはウム厶……と頭を悩ませていると、母はポンッとメルの頭に手を乗せた。

「一人で悩んで出せる答えもあれば、人によって導き出される答えもある。
メルちゃんは一人で悩んで答えが出てないんだから、今度は色んな人と関わってみるといいんじゃないかな。
それにせっかくメルちゃんと仲良くしたいって言ってくれたんだもの~。沢山遊んでおいで。」

『メルちゃんは危ないから辞めた方がいいよ。』

そんな同年代の子供たちから言われた言葉が過ぎり、メルなんかと仲良くなるのは迷惑だと思い悩んだが、母の後押しで親友になる事を喜んで受け入れてみようと思った。

メルは一人で答えを出す才能にも恵まれなかったらしいので、この広い世界の中でその答えを持っている誰かを探してみよう。

そう思いメルは次の日から一人ではなくレイドと一緒にそれを探す事にしたのだ。

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