【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十七章

915 信頼関係か……

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(メル)

レイドはメルとは違い何にでも興味を持っては、弾丸の様に飛び込んでしまう性格をしていて、毎日朝早く来ては、やれ『あっちの森に黄金色のブタが出たらしいぜ!』と言っては森を彷徨う羽目になり……。
『街に新作パンが出たってよ!』と言ってそのパン屋に連れてかれると、それを求めて乱闘する獣人達の輪に飛び込んで二人揃ってボロボロにされて帰ったりと……根拠のない噂にもよく踊らされては、二人揃って空回りするはめに。
そんなある日、レイドが森で<フリル・ボア>に意地を突いたせいで二人揃って追いかけ回される羽目になり、全力で逃げている最中、突然レイドが叫んだ。


< フリル・ボア >

体長5m程のイノシシ型Fランクモンスター
まるでフリルの様な毛を身体に纏い、走る度にヒラヒラとまるでドレスの様に靡かせる事から『ケモノ婦人』とも呼ばれている。
体当たりは木を根こそぎ吹っ飛ばすくらいの威力があり、正面からまともにぶつかれば一般兵士でもふっ飛ばされるほど。
ただし直線にしか進めない事と背中が弱点という事からそこまで脅威ではない。


「メル!俺が囮になる!そんで今からお前を上に投げるから、あいつの背中を攻撃してくれ!」

「────!!(コクリっ!)」

メルが大きく頷くと、レイドはニヤッと笑ってメルの襟元を掴む。

「よしきたぁ────!!頼むぜ!相棒!!」

そしてレイドはそのままメルをポポ──ン!と上に投げ飛ばした。
すると直ぐにしたにフリル・ボアの背中が見えフンッ!と鼻息を吹いて攻撃────……。

…………?
あれ……?どうやって攻撃しよう……??

放り出された空中で、今更ながらに迷ってしまった。
弓以外の攻撃ができないメルは、宙に浮かんだまま悩んだが────その答えが出る前に、そのまま頭からフリル・ボアの背中に頭から落下してしまう。

「プ……プギャ────っ!!!」

フリル・ボアはメルの頭突きを弱点である背中に喰らい、そのまま大きな鳴き声を上げて気絶した。

「…………。」

メルは痛む頭を擦りながら、ムクッと起き上がると────レイドが直ぐに走り寄ってきて、メルの背中をバンバン叩く。
そして、輝く様な笑顔でこう言ったのだ。

「やったな!相棒!」

その瞬間、何だか叩かれた背中がムズムズするような……そんな不思議な感覚を感じたが答えを出す事はできず、レイドと共にフリル・ボアを担いで家路についた。


そしてまたあくる日────その日はレイドがいつになく興奮した様子で朝ごはん中のメルの家に飛び込んできて、鼻息をブフ──!!と大きく吹いて言った。

「おい、メル!聞いたかよ!!街のパン屋に人族のお嫁さんが来たんだってよ!見に行こうぜ!
人族ってめちゃくちゃ可愛くて弱くていい匂いがするんだろ?
くぅぅ~!!俺、楽しみ!!
────あ、メルママさんおはようございま~す。」

慌ただしくワ──っ!と喋りだしたレイドは、最後にお母さんにペコリと頭を下げる。
そんなレイドの騒がしさにすっかり慣れていた母は、笑いながらレイドの分の朝ごはんも用意して前に出すと、レイドは嬉しそうにそれをむしゃむしゃと食べだした。

「レイド様もお聞きになりましたか。
何でもパン屋の息子さんが人族の街に仕入れに行った時、悪い人に絡まれていた所を助けたのが縁だったとか……。
私も一足先に見に行きましたが、物凄く可愛くてか弱くていい匂いがしましたよ!
息子さんデレデレで本当に幸せそうでしたわ~。」

「えっ!!メルママさん、早い!!じゃあ、俺も人族助けたらお嫁さんになってくれるかな……。
よしっ!!とにかく見に行こ~ぜ!!
メルママさん、朝ごはんごちそうさま、ありがとう!メル!行くぞ────!!」

レイドは食べ終わって口元を拭いていたメルの首根っこを掴み、そのままピュ────っ!!と街までひとっ飛び。
あっという間に問題のパン屋の前に到着した。

パン屋の前には沢山の獣人達がウロウロしていて、皆一斉に窓の前に張り付きジ────っ……と中を覗いている。
レイドは身体を屈めると、メルを横に抱えたまま下から無理やり窓の最前線に躍り出て、ペタリと二人揃って窓に顔をつけて中を覗く。

その時点で窓の少し開いた所からプンプンと嗅いだことのない様ないい匂いが漂ってきて、レイドと二人で限界まで窓に顔をくっつけその匂いを堪能していたのだが、やがて店の奥から姿を現したのはペリカンの獣人の男と穏やかな笑みを浮かべた人族の女性だった。

『おおお~~……!!』

周りにいる獣人達が興奮して声を上げると、前にいたレイドとメルは邪魔とばかりにポイッと後方に投げられてしまい、コロコロと転がされてしまった。
そして道の端で止まると、ボンヤリと先程の二人に着いて考える。

二人は非常に仲睦まじく寄り添い合っていて、お互い全身全霊で信頼し合っている事が感じ取れた。
そもそも自分の慣れ親しんだ故郷を捨てて、まったく未知の土地で暮らす……そんな事は相手に全信頼を向けてないと無理な事だし、相手は相手でそんな不安を抱えているパートナーを丸ごと抱えていくくらいの相当な覚悟と信頼関係がなければきっと務まらないはずだ。

その時、また心がムズムズするような変な感覚があったのだが、それをゆっくり考えるその前に、レイドが勢いよく起き上がったため、意識はそっちへ向く。

「よ~し!!メル、俺決めたぜ!」

「??何を……??」

激しく燃えるレイドの横で起き上がりながらそう尋ねると、レイドはニヤ~っと笑った。

「俺も人族のお嫁さん貰う!!これからお嫁さん探すぞ!!」

「……人族……お嫁……。」

思ってもなかった答えに驚きブツブツ呟くメルを置き去りに、レイドは次々に自身の願望を口に出す。

「いい匂いがするヤツ!!全部でかいヤツ程最高!!
そんでそんで~最終的な俺の夢は『人族のハーレムを作る事』にする!
よ~し!!じゃあ、早速作戦会議しようぜ!!」

レイドはキラキラ目を輝かせながら、ブツブツ呟くメルの首根っこを掴み、そのままスタコラサッサ~とその場を離れた。
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