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第二十九章
(ヨセフ)979 家族の形
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(ヨセフ)
きっと この時が当時の私の一番幸せだった時。
生まれて初めて手にした『愛』は、ユラユラ揺れる揺りかごの様に心地よい幸せを沢山私に与えてくれて、幸せは日々更新されていく。
勿論男同士という事で、中には眉を潜めてヒソヒソと悪口を言う者達もいたが、その場所に必死にしがみつこうをしている私を見て最後は諦めた様だ。
セイとの生活は毎日幸せで満たされていて、だからコレ以上の事は望んでいなかったのだが、1年を過ぎた頃、セイはおずおずと私に『一つだけ我が儘を言って良いか?』と聞いてきた。
セイの願いなら何でも叶えよう。
そう思っていたので「勿論良いよ。」と答えると、セイは恥ずかしそうに口を開いた。
「子供が欲しいんだ……。」
思ってもいなかった言葉に私が驚いていると、セイは慌てた様子で両手を振る。
「いやいや!ヨセフが嫌ならそれでいいんだ!ホント、こんなおじさんが何言ってんだって感じですよね!!別に絶対に叶えたいってものじゃないんだよ。」
らしくない程早口でそれを言い切った後、セイは最後にポツリと言った。
「 ……『家族』というモノがどういうものなのか知りたかっただけなんだ。」
セイの母親は娼婦で、毎日毎日むせ返る程の香水を振りかけては外へ出かけていき、帰って来れば酒の匂いがプンプンする口でひたすらセイを罵っていたそうだ。
『避妊に失敗して生むしかなかった。』
『生みたくて産んだんじゃない。』
それは下民の両親の元で生まれた私も同じであった。
だから私達は『家族』の形を知らない。
温かい食事を共に囲んだ事も楽しく談笑した事だって一度もなく、結局私は散々暴力を受けて殺される直前に保護。
セイの方は暴力こそなかったものの、そのまま12歳になった時点で母親は姿を消し、二度と帰って来なかったそうだ。
怒りと憎しみ、そしてそれに伴う文句しか出ない私に対し、セイは自分の母親についてこう言っていた。
『借金を押し付けて消えなかったのは、母なりの最後の良心だったのでしょう。』
『心に余裕がない時に、子供という”未来”を背負うには重すぎたのでしょうね。』
そうして困った様に肩を竦めるセイには、自分を捨てた母親に対する怒りや憎しみはない。
ただ私が何回目かのプロポーズをした時セイはこうも漏らしていた。
『私は”家族”というモノを知らないから君の気持ちは受け取れません。』、『怖いんだ。』────と。
そんな未知なモノに対する恐怖と責任感に怯えていたセイ。
そんなセイが私とそれを作ってみたいと想ってくれている。
それは私がセイにとって安心できて甘えて良い唯一の場所だと認識してくれたからだ。
「俺も知りたい。『家族』を。でも俺達は二人共ソレを知らないから、だからこれから一緒に探そう。
他の人には感じる事ができない探す楽しさもプラスされて、俺達はスーパーラッキー家族になれるね。
『平等』って素晴らしい。」
歓喜する心のままそうセイに告げると、セイは嬉しそうに笑ってくれた。
正直不安と恐怖はあった。
幼い頃に与えられなかった愛情により、私の心の器には決定的な欠陥があったから。
『そんな自分が子供に対してセイに持つ様な”愛”が持てるのだろうか?』
『そもそもこんな欠陥だらけの男が親になるのは可能なのだろうか?』
そんな心配が常に頭の中に居座っていたが、セイはその後直ぐに私との子供を授かり、苦しみもがきながらこの世にソレを生み出してくれた。
生み出された私とセイの愛の証。
それを目にした瞬間、私の中の不安や恐怖、心配など全ての負の感情は跡形もなく吹き飛んでしまった。
『愛おしい』
『嬉しい』
『ありがとう』
そんな気持ちが心の中から飛び出し、この子に会わせてくれた自分の今まで出会った全てのモノに感謝する気持ちが溢れる。
感動に震える私を見て、セイは力なく横たわりながらフム……と頷いた。
「愛おしい我が子に出会う為には地獄の様な苦しみを味わねばならないのか……。
これも『平等』だね。」
そう言って、痛たたっ!と大きく切られたお腹を擦るので、私はその上にソッと手を重ねる。
「じゃあ、『平等』にするには、俺はこれから命を掛けて働いて働いて────セイと子供を幸せにしないといけないね。」
セイは俺の言葉にキョトンとした顔を見せ、そのままハハハ~!と笑うと「そうだね!」と言ってそのまま眠ってしまった。
その後は、悪戦苦闘しながらも私達なりに『家族』というモノを作り始め、多分完璧とは言えないが、それなりの形になっていったと思う。
沢山笑ったし、沢山幸せを感じたし、でも上手くいかなくて怒った事も失敗して悲しんだ事だってある。
その後は直ぐに二人目も生まれ、その後私達は四人で『家族』という形を作っていった。
子供というのは本当に大変で目まぐるしくて、でも沢山の幸せや愛おしさを運んできてくれて……セイに感じるのとはまた別の『愛』を私に与えてくれる。
そうしてセイと共に振り回せれている内に、私の心の中の大きな穴は気がつけば完全になくなっており、そればかりかなんとその上に大きな大きな美しい花畑まで出来てしまっていた。
そんなある日、私は久しぶりにある人物と再会する事になる。
孤児院で共に過ごし様々な事を語り合った友、グレスターに。
きっと この時が当時の私の一番幸せだった時。
生まれて初めて手にした『愛』は、ユラユラ揺れる揺りかごの様に心地よい幸せを沢山私に与えてくれて、幸せは日々更新されていく。
勿論男同士という事で、中には眉を潜めてヒソヒソと悪口を言う者達もいたが、その場所に必死にしがみつこうをしている私を見て最後は諦めた様だ。
セイとの生活は毎日幸せで満たされていて、だからコレ以上の事は望んでいなかったのだが、1年を過ぎた頃、セイはおずおずと私に『一つだけ我が儘を言って良いか?』と聞いてきた。
セイの願いなら何でも叶えよう。
そう思っていたので「勿論良いよ。」と答えると、セイは恥ずかしそうに口を開いた。
「子供が欲しいんだ……。」
思ってもいなかった言葉に私が驚いていると、セイは慌てた様子で両手を振る。
「いやいや!ヨセフが嫌ならそれでいいんだ!ホント、こんなおじさんが何言ってんだって感じですよね!!別に絶対に叶えたいってものじゃないんだよ。」
らしくない程早口でそれを言い切った後、セイは最後にポツリと言った。
「 ……『家族』というモノがどういうものなのか知りたかっただけなんだ。」
セイの母親は娼婦で、毎日毎日むせ返る程の香水を振りかけては外へ出かけていき、帰って来れば酒の匂いがプンプンする口でひたすらセイを罵っていたそうだ。
『避妊に失敗して生むしかなかった。』
『生みたくて産んだんじゃない。』
それは下民の両親の元で生まれた私も同じであった。
だから私達は『家族』の形を知らない。
温かい食事を共に囲んだ事も楽しく談笑した事だって一度もなく、結局私は散々暴力を受けて殺される直前に保護。
セイの方は暴力こそなかったものの、そのまま12歳になった時点で母親は姿を消し、二度と帰って来なかったそうだ。
怒りと憎しみ、そしてそれに伴う文句しか出ない私に対し、セイは自分の母親についてこう言っていた。
『借金を押し付けて消えなかったのは、母なりの最後の良心だったのでしょう。』
『心に余裕がない時に、子供という”未来”を背負うには重すぎたのでしょうね。』
そうして困った様に肩を竦めるセイには、自分を捨てた母親に対する怒りや憎しみはない。
ただ私が何回目かのプロポーズをした時セイはこうも漏らしていた。
『私は”家族”というモノを知らないから君の気持ちは受け取れません。』、『怖いんだ。』────と。
そんな未知なモノに対する恐怖と責任感に怯えていたセイ。
そんなセイが私とそれを作ってみたいと想ってくれている。
それは私がセイにとって安心できて甘えて良い唯一の場所だと認識してくれたからだ。
「俺も知りたい。『家族』を。でも俺達は二人共ソレを知らないから、だからこれから一緒に探そう。
他の人には感じる事ができない探す楽しさもプラスされて、俺達はスーパーラッキー家族になれるね。
『平等』って素晴らしい。」
歓喜する心のままそうセイに告げると、セイは嬉しそうに笑ってくれた。
正直不安と恐怖はあった。
幼い頃に与えられなかった愛情により、私の心の器には決定的な欠陥があったから。
『そんな自分が子供に対してセイに持つ様な”愛”が持てるのだろうか?』
『そもそもこんな欠陥だらけの男が親になるのは可能なのだろうか?』
そんな心配が常に頭の中に居座っていたが、セイはその後直ぐに私との子供を授かり、苦しみもがきながらこの世にソレを生み出してくれた。
生み出された私とセイの愛の証。
それを目にした瞬間、私の中の不安や恐怖、心配など全ての負の感情は跡形もなく吹き飛んでしまった。
『愛おしい』
『嬉しい』
『ありがとう』
そんな気持ちが心の中から飛び出し、この子に会わせてくれた自分の今まで出会った全てのモノに感謝する気持ちが溢れる。
感動に震える私を見て、セイは力なく横たわりながらフム……と頷いた。
「愛おしい我が子に出会う為には地獄の様な苦しみを味わねばならないのか……。
これも『平等』だね。」
そう言って、痛たたっ!と大きく切られたお腹を擦るので、私はその上にソッと手を重ねる。
「じゃあ、『平等』にするには、俺はこれから命を掛けて働いて働いて────セイと子供を幸せにしないといけないね。」
セイは俺の言葉にキョトンとした顔を見せ、そのままハハハ~!と笑うと「そうだね!」と言ってそのまま眠ってしまった。
その後は、悪戦苦闘しながらも私達なりに『家族』というモノを作り始め、多分完璧とは言えないが、それなりの形になっていったと思う。
沢山笑ったし、沢山幸せを感じたし、でも上手くいかなくて怒った事も失敗して悲しんだ事だってある。
その後は直ぐに二人目も生まれ、その後私達は四人で『家族』という形を作っていった。
子供というのは本当に大変で目まぐるしくて、でも沢山の幸せや愛おしさを運んできてくれて……セイに感じるのとはまた別の『愛』を私に与えてくれる。
そうしてセイと共に振り回せれている内に、私の心の中の大きな穴は気がつけば完全になくなっており、そればかりかなんとその上に大きな大きな美しい花畑まで出来てしまっていた。
そんなある日、私は久しぶりにある人物と再会する事になる。
孤児院で共に過ごし様々な事を語り合った友、グレスターに。
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