【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第三十九章

1262 世界の命運を握るもの

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( フラン )

「 ……嫌になるよな。

これだけは負けねぇ自信があったってぇのに。


────違和感はあったんだ。

なにせ抵抗が一切なかったからな。

普通は契約時、自分の存在に干渉される先天的な恐怖から、誰であろうと必ず抵抗感はあるはずなんだよ。

それがなかったんだ。

……だから後になって気付いた。


あぁ、あれは自分で俺の作り出した契約書を縫い付けたんだってな。

……そんな事ができる人間、いると思うか? 」


私が閉口すると、ケインはまた新たな葉巻に火をつけ、そのままスパスパと吸い始めてしまう。


……ありえない。


私は葉巻の煙が充満する中、ゴクリと唾を飲み込んだ。


他者が創り出した契約書を自分に縫い付ける?

そんなモノ、理論上は可能だとしても、不可能だ。


魔力で作り出す契約書は、その術者のオリジナル魔力< 生元魔力 >を使って描かれているので、それを使うという事は、その性質と全く同じ魔力を創り出すという事だ。

そこには気が遠くなる様な、複雑に絡み合った魔力と難解な魔力の羅列が並んでいるはず。

そのため理論上、それらを全て同じ配置に置き換え、創り出す事ができれば、生元魔力を再現する事ができると言われているが…… ” 人 ” である限り、それには限界がある。


私の脳裏には、恐らく100分の1も実力を出していないであろうレオン殿の姿が思い浮かび、全身に悪寒が走った。

青ざめてしまった私を見て、ケインはだいぶ短くなってしまった葉巻をまた着火で消しさり、静かに立ち上がる。


「 あいつ、笑ってぜ。

まるでこの世界で一番の幸せ者であるかの様に。

奴隷になれるのが嬉しくて嬉しくて堪らないって感じでよ。


……俺はよぉ、随分と長くこの仕事をやってっけど、そんなヤツは見たことねぇよ。

ましては実の母親に捨てられた直後の12才のガキだぜ?

                      
まぁ、あんたが何を知りてぇのかは知らねぇが、と関わるのは止めといた方がいい。

” 賢人、ドラゴンに近寄らず ” ……ってな。 」


ケインはぼりぼりと頭を掻きながら、部屋を出ていった。


私は、フッ!と短い息を吐き出し、動揺する心を収めると……ケイン殿の話から予想される事実を一つ導き出す。


奴隷になる前には、既にあの出鱈目な強さを持っていた。

────では、いつ頃からその力を手にいれたのだろうか?


私はソファーから立ち上がり、レオン殿の報告書が置いてある机へと移動し、もう一度ペラペラとページを捲っていった。


レガーノの街の人々の口は重く、あまり語りたがらなかったそうだが、とりあえず街に姿を現す様になってから数年程は、ただの非力な子供であった様だ。


走るスピードも早くはなかった様だし、見かける度にヨタヨタとおぼつかない足で歩いていたそうだからだ。

時には石を投げて追い払おうとした輩もいたそうだが、それにすら反応するのが遅かったらしいので、間違いなく、この期間はただの子供だったはず。


では────?


「 ……もしやリーフ殿と出会ってからか? 」


八歳の時に出会い、それからぐんぐんと成長していったと書かれている事から、期間的にはあってはいる。

しかし、どうも腑に落ちない。


そもそも一人の人間に出会っただけで、そこまで変わるはず。

それに加え、私は過去に経験した感情を思い出し、ギュッと強く胸の部分を握った。


「 ……レオン殿は、復讐しようとは思わなかったのだろうか……。

自分を受け入れず、拒絶する世界に……。 」


世界を変えうる力を持つこと。

その世界が自分に都合が悪いモノであればあるほど、その力を使って排除しようと考えるはずだ。

世に冷遇された者ほど、金や権力を突然手に入れれば、悲しい末路へと辿り着く……そんな者達を沢山この目で見てきたし、自分だって、アーサー様と出会えなかったら、きっとそうなっていたに違いない。


ズキズキと痛みだす心臓を軽く叩き、何とも言えない複雑な気持ちを持て余す。


「 真実が何であるかは分からんが、今のところ、自分を受け入れてくれたリーフ殿に忠誠を誓っているということか……。

なら、当分は問題ないかもしれんが、今後の事を考えると恐ろしいな。

下手をすれば、世界を変えうる存在がたった一人の人間に委ねられるという事だから。 」


私はう~ん……う~ん……と悩む頭を抱えながら、次なる行動を起こす。


リーフ殿という存在についてもう少し知るべきだ。


そう考えた私は再度諜報ギルドへ依頼を出し、その人物の人となりを徹底的に調べてもらったのだが……これがさっぱり気になる点が見えてこない。


とりあえず公爵家とは思えないくらいフリーダムな生活をしてた様で、自然体に過ごすリーフ殿に対し、街の人々は ” 変わり者のリーフ様 ” と気安く呼んでいたくらいで、何か突出した問題行動は一つもなかった。


しかし、リーフ殿を非常に恐れている層の人間もいた様で、食い気味にその報告書を呼んだのだが────なんというか…… ” 自業自得 ” ” 因果応報 ” という言葉しか出てこない内容で、私は呆れから来る汗を掻く。

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