【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,367 / 1,649
第四十二章

1351 遠い過去の様だ

しおりを挟む
( リーフ )

「 うるせぇんだよ!!

どうせ俺達はイシュル神に逆らった大罪人なんだから、どうでもいいだろう!!

お前だって…………っ! 」


男性は大声で怒鳴ったが、最後は随分と意気消沈している様子を見せた。

すると、女性はピタリと涙を止めてサァ……と青ざめて下を向き、周りにいる街の人たちも同様の様子で視線を下へ向ける。

そんな女性と周囲を見て、男性はまた大声で怒鳴った。


「 なぁ!!そうだろう!!?俺達は全員大罪人だ!!

イシュル神の愛し子様を、傷つけ陥れ……そんな俺達が幸せになるなんて……許されるわけないだろう?!

せめて ” 神託 ” の後、直ぐに保護すれば……。

でも……でも……。 」


男性はブルブル、ガタガタと震え出し、両手で顔を覆ってその場に伏せる。

そしてまるで懺悔する様に泣きながら言った。


「 あぁ……無理だ……無理だ……無理なんだよぅ……。

” 黒 ” が……俺は ” 黒 ” が怖くて……憎くて……溜まらない……!!
・・
あの日見た光景が忘れられねぇんだよ……。

黒く染まった空と、黒いドロドロした塊に、黒く染まった大地の様なモンスターの大群……っ!!

俺の母さんも父さんも……友も……逃げ遅れたヤツは全員死んじまった……っ……。

分かっているのに……でもどうしても俺は……っ! 」


男性は伏せたまま大号泣してしまい、それを見下ろした女性はもう何も言えずに、フラフラと去っていく。

周りの人たちも呆然としながら、立ち尽くしていて……それぞれがそれぞれの葛藤や罪悪感に苦しんでいる様子だった。


そこで俺はやっと理解した。


何でレガーノの人たちがレオンハルトが英雄だと分かった後も保護しようとしなかったのかを。


「 呪災の卵が孵化して……レガーノもその被害を受けたんだ。

レガーノは、守備隊も戦闘機関もないから……多分沢山の人たちが逃げ遅れて……。 」


俺は改めて街中を見回してみたが、決して多くはないレガーノの人口は更に少なくなっている様だった。


その時の恐怖に勝てなかった街の人たちはレオンハルトを放置し、それがまたイシュル神をこよなく愛する街の人たちの心にトドメを差してしまったのだろう。


だからレガーノは崩壊した。

去っていくレオンハルトと共に……。


大きな窓はヒビ割れ、完全に崩壊してしまい、跡形もなく消えてしまった。


” 悲しい ” しかない未来の数々に心はジクジクと痛む。

皆幸せになりたいと願うのに、幸せになれない世界。


誰もが選択を取り上げられ、一部の人だけが幸せを独占する世界は……客観的に見てあまりにも汚くて醜いモノだと思った。


「 沢山の選択肢を奪って統一された世界、俺は嫌いだ。

だって世界って、沢山の選択肢の集合体だと思うから。 」


これまで見てきたモノ全てを総合して、俺は俺の答えを出す。

そして顔を上げると、そこには丸くて数字の ” ゼロ ” にも似た窓があり、そこからまた新たな景色が見えた。


丸い太縁メガネに、ヒョロヒョロした体。

極一般的な容姿をしている男性が、どこかの部屋にいて窓の外を覗いている。


その顔は悲しみに満ちていて、絶望を分かりやすく語っていた。

その視線の先には、沢山の人族やエルフ族、獣人やドワーフ族が一つの縄で繋がれていて、兵士に引っ張られて歩かされている。

一体なぜ?────と疑問を持ったのは一瞬で、その全員の首筋には 【 奴隷陣 】がしっかりと刻まれていた事から、奴隷達を何処かに連れて行こうとしている事が分かった。


全員奴隷……?

何の罪を犯したんだろう……?


列を作ってゾロゾロと歩いていく奴隷達を見ながら考え込んでいると、街の中でその奴隷達を見ている人たちがヒソヒソと声を潜めて話し始める。


「 とうとうエドワード様が、元から否定的だった他種族の排除を本格的にしだしたんだな……。

その先頭に立っているのは、エドワード派閥と関係の深い傭兵ギルド長のオリビアだってよ。 」


「 クソっ……何にもしてねぇ無実の他種族を、めちゃくちゃな法律で次々と奴隷化しやがってっ……!エドワードとオリビアの野郎……! 」


「 ────しっ!滅多な事言うもんじゃねぇ!

今一緒に連れてかれてる人族は、皆他種族を庇った奴らだよ……。

お前まで連れてかれちまったら、奥さんと子供が路頭に迷うぞ。

……仕方ねぇんだ……。 」


悔しげにその列を見ている人々だったが、一人、また一人とそれから視線を外し、自分たちの日常へと帰っていった。

それを窓を通してみていた丸渕メガネの男性は、まるで現実から逃げる様に目を瞑る。


「 なぜ数で勝る ” 善 ” は ” 悪 ” に勝てないのか……。

これは知能が高い生物の辿る運命なのかな?


一体何回繰り返すんだろうね。


……全ては ” ゼロ ” に戻る……。

それが……世界の答え……か……。 」


────ガシャン!!ガシャンッ!!


丸縁メガネの男の人の動きが突然止まり、まるで水に流す様に全ての景色の色が消えていくと、そのまま大きな音を立ててその窓は崩れて消え去った。


俺は一体何を見せられているんだろう?


突然、 ” 希望 ” を持って戦っていたのが遥か昔の様な気がして……その場で足を止めたまま視線を下げる。

するとまるでそんな俺にトドメを差すような声が白い空間の至る所から聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか3歳の僕を、ひろってくれたのは、やさしい16歳の男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

処理中です...