【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十五章

1421 もらえるモノ

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( ジャリー )

ニコッと穏やかに微笑む大司教を見上げ、全員がガタガタと大きく震えだす。


準聖人を迎えるまでの子供は神の使い。

危害を加えるのは勿論、傍観することも大罪とされているのは世界の常識だ。


それは勿論誰もが知っているため、その場はシン……と静まりかえってしまった。

すると、大司教様はそんな全員を見てニコッともう一度笑う。


「 そんな大罪人に成り下がった君たちには、それにふさわしい罰がニコラ王より与えられるだろう。

彼女達に危害を直接加えた者は、【 世界の境界線 】へ。

そして他の者たちは犯罪奴隷としての余生が与えられるだろうね。

イシュル神の元に旅立つまで、世界にとって ” 役に立つ ” ” 価値ある ” 者として生きていきなさい。

長くは生きられないだろうけど……。 」


そう言い放つと全員の顔には絶望が浮かんだが、私とルビーを殴った男はそれでも抵抗しようと思ったのか、そのボロボロの状態で大司教に飛びかかろうとした。

が────……突然そこら中から武装した聖兵士達が飛び出し、男を拘束する。


「 ────グッ……!!ぐ、ぐぞぉぉぉぉぉぉ!!!離せぇぇぇぇぇ────!!!

俺はただ、ついてきただけなんだよぉぉぉぉ!! 」


「 お許しを~!!私はこの男に騙されていたんですぅぅぅ~……!! 」


それぞれがそれぞれの言い訳を必死に叫んでいたが、聖兵士達の彼らを見る目は冷たい。

容赦なく近くに止まった護送馬車に乱暴に放り込むと、そのまま連れていってしまった。


後に彼らは、大司教グレスター様が言った通り、ニコラ王により私とルビーを殴った男は魔素領域との境界線へと送られ、その他の者達は全員が犯罪奴隷にされたそうだ。


世界にとって ” 役立たず ” で ” 無価値 ”  な彼らは、それにふさわしい、世界のゴミ箱へと捨てられてしまったと…………そういう事だ。


「 …………。 」


彼らが去っていった護送馬車が見えなくなるまで見つめていると、大司教様は残った聖兵士たちに他の子供達の保護をする様、指示を出す。

そして後からやってきた馬車に子どもたちが一人ずつ乗り込んでいくと、大司教様は、私とルビーの方を向く。

それにドキッ!と心臓が跳ねた。

大司教はそんな私に気づく事なくゆっくりと近づいてくると、私達の直ぐ目の前で止まり困った様に笑う。


「 ……無茶したね。 」


もしかして私達を気遣おうとした言葉だったのかもしれないが、私には私という存在を否定する言葉の様にしか聞こえなくて……ガッカリしてしまった。


……この人も私という人間を認めてはくれない。

やっぱり神様などではなかった。


勝手に期待して勝手に落胆する。

馬鹿みたいだと思いながら、私は八つ当たりする様にプイッと顔を逸らした。


「 別に。私は自分の価値を示しただけだから。 」


助けてもらったのに酷い態度。

それに反省する気持ちはあったが……今はそれを改める様な気持ちにはなれなかった。


チクチクと罪悪感に苛まれながらも顔を逸らし続ける私を、大司教は全く気にしていない様子で、「 君の名前を教えてくれないか? 」と尋ねてくる。


「 ……ジャリー。道端の砂利からとった名前だよ。 」


隠す様な事でもないのでそっけなく答えると、大司教様はわずかに目を見開いた。


きっと酷い名前だと思ったからに違いない。

なんの役にも立たない砂利からとった名なんて。


その名を呼ばれる度に、私は私という存在がいらないモノであるかを思い知らされる。

きっとこの名は、私にとって一生過去の負の遺物として残り続けるだろう。

しかし────……。


「 そうか。とても良い名だ。 」


覚悟を決めた私に向かい、大司教はそんな心にもない酷い言葉を吐き捨ててきた。

それには怒りが湧いて、目の前が真っ赤に染まっていく。


一瞬でも神様だと思ったこの男は、他の皆と同じ……私を道端の砂利の様な存在だと罵ってきたのだ!


私は激しく燃える怒りと、その奥底に燻っている悲しみを抑え込み、諦めた様に目を閉じる。


私はきっと、今後一生人から価値あるモノとして見ては、貰えない。


でも、それでいい。


自分で見つけにいくから。


新たな目標に希望を見出し、ゆっくり目を開けようとしたその時────その後に続く大司教の言葉に目は一気に開かれる事になった。


「 砂利は命の源ともいえる水を綺麗にするため、とても重要なモノだ。

自らの身を汚しても世界を浄化しようとするその姿は、とても美しいと思う。 」


「 ────っ!! 」



────ポロッ……。


その言葉を聞いた瞬間…………開かれた私の目からは涙が一粒流れた。


自分に価値を与えてくれる言葉を初めてもらえた!

それは自分の価値を探すキッカケを、初めてもらったということだ。


自分の価値を決めるのは自分。

でも……それを決めて自分を認めるためには────こうして ” 他 ” から貰うキッカケが必要だったのだ。


気がつけばボロボロと流れていく涙を見下ろしながら、それをくれなかった両親への憎しみが湧き上がる。


” お前の   "   ジャリー "  は道端に転がる砂利から取ったものなのよ。

そんな砂利に価値なんてあると思う? ”



価値はあったと私は今、判断した。

大司教がくれたキッカケのお陰で……。


心の奥にべっとりとついていた両親への想い。

そこで薄ら笑う両親の顔を────────私は思い切り殴り飛ばした。

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