【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第四十六章

1429 死んでいく現実

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( エイミ )

あるだけのお金を使い、欲望のままに欲しいものを手にする両親を見て、私は幼くとも悟る。


” 現状に幸せを感じられない事 ”

それがきっと ” 不幸 ” なんだという事を。


その後は勿論そんな生活は続かず、あの貴族から貰ったお金は尽き、更に将来のためにと貯蓄していた分まで使い切ってしまうと、両親は欲が叶わなくなった事にイライラし始めた。

そして現状に毒を吐き始める。


欲を好きなだけ叶えてくれない世界が悪い。

自分に我慢を強いるばかりの世界が憎い。


そんな呪詛を吐くような両親の姿は……ただただ悲しかった。

そしてとうとうその日に食べるものにまで困る様になると、両親は焦りだし、それから脱出する方法を考える。


どうにか自分の欲望を叶えつつ、暮らしていけるには……?


そこで目をつけたのは私だ。


” 12歳になるまで、子供は神様の子 ”

その法律を盾に、使えるだけ使おうと考えたらしい。


お金がなくなれば私にボロボロの格好をさせ、街中を歩かせる。

そして家を一軒一軒回り、「 お金を恵んで下さい。 」と言わせて歩いたのだ。


そうして同情を引き、募金を集めると、それはまた両親の欲望を叶えるお金へ。


それを繰り返し、周りの人たちがお金を出し渋る様になると別の街へ移動する。

私の日常はその繰り返しになった。


私は柱になってしまったのだ。

両親のその狂って歪んだ生活を支える大事な柱に……。


同情を沢山引くため、私にはわずかしか食事を与えられず、両親がお腹一杯になるまで食べている姿を毎日見せつけられながら、体はどんどん痩せ細っていく。

そして両親だけが欲しいものを沢山買っては、幸せそうに笑う姿を見る生活。


欲を抑える心を持たない者が、一度でも欲望を叶える術を知ってしまえば……もうだめ。

もう二度と上へは上がれない。

両親にとっての "  家族  "   は、幸せの場所ではなく、自分の欲望を叶える道具になってしまった。


なんだか欲望って……とても怖いモンスターみたい。


元の面影をすっかり失くして生まれ変わった両親を見ると、本当にそう思う。


その変化に終わりがあるかは分からなかったが、その歪んだ生活自体には終わりが近づいていた。


もう目の前に迫ってきた私の資質鑑定。

それを前に、両親は毎日毎日イライラとする様になっていった。


私が準成人になってしまえば、もう今の生活はできない。

それはつまり、今まで叶っていた欲望が叶わなくなるって事だ。

両親にとってはそれが最大の恐怖で、何を犠牲にしても回避したいと考えた両親は、最終的に一つの決断をする。


「 これしか方法はないもんなぁ……。 」


私を見ながらボソッと呟く父の声に────嫌な予感がした。


それからすぐに、突然住んでいる家にガラの悪い男達がズカズカとやって来る。

見た目の怖さと、物々しい雰囲気に私は泣きそうになってしまったが、父と母は特に動じる事なく、むしろ嬉々として迎え入れた。


「 じゃあ、早速契約について話し合おうか。」


男達の中の一人が、一枚の紙をテーブルに置き、それを両親は手に取り読み始める。

そうしてあーだこーだと言い合い、やがてうまく話がまとまったのか、端にボンヤリ立っていた私を呼びつけた。


「 エイミ、お前の就職先が決まったよ。

鑑定後、直ぐにココへ行く様に。 」


先ほど男がテーブルの上に置いた紙を、父は私の目の前に突きつける。

ボンヤリしながらそれを目で追うと……私の顔から血の気が引いていった。


それはここいらで一番大きな娼館との契約書であった。


準成人から見習いとして入り、18歳を迎えたら本格的にそこで働くといった内容が書かれている。


「 …………えっ? 」


あんまりな内容に絶句していると、横から母がペラペラと説明を始めた。


「 紹介してくれたのは、母さん達がお金を借りてる金融商会のこの人達なんだけど、エイミがここで働くなら、借金はチャラ。

それと今後の売り上げの約50%は、貰えるそうなのよ。

だから、これから母さんと父さんの生活は大丈夫そう。

エイミが親孝行な子で本当に良かったわ~! 」


嬉しそうに笑う母に……私は何も言えなかった。


私はこれから一生、両親の歪んだ欲望を叶え続ける柱にならないといけないようだ。


両親の決断は、私を犠牲にする事。

それが分かっているというのに、この時の私は、まだ馬鹿みたいに両親を信じていた。


両親が私を捨てるわけない。

きっといつかは私のことを大事だと思ってくれるはず。


役に立ち続ければ、愛してくれるはずだ!


違うと冷静な部分は分かっていたのに、私はそれを拒絶した。


多分そう信じないと、苦しかったから……。

要は私は、現実を犠牲にする事で自分を守ったのだ。


目を瞑り、自分にとって信じたくない不都合な世界を何度も何度も何度も殺す。


でも────その不都合な現実は、しつこかった。


無限に湧いては、ひたすら私に向かって手を伸ばして来る現実。


"  やめて……やめてよ!!もう来ないで!! "


喉が潰れるほど叫び、たくさんの死んでしまった現実達を見下ろし、私はボソッと呟いた。


"   なんで誰も助けてくれないの? "


そう尋ねても……死んでしまった現実は、何も答えてはくれなかった。

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