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第四十六章
1434 心を守る代償
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( エイミ )
” ふん。めんどくせぇが……俺は ” 親思い ” の男だからよ。
……仕方ねぇか。 ”
そんな謎の言葉を残して去っていった死神の様な男。
その死神は、両親を地獄へと連れて行ってしまった。
一切の情け容赦なく泣き叫ぶ両親を……。
しかもその子供である私を蹴り飛ばして、目の前でだ。
” 親と子供を引き剥がすなんて……なんて酷い事を……。 ”
” 両親は改心する可能性だってあったのにね。
その可能性を潰して子供から親を奪うなんて……。 ”
一人になった私に、周りの人達はそう言っては悲しそうに泣いたり、慰めてきたりした。
その全てが私を心配し励ますために掛けてくれた心遣いであった事は分かっている。
だが────……。
” 勝手に現実を殺すな。 ”
” しっかり目を開けて戦え。”
” それとも自分が ” 見たいだけ ” の幻のために、今度は自分を殺すか? ”
あの男の言葉の方が、遥かに私の心に響いている。
「 ……真実を殺すなと……。
そして戦えと言われました……。
手を伸ばしてきた両親の手を……取ろうとした私に……。 」
「 ……なるほどね。 」
オリビア様は、それで大体の事情は把握したらしく静かに頷いた。
あの時両親の手をとっていたら……今度は、真実ではなく自分を殺し続ける日々を送る事になっていたと思う。
” 私 ” を殺して両親に差し出せば、きっと両親は喜んで、ハリボテの様な感謝と空っぽの愛情をくれただろう
そして両親の ” 欲 ” は、私を食べ続け……きっと成長し続けたはずだ。
「 ────フ……フフッ……。
ハハハッ……。 」
それがあまりにも馬鹿らしくて、私は思わず笑ってしまった。
守って守って守って……最後は自分まで殺して得るものが、あまりにもゴミみたいなモノだったから!
そのまま笑い続ける私を見て、オリビア様は小さくため息をつくと、腕を組んで壁にもたれ掛かった。
「 ……真実から目を逸らすのも人生の中で必要な事だ。
現実は無情だからね。
だが……それを続ける事は、自分と自分を大事に想う人達を殺す行為でもある。
歴戦の強者の様に、巨大な悪と戦う必要はないが……結局 ” 生きる ” っていうのは、何かしらと戦っていかなきゃならないモノなんだろう。
例えば────自分の欲望……とかもね? 」
オリビア様の言葉を聞いて、私は下を向き自分の両親の事を思い出す。
「 ……両親は自分の ” 欲望 ” に負け続けた敗者でした……。
そして私は……真の敵であるその ” 欲望 ” を、ずっと助け続けてきた裏切り者です。 」
「 ……そういう見方もあるかもね。
欲望が叶わない環境であれば、普通の人生を歩めた奴らも沢山いるからさ。
残念ながら、この厳しい現実では、目を閉じた善人は欲望を叶える格好の道具になっちまうんだ。
どんなに普段いい奴だって ” 魔が差す ” ……なんて事はいくらでもあるからね。 」
それを聞いた瞬間、まるで自分の人生全てが駄目なモノだったと突きつけられた気がして……今までの自分に強い怒りが湧いた。
そして……自分に対する哀れみの気持ちも……。
「 ───っ……!!なんでっ!?
どうして利用されて使われた人が無理やり戦わないといけないの!!?苦しまなきゃいけないの!!?
私は……私はただ平穏に暮らしたいだけだったのに……っ。
それなら、欲望に負けて誰かを使う人の方が幸せになれるじゃない!!
私も……欲望に負けてしまえばよかったの……? 」
最後は弱々しく言って、下を向いたまま……自分の情けなさに泣きそうになった。
八つ当たりしてしまった……。
しかも初めて会った人相手に……。
申し訳なさすぎて顔を上げられずぐるぐるといろんな事を考えて……ここでやっと自分があの男に言いたかった事を理解した。
なぜ酷い事をされた側が頑張らないといけないのか?
だって私が真実を殺し続けたのは、両親のせい。
だったら欲望に負けた人の方が幸せになれるって事じゃないか?
ずるい。
ずるい。
ずるい!
そんな思いをあの男にぶつけたかった。
そして……やっぱり答えを求めていたのかもしれない。
自分だけでは出せないモノだったから……。
黙って俯いたままの私を、オリビア様は怒る事をせず静かに見つめ、しばらくの沈黙の後ゆっくりと口を開いた。
「 欲望に負けない様に戦い続ける事は、” 幸せを感じられる心 ” を守るための代償だからじゃないか?
欲を叶える度に、心は削れていって……大きく削られてはもう元には戻れない。
人の心ってもんは、その欲望が簡単に叶っちまうと、今まで幸せだった事が全部幸せな事じゃなくなってしまうんだ。
今まで感じられていた幸せが感じられなくなる……それはとてもつらい事だと思うがね。
あんたの目から見た両親は……幸せそうに見えたのかい? 」
「 ……そ……れは……。」
思ってもみなかった視点で問われ、私は両親との日々を振り返る。
買い物のオマケで貰った小麦ボールで美味しいね!と笑いあった日々。
どんなにささやかな事でも、すごく幸せだと笑っていたのに……。
欲望に負けた瞬間、両親にとってそれは幸せではなくなってしまった。
” ふん。めんどくせぇが……俺は ” 親思い ” の男だからよ。
……仕方ねぇか。 ”
そんな謎の言葉を残して去っていった死神の様な男。
その死神は、両親を地獄へと連れて行ってしまった。
一切の情け容赦なく泣き叫ぶ両親を……。
しかもその子供である私を蹴り飛ばして、目の前でだ。
” 親と子供を引き剥がすなんて……なんて酷い事を……。 ”
” 両親は改心する可能性だってあったのにね。
その可能性を潰して子供から親を奪うなんて……。 ”
一人になった私に、周りの人達はそう言っては悲しそうに泣いたり、慰めてきたりした。
その全てが私を心配し励ますために掛けてくれた心遣いであった事は分かっている。
だが────……。
” 勝手に現実を殺すな。 ”
” しっかり目を開けて戦え。”
” それとも自分が ” 見たいだけ ” の幻のために、今度は自分を殺すか? ”
あの男の言葉の方が、遥かに私の心に響いている。
「 ……真実を殺すなと……。
そして戦えと言われました……。
手を伸ばしてきた両親の手を……取ろうとした私に……。 」
「 ……なるほどね。 」
オリビア様は、それで大体の事情は把握したらしく静かに頷いた。
あの時両親の手をとっていたら……今度は、真実ではなく自分を殺し続ける日々を送る事になっていたと思う。
” 私 ” を殺して両親に差し出せば、きっと両親は喜んで、ハリボテの様な感謝と空っぽの愛情をくれただろう
そして両親の ” 欲 ” は、私を食べ続け……きっと成長し続けたはずだ。
「 ────フ……フフッ……。
ハハハッ……。 」
それがあまりにも馬鹿らしくて、私は思わず笑ってしまった。
守って守って守って……最後は自分まで殺して得るものが、あまりにもゴミみたいなモノだったから!
そのまま笑い続ける私を見て、オリビア様は小さくため息をつくと、腕を組んで壁にもたれ掛かった。
「 ……真実から目を逸らすのも人生の中で必要な事だ。
現実は無情だからね。
だが……それを続ける事は、自分と自分を大事に想う人達を殺す行為でもある。
歴戦の強者の様に、巨大な悪と戦う必要はないが……結局 ” 生きる ” っていうのは、何かしらと戦っていかなきゃならないモノなんだろう。
例えば────自分の欲望……とかもね? 」
オリビア様の言葉を聞いて、私は下を向き自分の両親の事を思い出す。
「 ……両親は自分の ” 欲望 ” に負け続けた敗者でした……。
そして私は……真の敵であるその ” 欲望 ” を、ずっと助け続けてきた裏切り者です。 」
「 ……そういう見方もあるかもね。
欲望が叶わない環境であれば、普通の人生を歩めた奴らも沢山いるからさ。
残念ながら、この厳しい現実では、目を閉じた善人は欲望を叶える格好の道具になっちまうんだ。
どんなに普段いい奴だって ” 魔が差す ” ……なんて事はいくらでもあるからね。 」
それを聞いた瞬間、まるで自分の人生全てが駄目なモノだったと突きつけられた気がして……今までの自分に強い怒りが湧いた。
そして……自分に対する哀れみの気持ちも……。
「 ───っ……!!なんでっ!?
どうして利用されて使われた人が無理やり戦わないといけないの!!?苦しまなきゃいけないの!!?
私は……私はただ平穏に暮らしたいだけだったのに……っ。
それなら、欲望に負けて誰かを使う人の方が幸せになれるじゃない!!
私も……欲望に負けてしまえばよかったの……? 」
最後は弱々しく言って、下を向いたまま……自分の情けなさに泣きそうになった。
八つ当たりしてしまった……。
しかも初めて会った人相手に……。
申し訳なさすぎて顔を上げられずぐるぐるといろんな事を考えて……ここでやっと自分があの男に言いたかった事を理解した。
なぜ酷い事をされた側が頑張らないといけないのか?
だって私が真実を殺し続けたのは、両親のせい。
だったら欲望に負けた人の方が幸せになれるって事じゃないか?
ずるい。
ずるい。
ずるい!
そんな思いをあの男にぶつけたかった。
そして……やっぱり答えを求めていたのかもしれない。
自分だけでは出せないモノだったから……。
黙って俯いたままの私を、オリビア様は怒る事をせず静かに見つめ、しばらくの沈黙の後ゆっくりと口を開いた。
「 欲望に負けない様に戦い続ける事は、” 幸せを感じられる心 ” を守るための代償だからじゃないか?
欲を叶える度に、心は削れていって……大きく削られてはもう元には戻れない。
人の心ってもんは、その欲望が簡単に叶っちまうと、今まで幸せだった事が全部幸せな事じゃなくなってしまうんだ。
今まで感じられていた幸せが感じられなくなる……それはとてもつらい事だと思うがね。
あんたの目から見た両親は……幸せそうに見えたのかい? 」
「 ……そ……れは……。」
思ってもみなかった視点で問われ、私は両親との日々を振り返る。
買い物のオマケで貰った小麦ボールで美味しいね!と笑いあった日々。
どんなにささやかな事でも、すごく幸せだと笑っていたのに……。
欲望に負けた瞬間、両親にとってそれは幸せではなくなってしまった。
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