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第四十八章
1470 これからの事
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( セリナ )
叔母の最大の目的は、私のためにと母と父が残してくれていた僅かながらの遺産を手に入れる事。
そして次にしたのは、自分名義で借金をして豪遊する事であった。
なぜそんな無謀な借金をするのか?
その理由はとても単純なモノで……要は私に最初から借金を押し付けるつもりだったからだ。
そして計画通り、叔母はとてもではないが払いきれない借金をこしらえて、私が準成人を迎えたその日に姿を消した。
私の手元には母のためにした借金と、叔母が豪遊した分の借金だけ。
この時点で、私に残された道は借金奴隷になる事のみとなってしまった。
金目のモノは全て持ち拐われた部屋の中で、私は呆然と借金取りが来るのを待ってる間、なぜここまで酷い事を叔母はしたのだろうと気まぐれに考えてみる。
母の両親は共に母と同じ言語学者で、その全員が文字をこよなく愛し、暇さえあれば本を読む事を好んでいたらしい。
対して叔母は物心ついた頃から、良く言えば外交的な性格、悪く言えば短絡的な性格をしていて、家族の誰とも考えが合わない中過ごしていた様だ。
” あんたって、ほ~んと、両親やおねぇちゃん達と同じで、陰湿だし暗いし、気持ち悪~い。 ”
” 女のくせに馬鹿みたいに勉強してどうすんの? ”
” 女の幸せはいかにいい男を捕まえるかじゃん?
楽して良い暮らしを手に入れる事が最高の人生の証、いい女の証拠なのに、そんな勉強だけが取り柄の愛想なしの根暗ブスじゃ……ねぇ? ”
” 努力の方向性が間違ってんだよ、ば~か。 ”
暇さえあれば本を読んでいた私に、毎日の様に暴言を吐いていた叔母。
その言葉は弱った心によく染みて毎日泣いていたが……今にして思えばコンプレックスをずっと私にぶつけていたのかもしれないと思う。
そしてそれは姉である私の母にも向いていて────だからこそあんなにも酷い事を平然としていたのだろう。
その時の私には人の悪意に立ち向かう程の強さも余裕もなく、父が死に、母も亡くなり……更には叔母に毎日罵られて、すっかり世界に絶望していたため、言われるがままになっていた。
” 頭を鍛えるより笑顔の練習をしたらどう?
ただでさえ地味でブスな顔をしてんだから、愛想くらいないと生きてる価値なくない? ”
「 ……私の……価値……。 」
頭の中を過った言葉を思い出しながら、私は必死に笑おうと口角を上げたが、ヒクヒクと痙攣するだけで……とうとう笑顔は作れなかった。
「 ……ハハッ。 」
笑顔は作れなくても口からは乾いた笑いが漏れる。
私はボンヤリしながら、テーブルの上に置かれている叔母が最後に残していったらしい書き置きを見下ろした。
『 ほら、全部無駄だったでしょ?私の圧倒的勝利!
無駄な努力お疲れ様でした。
永遠にさようなら。 』
私や母とは正反対とも言える人生を選択した叔母は、一体何に勝ちたかったんだろう?
生き方に敵も味方もないというのに……。
それは分からなかったが……欲望に忠実で、刹那の人生を生きる叔母にとって、堅実に生きる者達へ復讐したい何かがあったのかもしれない。
ボンヤリとそんな事が浮かんだが、私は首を横に振って疑問を打ち消した。
それが分かった所で何も変わらない。
私はこのまま借金奴隷になって、今後は ” 人 ” ではなくなるのだから……。
改めてそれを理解すると、私は何もかも諦め部屋の隅で膝を抱えて借金取りが来るのを待った。
それからしばらくして、突然バンッ!!と乱暴に扉が開く。
「 へいへ~い。【 フォレスト商会 】から来ましたケインでぇ~すっ。
借りたもん、とっとと返して下さ~い。 」
戯けた様子で入ってきたのは、いかつい体に鋭い眼光、非常にガラの悪い風貌を持った男であった。
考えるまでもない。
借金取りだ。
私が座り込んだまま、絶望を写した目を向けると……男は面倒そうにハァ~とため息をつく。
「 人間っつーのはよ、楽を知っちまうと駄目になるヤツの方が多いんだよなぁ~。
ま、ご愁傷様。 」
男は黙って泣く私に奴隷陣を刻み、馬が引く小さな荷台車に乗せると、そのまま出発した。
そうしてどんどんと家から遠ざかっていく荷台車の中で、私はボンヤリとこの先の事を考える。
これから私はどこに売られるのか……。
貴族の慰みモノになるか、それとも一生働き詰めの職場に放り込まれるのか……。
どちらにせよ、もう二度と自由などない生活を強いられる。
どんどんと感情が死んでいくのを感じながら、顔を伏せていると……突然男が私に話しかけてきた。
「 ────で?お前はどこに売られたい? 」
突然なげかけられた質問がどうにも奇っ怪に思えて、私は首を傾げる。
だって奴隷は人ではなく ” モノ ” 。
だから選択権を貰える立場ではないからだ。
「 ……どこでもいい……です。 」
そのため無難に答えたが……男は心底嫌そうに舌打ちをした。
「 迷惑なんだよなぁ~お前みてぇな負け犬野郎。
いいか?奴隷だろうがなんだろうが、仕事っつーモンはやる気と根性がねぇといらねぇんだよ。
どこに売っぱらっても苦情の嵐だ!
めんどくせぇ~な。 」
「 ────なっ……! 」
男のあんまりな言葉に、死にかけていた感情が突然蘇る。
叔母の最大の目的は、私のためにと母と父が残してくれていた僅かながらの遺産を手に入れる事。
そして次にしたのは、自分名義で借金をして豪遊する事であった。
なぜそんな無謀な借金をするのか?
その理由はとても単純なモノで……要は私に最初から借金を押し付けるつもりだったからだ。
そして計画通り、叔母はとてもではないが払いきれない借金をこしらえて、私が準成人を迎えたその日に姿を消した。
私の手元には母のためにした借金と、叔母が豪遊した分の借金だけ。
この時点で、私に残された道は借金奴隷になる事のみとなってしまった。
金目のモノは全て持ち拐われた部屋の中で、私は呆然と借金取りが来るのを待ってる間、なぜここまで酷い事を叔母はしたのだろうと気まぐれに考えてみる。
母の両親は共に母と同じ言語学者で、その全員が文字をこよなく愛し、暇さえあれば本を読む事を好んでいたらしい。
対して叔母は物心ついた頃から、良く言えば外交的な性格、悪く言えば短絡的な性格をしていて、家族の誰とも考えが合わない中過ごしていた様だ。
” あんたって、ほ~んと、両親やおねぇちゃん達と同じで、陰湿だし暗いし、気持ち悪~い。 ”
” 女のくせに馬鹿みたいに勉強してどうすんの? ”
” 女の幸せはいかにいい男を捕まえるかじゃん?
楽して良い暮らしを手に入れる事が最高の人生の証、いい女の証拠なのに、そんな勉強だけが取り柄の愛想なしの根暗ブスじゃ……ねぇ? ”
” 努力の方向性が間違ってんだよ、ば~か。 ”
暇さえあれば本を読んでいた私に、毎日の様に暴言を吐いていた叔母。
その言葉は弱った心によく染みて毎日泣いていたが……今にして思えばコンプレックスをずっと私にぶつけていたのかもしれないと思う。
そしてそれは姉である私の母にも向いていて────だからこそあんなにも酷い事を平然としていたのだろう。
その時の私には人の悪意に立ち向かう程の強さも余裕もなく、父が死に、母も亡くなり……更には叔母に毎日罵られて、すっかり世界に絶望していたため、言われるがままになっていた。
” 頭を鍛えるより笑顔の練習をしたらどう?
ただでさえ地味でブスな顔をしてんだから、愛想くらいないと生きてる価値なくない? ”
「 ……私の……価値……。 」
頭の中を過った言葉を思い出しながら、私は必死に笑おうと口角を上げたが、ヒクヒクと痙攣するだけで……とうとう笑顔は作れなかった。
「 ……ハハッ。 」
笑顔は作れなくても口からは乾いた笑いが漏れる。
私はボンヤリしながら、テーブルの上に置かれている叔母が最後に残していったらしい書き置きを見下ろした。
『 ほら、全部無駄だったでしょ?私の圧倒的勝利!
無駄な努力お疲れ様でした。
永遠にさようなら。 』
私や母とは正反対とも言える人生を選択した叔母は、一体何に勝ちたかったんだろう?
生き方に敵も味方もないというのに……。
それは分からなかったが……欲望に忠実で、刹那の人生を生きる叔母にとって、堅実に生きる者達へ復讐したい何かがあったのかもしれない。
ボンヤリとそんな事が浮かんだが、私は首を横に振って疑問を打ち消した。
それが分かった所で何も変わらない。
私はこのまま借金奴隷になって、今後は ” 人 ” ではなくなるのだから……。
改めてそれを理解すると、私は何もかも諦め部屋の隅で膝を抱えて借金取りが来るのを待った。
それからしばらくして、突然バンッ!!と乱暴に扉が開く。
「 へいへ~い。【 フォレスト商会 】から来ましたケインでぇ~すっ。
借りたもん、とっとと返して下さ~い。 」
戯けた様子で入ってきたのは、いかつい体に鋭い眼光、非常にガラの悪い風貌を持った男であった。
考えるまでもない。
借金取りだ。
私が座り込んだまま、絶望を写した目を向けると……男は面倒そうにハァ~とため息をつく。
「 人間っつーのはよ、楽を知っちまうと駄目になるヤツの方が多いんだよなぁ~。
ま、ご愁傷様。 」
男は黙って泣く私に奴隷陣を刻み、馬が引く小さな荷台車に乗せると、そのまま出発した。
そうしてどんどんと家から遠ざかっていく荷台車の中で、私はボンヤリとこの先の事を考える。
これから私はどこに売られるのか……。
貴族の慰みモノになるか、それとも一生働き詰めの職場に放り込まれるのか……。
どちらにせよ、もう二度と自由などない生活を強いられる。
どんどんと感情が死んでいくのを感じながら、顔を伏せていると……突然男が私に話しかけてきた。
「 ────で?お前はどこに売られたい? 」
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そのため無難に答えたが……男は心底嫌そうに舌打ちをした。
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いいか?奴隷だろうがなんだろうが、仕事っつーモンはやる気と根性がねぇといらねぇんだよ。
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