【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第五十二章

1567 そういう事

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(エドワード)

────ガンッ!!!

強烈な痛みと共に大きな打撃音が顔から聞こえ、何が起こったのか分からないまま……俺の体は後方の壁に叩きつけられた。

「ヒ、ヒィィ!!」

そのせいで両隣にいた者達が驚き、そのまま横に退避したのが一瞬見えた後は、床の映像が目に写る。


「────?グ……ググ……っ……??」


次に襲ってきたのは、床に叩きつけられる痛みで────ここで初めて、自分が壁に叩きつけられ倒れている事に気付いた。

い、一体何が起きた……??


「…………っ!!??」

「なっ…………は……???」


混乱する俺同様、周りの者達も展開についていけず、呆気に取られている。


「う……うぅ……ぁっ……??」


熱くて熱くて堪らない頬を押さえると、熱い何かが鼻の奥から流れてきて────ポタッ……ポタッ……と赤い液体が床に滴り落ちた。

呆然としながら鼻を腕で拭えば、べっとりと大量の血が袖につく。

これは……俺の……??


「────立て。」


いつの間にか目の前に立っている人物が、俺を見下ろしそう命じてきた。

今、自分の身に起きている事が信じられなくて……まるで夢を見ている様にボンヤリとしたまま見上げると、そこにはあの忌々しい『救世主』などと言われているガキの姿がある。

「…………は?」

やっと口から出たのは、その言葉だけ。

そんな俺の前で奴は拳を握り、更にもう一発俺の顔をストレートで殴りつけた。

────バキッ!!!

今度は鼻から何かが折れる様な音がして、更に赤い血が激しく流れる。


「……っがっ!!!あがが……っ!!!」


痛みに悶えながら悲鳴をあげると、直ぐに痛みを上回る怒りが込み上げた。


コイツは……コイツは……この俺を……この俺を……っ……!!


直ぐに折れたらしい鼻を押さえて立ち上がると、そいつを指差し怒鳴りつけた。


「ぎ……貴様ぁぁぁ~っ!!一体何のつもりだ!!!おっ、おっ、王族の俺を……こっこっこっ……この俺を……っ!!!」


大きな怒鳴り声に、周りで固まっていた者達全員がビクッ!と体を震わせ、正気に戻った様だが、まだ誰も動けない。

そんな中で、ヤツだけはケロッとした様子で言った。


「悪さする坊やを殴ってやった。」


「は……はぁぁぁぁぁぁぁっ!!???貴様は一国の王子であるこの俺を……殴ったんだぞ!??そんなの即刻死罪だ!!当然だろうっ!!!」


王族である自分を殴るなど、如何に公爵家といえども死罪が当たり前の事だ。
これは流石に言い逃れできない!

フーッ!!フーッ!!と息を荒げる俺を見て……やはり奴はあっけらかんとしていた。


「君はちゃんと人の話を聞いていたのかい?
ついさっき『これから起こる事は夢の出来事にしてくれ』って言ったばかりじゃないか。
つまり、俺は君を殴っていない。だって夢は現実じゃないんだから。」

「────っ!!!??」


俺はハッ!として目を見開き、同時に他の者達も、ヤツの狙いを理解した様で息を飲む。


『この場を夢にする。』


それは、『俺達の派閥が痛い目を見ている、今のこの瞬間が夢の様だ』という、嫌味混じりの言葉だと思っていたが……そうではなかった!
              ・・・・・・・・・・・・・
ヤツが考えた事、それは────現実にカウントされない空間を創っただけって事。


────っクソっ!!!こんなはずでは……!!


まんまとヤツの思惑に乗ってしまった事に気づき、カァァ~!!と頭に血が登っていく。

そしてピキピキ……と音を立てて額に血管が走っていくのを感じ、周りの者達の顔色はどんどんと青ざめていった。


許さない……許さない……絶対にっ!!
この俺をコケにした事がどんな事を招くのか……教えてやる!!


俺は余裕そうに立っているドブネズミを睨みながら……ニヤッと笑ってやった。


「ふ……くくっ……。殴られた事など生まれて初めてだ。
暴力をふるい、話し合いもできぬとは……まるで世でいう邪神そのものの様だな。」


そう言いながら乱暴に鼻血を拭き取ると、固まっていた周りの同志達が一斉に避難の声をあげる。


「そっ……そうだそうだ!!そんな野蛮な暴力を振るって言うことを聞かせようとするなんて、盗賊や犯罪者と同じではないか!!」

「何が救世主だっ!!気に入らないなら殴るなど、獣と同類!!」

「我々は、貴様の様なエセ救世主など、我々は断じて認めんぞ!!!」


俺が言っている事は全て、『正しい』事だ。

『正しい』から皆が俺の味方をする。

俺が正義でお前が悪、思い知ったか!!


心の中で声高々に叫び笑ってやると、ヤツは下を向いてブルブルと震え始めた。

今更ながら、大変な事をしてしまったとでも思っているのだろう。

だとしても何をしてももう手遅れであるため、全員が冷たい目で失笑していたのだが、なんと────……。

ブブ────ッ!!!!

奴は勢いよく吹き出し、そのままゲラゲラ笑い出したのだ!
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