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10 自分の生き方
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『完全無欠』
誰からも必要とされている、完璧な存在の勇者様。
『不完全』
何も突出しているモノがなくて、誰にも特に必要とされない荷物番の俺。
こんな正反対の俺たちは永遠に交わる事はないし、俺の声は絶対にヒカリ君には届かない。
それは分かっている。分かっているけど────……。
「かぼちゃの煮物、ブタの角煮……。」
ボソッと呟いた声にわずかにヒカリ君の方が揺れる。
「あとは、インゲンの鰹節あえに山芋の醤油焼き!」
────ピクピク……!
今度は耳が僅かに動いた。
多分これはヒカリ君の好物になったモノのはず。
食べた時に少しだけ纏う空気が柔らかくなったから。
「あとは~……どこでも寝転がって寝れるけど、本当はそれが嫌なんだ。意外に綺麗好きなんだよな~。
干したての布団もあるからさ、いつでも帰ってこいよ。」
見てない所で干したての布団に顔を埋めてウットリしているのも知っている!
俺はそれを思い出し、キラッ!と目を光らせる。
どんなにうっとおしいって言われたって、俺はいつだって全力で人と関わろうと決めている。
だから人生の中で関わる事ができた人の事は、沢山見て、聞いて、話して自分なりの答えを出してきた。
住んでいる世界が、持っているモノが、境遇が、年齢が、外見が────。
何もかも違えど、こうしてせっかく出会えたのだから、俺はヒカリ君ともっと関わってみたいと思っている。
理解したいとか、支えたいとかそんな大層なことは思っていない。
ただ俺は俺の生き方を貫きたいだけなんだ。俺が今まで生きてきた人生で選んだ生き方を。
そう思って掛けた言葉だったが、ヒカリ君はソロ……と、こちらを振り向こうと顔を僅かに動かし…………。
「ちょっと!!聞いてるの!!?無能力者のくせに選ばれし戦士の私を無視するんじゃないわよ!!
この加齢臭モンスター!!」
────ビシッ!!と目の前で指を差されて、意識は突然現実へと戻る。
あ……あれれぇぇ~????
また白昼夢を見た気持ちで周りをキョロキョロすると、それについてもギャーギャーとアイリーンが文句を言うのでとりあえず謝って落ち着かせた。
最近ちょくちょく飛んでしまう意識に危機感を覚えたが、近所のおばあちゃんが「現実も夢の一種よ~。」って言ってたし、まぁいっか!と笑って流した。
ガミガミと文句を言われながら、ハハハ~と笑っていると────。
「相変わらずの能天気な間抜け面。いいね、役立たずは暇でさ。」
背後から聞き覚えのある声がして、俺は慌てて振り返ると一週間ぶりに見る冷たい瞳が。
「あ、おかえり。」
そう言うと、ヒカリ君は眉を潜めながら俺を無視して木の根本に座る。
『ご飯ちょうだい』
さもそう言わんがばかりの『お座り』と『待て』を同時に行って待つヒカリ君は、悲しい程いつも通り!
俺はやれやれとため息をつきながら、先程出来立ての『豆腐の揚げ出し醤油漬け』を盛り付け、更にヒカリ君の好物をこれでもかと皿に追加でいれて差し出してやると、パクパクと文句も言わずに大人しく食べだす。
その食べっぷりにニッコリしながら、煮出したばかりのお茶も渡してやると────今回はその手を振り払う事なくお茶を受け取ってくれた。
誰からも必要とされている、完璧な存在の勇者様。
『不完全』
何も突出しているモノがなくて、誰にも特に必要とされない荷物番の俺。
こんな正反対の俺たちは永遠に交わる事はないし、俺の声は絶対にヒカリ君には届かない。
それは分かっている。分かっているけど────……。
「かぼちゃの煮物、ブタの角煮……。」
ボソッと呟いた声にわずかにヒカリ君の方が揺れる。
「あとは、インゲンの鰹節あえに山芋の醤油焼き!」
────ピクピク……!
今度は耳が僅かに動いた。
多分これはヒカリ君の好物になったモノのはず。
食べた時に少しだけ纏う空気が柔らかくなったから。
「あとは~……どこでも寝転がって寝れるけど、本当はそれが嫌なんだ。意外に綺麗好きなんだよな~。
干したての布団もあるからさ、いつでも帰ってこいよ。」
見てない所で干したての布団に顔を埋めてウットリしているのも知っている!
俺はそれを思い出し、キラッ!と目を光らせる。
どんなにうっとおしいって言われたって、俺はいつだって全力で人と関わろうと決めている。
だから人生の中で関わる事ができた人の事は、沢山見て、聞いて、話して自分なりの答えを出してきた。
住んでいる世界が、持っているモノが、境遇が、年齢が、外見が────。
何もかも違えど、こうしてせっかく出会えたのだから、俺はヒカリ君ともっと関わってみたいと思っている。
理解したいとか、支えたいとかそんな大層なことは思っていない。
ただ俺は俺の生き方を貫きたいだけなんだ。俺が今まで生きてきた人生で選んだ生き方を。
そう思って掛けた言葉だったが、ヒカリ君はソロ……と、こちらを振り向こうと顔を僅かに動かし…………。
「ちょっと!!聞いてるの!!?無能力者のくせに選ばれし戦士の私を無視するんじゃないわよ!!
この加齢臭モンスター!!」
────ビシッ!!と目の前で指を差されて、意識は突然現実へと戻る。
あ……あれれぇぇ~????
また白昼夢を見た気持ちで周りをキョロキョロすると、それについてもギャーギャーとアイリーンが文句を言うのでとりあえず謝って落ち着かせた。
最近ちょくちょく飛んでしまう意識に危機感を覚えたが、近所のおばあちゃんが「現実も夢の一種よ~。」って言ってたし、まぁいっか!と笑って流した。
ガミガミと文句を言われながら、ハハハ~と笑っていると────。
「相変わらずの能天気な間抜け面。いいね、役立たずは暇でさ。」
背後から聞き覚えのある声がして、俺は慌てて振り返ると一週間ぶりに見る冷たい瞳が。
「あ、おかえり。」
そう言うと、ヒカリ君は眉を潜めながら俺を無視して木の根本に座る。
『ご飯ちょうだい』
さもそう言わんがばかりの『お座り』と『待て』を同時に行って待つヒカリ君は、悲しい程いつも通り!
俺はやれやれとため息をつきながら、先程出来立ての『豆腐の揚げ出し醤油漬け』を盛り付け、更にヒカリ君の好物をこれでもかと皿に追加でいれて差し出してやると、パクパクと文句も言わずに大人しく食べだす。
その食べっぷりにニッコリしながら、煮出したばかりのお茶も渡してやると────今回はその手を振り払う事なくお茶を受け取ってくれた。
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