婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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教室の中にいる生徒たちの誰もが、薄々感じていながら口に出せなかった言葉。それをジークフリート様ははっきりと口にした。途端、ジェラルド様は激昂する。

「なっ……貴様、ミナを侮辱する気か!」

「……可能性の話をしたまでですよ。ヴィクトリア嬢を犯人扱いするというのなら、同程度の確率でそういった可能性も存在するというだけのこと」

ジークフリート様は淡々と続ける。……ミナ嬢は、と思って見てみると。やはり鞄を隠すように抱えながら顔色を真っ白にしていた。

「自分への同情を集めるために、自ら被害者を演じる。古来より宮廷劇では使い古された手法ですが……まさか、神聖な学園内でそのような真似をする者はいないのだと。こちらとしても、信じたいと思っています」

「当たり前だ、ミナはそんな卑劣な女じゃない!」

「それでは、証明致しましょう」

ジークフリート様は、もう一方の手に持っていた小瓶の蓋を開けた。

「これは先ほども言ったように、痕跡を浮かび表す試薬だ。物体に付着した魔力に反応して変色し、専門の者が見れば誰の有した魔力なのかも分かるのだそうですよ」

彼は小瓶を掲げて見せた。

「もしヴィクトリア嬢が何らかの方法でこれを引き裂いたのなら……この紙片に試薬を一滴垂らすことで、即座に彼女特有の魔力が浮かぶことだろう」

「……っ!」

「もし魔力を使わず物理的な道具で破壊したのだとしても、犯人の手から微量な魔力は伝わっている。はたして誰の魔力が検出されるのか……」

ジークフリート様は、ミナ嬢の目の前に屈み込んだ。そして拾い上げた紙片に、小瓶の液体を垂らそうとするポーズを取る。

「これでヴィクトリア嬢の魔力が出れば、彼女が何か為したのでしょう。もし、別の魔力が出たと言うなら……」

「い、嫌ぁっ!」

ミナ嬢が絶叫し、ジークフリート様の手を払いのけようとした。しかし、彼は素早く手を引いて回避する。

「や、やめて!ジェラルド様っ、やめさせてください!」

ミナは必死に懇願する。その姿はとても被害者という動きではなく……罪の発覚を恐れる犯人の姿そのものに、私には見える。

これにはジェラルド殿下も困惑したようで、彼女へと問い掛けた。

「ミナ……?なぜそこまで嫌がって……」

「いいから早く!」

ミナの声が響く中、ジークフリート様が小瓶を傾けた。
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