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静まり返った執務室に、革靴が床を叩く音が響いた。
現れたのは、公爵令息ジークフリート。その落ち着いた佇まいは、取り乱して顔を真っ赤に染めているジェラルド王子とは対照的であり……立っているだけで室内の空気を支配するような圧倒的な存在感を放っていた。
「ジークフリート……!いくらお前とはいえ、今は執務中だ。部外者が断りもなく口を挟むな!」
ジェラルドが吠える。
己の醜態を見られたのだという苦々しい焦燥が、彼の声を一層荒げさせていた。しかし、ジークフリートは眉一つ動かさず一礼を送る。それから彼は、立場を考えるといささか冷ややかすぎるほどの視線を王子に向けた。
「殿下は部外者と仰ったが、それは多少の語弊がある。私は常々生徒会における予算運用が適切であるかをチェックする立場についております」
ジークフリートは悠々とした態度でヴィクトリアの隣に並び立つ。そのわずかな距離感さえも、ジェラルドからは彼に対する牽制のように見えたようだった。
「さて……今しがた、廊下まで突き抜けるような声で権限について語っておられる方が居たようだが……」
彼はヴィクトリアの手元にある伝票に、白手袋に包まれた指をスッと添えた。
「失礼、ヴィクトリア嬢。……ふむ、なるほど。これはまた……随分な解釈をされたようだが」
伝票を一瞥したジークフリートの口元に、嘲るような薄い笑みが浮かぶ。
「男爵令嬢のドレスを備品費として計上だなどと。殿下、一点お伺いしたい」
「……何だというんだ」
「ミナ・ペルル男爵令嬢は、いつから学園の共有財産になったのですか。あるいは、彼女自身が何らかの魔法的な力を持つ備品として、生徒会運営に不可欠な存在だとでも仰りたいので」
「き、貴様っ……彼女を侮辱すると僕が黙っていないぞ!」
「いいえ、私は侮辱ではなく会計上の要項を確認しているだけです」
そう言いながらジークフリートは、自前のペンを使って伝票の上に斜線を引いた。これではどの道清算の時には使えないことだろう。
「私費を投じるのが惜しいからといって、学生たちの納めた学費を特定の女性を飾るために流用する。……これを世間では横領と呼びますが、あなたの辞書には別の言葉で記されているのでしょうか」
現れたのは、公爵令息ジークフリート。その落ち着いた佇まいは、取り乱して顔を真っ赤に染めているジェラルド王子とは対照的であり……立っているだけで室内の空気を支配するような圧倒的な存在感を放っていた。
「ジークフリート……!いくらお前とはいえ、今は執務中だ。部外者が断りもなく口を挟むな!」
ジェラルドが吠える。
己の醜態を見られたのだという苦々しい焦燥が、彼の声を一層荒げさせていた。しかし、ジークフリートは眉一つ動かさず一礼を送る。それから彼は、立場を考えるといささか冷ややかすぎるほどの視線を王子に向けた。
「殿下は部外者と仰ったが、それは多少の語弊がある。私は常々生徒会における予算運用が適切であるかをチェックする立場についております」
ジークフリートは悠々とした態度でヴィクトリアの隣に並び立つ。そのわずかな距離感さえも、ジェラルドからは彼に対する牽制のように見えたようだった。
「さて……今しがた、廊下まで突き抜けるような声で権限について語っておられる方が居たようだが……」
彼はヴィクトリアの手元にある伝票に、白手袋に包まれた指をスッと添えた。
「失礼、ヴィクトリア嬢。……ふむ、なるほど。これはまた……随分な解釈をされたようだが」
伝票を一瞥したジークフリートの口元に、嘲るような薄い笑みが浮かぶ。
「男爵令嬢のドレスを備品費として計上だなどと。殿下、一点お伺いしたい」
「……何だというんだ」
「ミナ・ペルル男爵令嬢は、いつから学園の共有財産になったのですか。あるいは、彼女自身が何らかの魔法的な力を持つ備品として、生徒会運営に不可欠な存在だとでも仰りたいので」
「き、貴様っ……彼女を侮辱すると僕が黙っていないぞ!」
「いいえ、私は侮辱ではなく会計上の要項を確認しているだけです」
そう言いながらジークフリートは、自前のペンを使って伝票の上に斜線を引いた。これではどの道清算の時には使えないことだろう。
「私費を投じるのが惜しいからといって、学生たちの納めた学費を特定の女性を飾るために流用する。……これを世間では横領と呼びますが、あなたの辞書には別の言葉で記されているのでしょうか」
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