婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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ミナは後ろを振り返り、誰が言ったのかも分からないが令嬢たちに対して睨みを聞かせる。

「手が滑っただけって言ってるのに!全員耳ついてないわけ!?」

彼女は肩を怒らせ、掴み掛からんばかりの勢いで身を乗り出している。その姿には不満が燃え滾っていた。自分の思惑通りに事が運ばなかった苛立ちで声が荒くなっていた。
けれども彼女の周囲には同情も賛同も広がるわけがない。

「なんて野蛮な……!」

「具合を悪くさせてしまっているのよっ。それなのに、謝罪もなしにそのような物言いを……」

令嬢たちの間からは隠しようのない嫌悪の囁きが漏れる。

さっきまではミナの勢いに気圧されていた者たち。けれども目の前で繰り広げられた暴挙と、意識を失いかけているソフィアの惨状を見てざわめきは広がっていく。

いつの間にかだったのか、誰かが呼んだのか……異変を察した騎士や教師たちも集まってきている。
その全てにミナの味方は存在しておらず、ただ孤立をさせていった。

「誰か、お水と気付け薬を。それから医務官を呼んでちょうだい」

「は、はい……っ!」

私がそう告げると、何人が慌ただしく動き出した。その中心でぐったりとしたソフィアを支えながらにミナを見上げる。

「大体そんな大げさにして……っ」

「……もう言い訳は結構です。あなたのその手が、その心が何を目指していたか……ここにいる方たちが大勢目撃しましたから」

遮るように放たれた私の言葉にミナは振り返る。その顔は屈辱でだろう、歪んでいた。

まだ何か言い募ろうと周囲を見渡すが、そこにあるのは冷ややかな拒絶の眼差しばかり。一人として彼女の手を取ろうとする者も、その言葉に頷く者もいない。

自分がこの場にふさわしくない異物であることを、突きつけられたようだと思ったのかもしれない。

「……っ、もういいわよ!こんな気取ったお茶会、こっちから願い下げなんだから!」

ミナは剥き出しの敵意を隠そうともせず捨て台詞を吐いた。
乱れたドレスの裾を乱暴に翻し、逃げるようにその場を走り去っていく。

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