自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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レストランのさらに奥、通常は案内がなければたどり着けないであろう遮断した一画にその部屋はあった。
一般の客が踏み入ることを許されない廊下の突き当たり。

木目の扉の脇には、折り目正しい従者が控えている。私がその扉の前に立つと、彼は音もなく一礼して恭しく扉を開き放った。

「失礼いたします。……お待たせいたしました、ギルベルト様」

室内は決して目をひくような黄金や宝石に彩られているわけではない。
けれど配置された一つひとつの調度品には格と品が備えられている。それらすべてが、ここが真に選ばれた者のみを迎え入れる場所であることを設えられているだけでそう告げていた。

ここはレストランだ。
部屋の中央には他の部屋と同じように食卓が整えられている。その場所で、一人の男性がゆったりと椅子に身を預けていた。

「構わないよ」

年の頃は私よりも少し上、王族の血を引くもののみに許されたシルバーアッシュの髪が落ち着いた色の照明を映していた。
婚約者であるライアンも、まるで役者のように整った顔立ちをしている。
メアリィが彼に執心していることの一つに、容姿があることは間違いがないのだろう。彼女には贔屓の劇団員が幾人かいるというが、どれも端正な顔立ちをしているらしいから。

けれどこのお人は美しい顔立ちに加え、見るものを心酔させてしまうようなカリスマ性を帯びた目をしていた。
その瞳が私を見る。

「……随分と派手に立ち回ったようだな」

声には僅かながら、面白がるような響きがあった。
この店の運営に深く携わり、表舞台には出ずとも王国の経済と社交界を裏から支配する権威のお人だ。

私は扉が閉まる音を背に聞きながら、彼とテーブルをはさんで対面となる椅子へと向かう。
店員が椅子を引くのを待ってから着席をした。

派手と言われるほどのことをした覚えはないが、ご覧になって気持ちのいいものであるわけがないため、苦笑するしかない。

「見ていらしたのですか?お見苦しいところを」





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