自称病弱いとこを優先させ続けた婚約者の末路

泉花ゆき

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「いや、報告に聞いただけだ。実に君らしい潔さだったと」

「……特段に変わったことを告げた覚えはありませんが」

ただ私はとつとつと訴えただけだ。
明日という日に他の誰かを優先するようであればこちらにも考えがあると告げただけ。 

ましてその原因である病気というのが虚偽であるならば当然のこと。
その果てに互いの道が交わらなくなったとしても、あなたの選んだことであると。

(それにしても、私らしいとはどういった意味合いなのかしら)

「謙遜するな、放蕩息子と身の程知らずの小娘を相手にするには少々贅沢すぎる舞台だったようにも思える程だぞ」

「まあ……」

結局のところ出し物として楽しんでいらっしゃる様子の彼に、私の口元からは苦笑が消えない。
すべては興味本位なのかもしれないが、それでも私の行いで不快になられるよりはずっとよかった。 

ひょんなことから出会ったこのお人は、私に協力して下さるのだとおっしゃった。
見返りというのにも、私の身にもメリットのあるような話しか出されていない。

(初めは、どういうおつもりなのかと思っていたけれど)

それでも、どうするべきか考えあぐねていた私には彼の申し出は救いの手であった。

ギルベルト様は微かに口角を上げると、向かいの椅子を指し示した。椅子を引かれて席へとつく。
テーブルの上には、私があの部屋にいれば食べるはずだった食事の続きが湯気を立てて用意された。

手元のグラスにはソーダ水が注がれる。

細かな泡が次々と底から沸き上がり、グラスの縁で小さく弾けた。天然の湧水に炭酸を含ませたその水は、この国でも限られた高位貴族の食卓にしか並ばない贅沢品だ。

「明日がある、もうアルコールも抜いていい頃合いだろう。飲みたければ止めはしないが」

「……いいえ、こちらの方が助かります。ありがとう」

そういう彼のグラスには、血の色をしたワインが注がれていった。芳醇な香りが広い室内を満たしていく。

ギルベルト様は自分のグラスを手に取ると、私に向けてわずかに掲げた。

「明日の成功と、愚か者たちへの適切な報いに」

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