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 明け方までひたすらに抱かれ続けたファテナは、翌日は昼を過ぎても起き上がることができなかった。
 ようやく寝台の上で身体を起こすことができるようになったのは、陽が傾き始める頃だった。
 ぼんやりとしていた頭がはっきりとしてくるにつれて、昨夜の執拗ともいえるザフィルの行動は、恐らくファテナを抱き潰すためのものだったことに思い至る。家族の処刑について余計なことを考えさせないために、ファテナを動けなくさせたのだろう。
 さりげなくそばに控えているアディヤからも、ファテナが不安定な言動を起こさないか見守っているような気配を感じる。
 処刑は、明るい昼間に行われることが多いと聞く。誰が誰を処刑するのかを、よく見えるようにしなければならないからだ。
 恐らく、ファテナが疲れ切って眠っている間に全てが終わってしまった。
 彼らが生まれ変わったなら、今度は真っ当な生き方ができるようにと祈って、ファテナは静かに目を閉じた。

 ◇

 夜になって訪ねてきたザフィルは、いつもと変わらないファテナの顔を見て、少しほっとしたような表情を浮かべた。
「……処刑は、実行されたんですね」
「あぁ」
「きっと最期まで……あの人たちは悔い改めなかったの、でしょうね」
「残念ながら、そうだな。最期まで自分は悪くないと言っていた」
 疲れたように目を閉じるザフィルを見て、最期のその瞬間まで、彼らは聞くに耐えない言葉を発していたのだろうと推測する。
「遺品が欲しいなら、渡す。装飾品のほとんどは、強奪したものだろうから、純粋な遺品となると着ていた服くらいになるが」
「……私には、不要です。お気遣い、ありがとうございます」
 首を振って礼を言うと、ザフィルも分かったと小さくうなずいて、そっとファテナの頬に触れた。口づけされるのかと目を閉じたものの、唇が重ねられることはなく、何度も親指で頬をなぞられる。
「今日をもって、ウトリド族は消滅した。あんたから何もかも奪った俺が言うのも何だが、今ここで泣くくらい……誰も責めない」
 まるで慰めるかのようなその仕草に涙がこみ上げるが、ファテナはそれを堪えて彼の手に自分の手を重ねた。
「ウトリド族の名前が消えても、そこに生きた人々が元気でこの先も暮らせるなら、それでいいと思います。私は、あなたが彼らの生きる道を示してくれたことに感謝してる」
 だから、とつぶやいてファテナはザフィルの手を引き寄せた。背伸びをして顔を近づけ、唇を触れ合わせると、ザフィルが驚いたように小さく息をのんだのが分かった。
 いつも彼がそうするように舌を差し出してみせると、すぐに舌が応えるように絡められた。ぐっと抱き寄せられて密着した二人の身体の間で、彼のものが熱を持ち始めたのが分かる。
 そのまま寝台に押し倒され、濃紺の髪が敷布の上に大きく広がった。覆いかぶさってきたザフィルが再度唇を重ねてきて、深く舌を差し入れる。それに応えながら、ファテナは自ら寝衣の紐を解いた。
「今夜は、泣くくらい気持ちよくさせてやる」
 微かに唇を離した状態で、ザフィルが囁く。これまでも過ぎた快楽に涙をこぼすことは何度かあったが、きっと素直に涙を流せないファテナのためにそう言っているのだろう。
 ファテナは黙ってうなずくと、ザフィルの首裏にそっと手を回した。
 宣言通り、その晩ザフィルは執拗にファテナを責め立て、たくさんの涙をファテナに流させた。
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