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嫉妬と願い 1 ★

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「ふ……っぁ、ん」
 息もできないほど深く舌を絡められ、口内を蹂躙され、苦しさに思わず涙が浮かぶ。ファテナの肩を寝台に押さえつけながら、もう片手でザフィルは乳房を強く揉みしだいた。痛みすら感じるほどの荒々しさだが、触れる大きな手のぬくもりはずっと求めていたもの。ファテナは抵抗することなくその乱暴な手を受け入れた。
 ようやく顔を離したザフィルは、荒い息を吐くと自らも服を脱ぎ捨て、ファテナの両脚をぐいと割り開いた。
「――っ!」
 愛撫されることなく一気に剛直を突き入れられて、その衝撃に背中が反る。口づけの合図で身体はすでにザフィルを待ち望んでいたから、慣らさずともすんなりと最奥まで受け入れることができる。ザフィルが動くたびに、秘所からは淫らな水音が響いた。
「何もしなくても、こんなに濡らして。そんなに欲しかったか」
「ぅあ、……んっ、やぁっ」
「あいつにも触られてこんな風に喜ぶのか。あいつにもこうやって抱かれるつもりだったのか」
「ちが……っあぁ、違う……んんっ」
 懸命に首を振るものの、強く突き上げられて否定の言葉はばらばらになって喘ぎ声に混じって消える。久しぶりに与えられた快楽に目の前が白くなり、ファテナはあっという間に絶頂に押し上げられた。
 ぐったりと弛緩して寝台の上に崩れ落ちた身体を、ザフィルは更に追い詰めるように何度も穿つ。それに合わせて小刻みに喘ぐファテナの瞳からは強すぎる快楽を受け止めきれずに涙がこぼれ落ちた。
 それを見て、ザフィルは更に苛立ったようにファテナの最奥を抉る。力なく敷布を蹴った足を抱えられ、密着が深まったことで秘部からほとばしった水がザフィルの腹を濡らした。
「ほら、言えよ、あんたは俺のものだって」
「っあ、あぁぁっ」
「絶対に渡さない。精霊になんて、やってたまるものか」
 吐き捨てるように言って、ザフィルはファテナの首筋に顔を埋めた。噛みつくように首筋を強く吸われ、痛みと快楽が混じりあってファテナは何度目かの絶頂に身体を震わせた。強く締めつけたせいか、ザフィルが吐精を堪えるように微かに顔を歪める。
「身体は正直だな、しっかりと咥え込んで、こんなにもひくひくと震えるくらい喜んで」
「や……ぁ、止まっ……」
「あんたが俺のものだと分かるように、こうやって全身にしるしをつけてやる。そうすればあんただって……」
 唸るようにつぶやきながら、ザフィルはファテナの肌のあちこちに赤い痕を残していく。ちくりとした痛みを与えられるたび、自分はザフィルのものだと教え込まれているようだ。その痛みすら快楽に置き換えられていくことを感じながら、ファテナは思わず手を宙にさまよわせた。
「お願……手、握って」
 見つけた手に指を絡めると、ザフィルが小さく息をのんだ。ようやく手に入れたぬくもりを逃さないように、ファテナはしっかりと胸元で握りしめる。
「一緒には行かないって、言ったの。あなたのそばにいると、私自身が決めたの」
「……っ」
「いつの間にか、私はあなたなしではいられなくなってしまった。あの人に……精霊に触れられた時、泣きたくなるくらい嫌だったの。怖くて動けなくて、でもあなたが来てくれて……すごく安心した」
 手を握ったまま、ファテナは笑みを浮かべてザフィルを見上げる。
「あなたには、触れられても全然嫌じゃないの。大嫌いだと言ったのに……おかしいと思うでしょう。でも、こうやって手を握ってもらうと、ほっとするの」
「ファテナ」
 囁くように名前を呼んだザフィルが、握っていない方の手でファテナの頬に触れる。指の腹で滲んだ涙を優しく拭うと、彼は辛そうに顔を歪めた。
「すまない、俺は……あんたを失うかと思って」
 首筋から胸元にかけて散った赤い痕を撫でながら、ザフィルは震える息を吐いた。痛々しいほどに鬱血した執着の証を見て、申し訳なさそうに眉が下がる。
「約束したでしょう、ここであなたを待つって。だから、ちゃんと待ってた。……一人で眠るのは、案外さみしかったのよ」
 ぽつりとつぶやくと、ザフィルが小さくうめいて顔を背けた。頬が微かに赤いのは、照れているからだろうか。
「不意打ちでそれは、まずいって」
「え? ……ぁ、あんっ」
 再びザフィルが腰を動かし始めたので、ファテナは快楽に思わず声をあげる。さっきまではがつがつと打ちつけるようだったのに、今は確かめるようにゆっくりだ。じっくりと快楽を引き出すようなその動きに、ファテナは息を詰めた。
「もう……離さないから」
 ぎゅうっと強く抱きしめながら、ザフィルが吐息まじりに囁く。そのぬくもりに安心感を覚えながら、ファテナはうなずいて彼の背に手を回した。
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