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目を覚ますと、ステラの身体はエリオスの腕の中だった。密着する肌があたたかくて、気持ちよくて、思わず頬を擦り寄せると、くすくすと笑い声が降ってきた。
「おはよう、ステラ。そんな可愛いことされたら、朝からまた抱きたくなっちゃうんだけど」
「エリオス、おはよう」
ステラは、エリオスを見上げて微笑む。
魔力が一番宿るとされる瞳の奥に、淡い金色が揺らめいているのを見て、ステラは今年も自身の魔力の全てをエリオスに捧げられたことを確認する。
ずっと、朝起きて彼の瞳の奥を確かめるのが嫌で仕方がなかった。だってそれは、別れの合図でもあったから。
だけど、今日は違う。このあとも、ずっと一緒に過ごせるのだと思うと、嬉しくてたまらない。
思わず緩んだ口元を隠すように、ステラはエリオスの胸に頬を寄せた。
「やっぱりステラは笑ってる方がいいね」
ゆったりと髪を撫でながら、しみじみとした口調でエリオスがつぶやくけれど、その意味が分からなくてステラは首をかしげた。
「いつも、朝目覚めると、泣きそうな顔をしてたから。また来年も来るから、としか伝えられなくて、俺も苦しかった」
「そんな顔、してた……?」
確かに別れが辛くて苦しくて、泣き出しそうになるのを必死に堪えていたけれど、それを悟られまいと必死に笑顔を浮かべていたはずなのに。
エリオスは小さく笑うと、ステラの頬に触れて目を合わせる。
「うん。痛々しいほどに必死に笑顔を浮かべているのが、見ていて辛かった」
「バレてないと思ってたのに」
少しだけ唇を尖らせてつぶやくと、エリオスの大きな手がステラの頭を撫でた。
「大好きな子の表情を、見間違えるはずがないよ。だけど、これからはもう、二度とステラにそんな顔させないから」
ずっと笑っていて、と囁きながら口づけられて、ステラは幸せな気持ちでそれに応えた。
エリオスの身体を抱きしめようと手を伸ばした時、不意に左手に違和感を覚えて、ステラは視線を向ける。
「これ……」
そこに輝いていたのは、銀色の指輪。小さな銀色の石がいくつも並んでいて、よく見るとそれは星の形をしていた。まるで流れ星のようなその美しさに、ステラは目を見張る。
「うん、気に入ってもらえるといいんだけど」
少し照れくさそうな表情で、エリオスが鼻の頭をかく。
「綺麗……。こんな素敵な指輪、もらってもいいの?」
「もちろん。この指輪の意味……、分かってるよね?ステラ」
手をとられて、確かめるように指輪をなぞりながらエリオスがステラを見つめる。特別な意味を持つ指を飾る指輪を贈られたことは、この先の未来を共に生きていく約束を意味する。
「ステラにぴったりだなと思って、随分前から買っていたんだ」
並んだ銀の石を愛おしそうになぞりながら、エリオスが笑う。
「誰にもステラをとられなくないからさ、俺の色を身につけていて欲しいと思うし、石に魔力もたっぷり込めちゃった」
重たくてごめん、と笑うエリオスに、ステラも笑って首を振る。指輪に並んだ銀の石は、確かに彼の瞳を思い出させるし、そこから感じられるエリオスの魔力は心地よくて、嬉しくてたまらない。
「ありがとう。大切にするわ」
そう言って見上げると、嬉しそうに笑ったエリオスの優しい口づけが降ってきた。
「今夜の星祭りは、どうしても参加しないとならないから、ステラも一緒に来てくれる?」
「私も?」
「うん。保護結界の更新は、やっぱり立ち会わないといけないから。でも、それまでは結構時間があるし、一緒に星祭りの屋台を巡ろうか」
「一緒に……いいの?」
「もちろん。ステラの行きたいところがあれば、どこへでも連れて行ってあげるよ」
エリオスの言葉に、ステラはこみ上げる涙を堪えて口元を押さえた。
いつも彼と過ごすのはこの部屋の中だけで、その時間のほとんども、彼に抱かれていた。ステラの役割を考えれば、そのことに不満はなかったけれど、部屋の外で、彼と共に過ごせることに、心が躍る。
だって、本当の恋人同士のお出かけのようだから。
「初めてのデートだから、ちょっと照れちゃうね」
「うん。デート、だよね」
エリオスの言葉に、思わず確かめるようにつぶやくと、くしゃりと頭を撫でられた。
「そうだよ。これから先も、色んなところに一緒に行こう」
優しく見つめる瞳が嬉しくて、ステラは思わずエリオスに抱きついた。
「おはよう、ステラ。そんな可愛いことされたら、朝からまた抱きたくなっちゃうんだけど」
「エリオス、おはよう」
ステラは、エリオスを見上げて微笑む。
魔力が一番宿るとされる瞳の奥に、淡い金色が揺らめいているのを見て、ステラは今年も自身の魔力の全てをエリオスに捧げられたことを確認する。
ずっと、朝起きて彼の瞳の奥を確かめるのが嫌で仕方がなかった。だってそれは、別れの合図でもあったから。
だけど、今日は違う。このあとも、ずっと一緒に過ごせるのだと思うと、嬉しくてたまらない。
思わず緩んだ口元を隠すように、ステラはエリオスの胸に頬を寄せた。
「やっぱりステラは笑ってる方がいいね」
ゆったりと髪を撫でながら、しみじみとした口調でエリオスがつぶやくけれど、その意味が分からなくてステラは首をかしげた。
「いつも、朝目覚めると、泣きそうな顔をしてたから。また来年も来るから、としか伝えられなくて、俺も苦しかった」
「そんな顔、してた……?」
確かに別れが辛くて苦しくて、泣き出しそうになるのを必死に堪えていたけれど、それを悟られまいと必死に笑顔を浮かべていたはずなのに。
エリオスは小さく笑うと、ステラの頬に触れて目を合わせる。
「うん。痛々しいほどに必死に笑顔を浮かべているのが、見ていて辛かった」
「バレてないと思ってたのに」
少しだけ唇を尖らせてつぶやくと、エリオスの大きな手がステラの頭を撫でた。
「大好きな子の表情を、見間違えるはずがないよ。だけど、これからはもう、二度とステラにそんな顔させないから」
ずっと笑っていて、と囁きながら口づけられて、ステラは幸せな気持ちでそれに応えた。
エリオスの身体を抱きしめようと手を伸ばした時、不意に左手に違和感を覚えて、ステラは視線を向ける。
「これ……」
そこに輝いていたのは、銀色の指輪。小さな銀色の石がいくつも並んでいて、よく見るとそれは星の形をしていた。まるで流れ星のようなその美しさに、ステラは目を見張る。
「うん、気に入ってもらえるといいんだけど」
少し照れくさそうな表情で、エリオスが鼻の頭をかく。
「綺麗……。こんな素敵な指輪、もらってもいいの?」
「もちろん。この指輪の意味……、分かってるよね?ステラ」
手をとられて、確かめるように指輪をなぞりながらエリオスがステラを見つめる。特別な意味を持つ指を飾る指輪を贈られたことは、この先の未来を共に生きていく約束を意味する。
「ステラにぴったりだなと思って、随分前から買っていたんだ」
並んだ銀の石を愛おしそうになぞりながら、エリオスが笑う。
「誰にもステラをとられなくないからさ、俺の色を身につけていて欲しいと思うし、石に魔力もたっぷり込めちゃった」
重たくてごめん、と笑うエリオスに、ステラも笑って首を振る。指輪に並んだ銀の石は、確かに彼の瞳を思い出させるし、そこから感じられるエリオスの魔力は心地よくて、嬉しくてたまらない。
「ありがとう。大切にするわ」
そう言って見上げると、嬉しそうに笑ったエリオスの優しい口づけが降ってきた。
「今夜の星祭りは、どうしても参加しないとならないから、ステラも一緒に来てくれる?」
「私も?」
「うん。保護結界の更新は、やっぱり立ち会わないといけないから。でも、それまでは結構時間があるし、一緒に星祭りの屋台を巡ろうか」
「一緒に……いいの?」
「もちろん。ステラの行きたいところがあれば、どこへでも連れて行ってあげるよ」
エリオスの言葉に、ステラはこみ上げる涙を堪えて口元を押さえた。
いつも彼と過ごすのはこの部屋の中だけで、その時間のほとんども、彼に抱かれていた。ステラの役割を考えれば、そのことに不満はなかったけれど、部屋の外で、彼と共に過ごせることに、心が躍る。
だって、本当の恋人同士のお出かけのようだから。
「初めてのデートだから、ちょっと照れちゃうね」
「うん。デート、だよね」
エリオスの言葉に、思わず確かめるようにつぶやくと、くしゃりと頭を撫でられた。
「そうだよ。これから先も、色んなところに一緒に行こう」
優しく見つめる瞳が嬉しくて、ステラは思わずエリオスに抱きついた。
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