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僕だけの聖女
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ぱたんと閉まった扉を見つめ、足音が遠ざかっていくのを確認して、ジスランは肩を震わせた。
堪えていた笑い声は、だんだんと抑えきれなくなる。
「……ふ、あははっ、最高の気分だ。神の子なんて称号、面倒なものでしかなかったけど、これでブランシュは僕のものだ」
眠るブランシュを起こしてはならないと、笑い声が漏れないように口を押さえつつ、ジスランはそれでも笑い続けた。
ジスランは、生まれた時から赤い瞳を持っていた。それは神の子である証で、ジスランは両親から引き離されて神殿で育った。
誰もが、ジスランを王子として見ることはない。皆が求めているのは、神に愛された子。
確かにジスランは、強大な癒しの力を持っていた。
求められるまま、人々に癒しの力を与えるだけの単調な日々。
貴重な力を持つ神の子を失うわけにはいかないと、ジスランはほとんど神殿から出ることなく育った。同じ顔をした双子の兄は、視察と称してあちこち自由に出歩いているのに。
そんな退屈な日々の中、神殿に併設された孤児院へ慰問に訪れる少女と話せる日だけが、ジスランにとって唯一の楽しみだった。
母親の慰問活動に連れられてきた彼女は、ブランシュという名前だった。ジスランよりも年下で、まだあどけない少女だったが、輝くような白い髪も無垢で無邪気な笑顔も、今まで見たどんな人物よりも美しかった。
ジスランが神の子ならば、彼女は聖女に違いない。だってあの無垢で気高い美しさを、神が放っておくはずがない。
そう思っていたのに、はにかむように笑った彼女から双子の兄のアルマンと婚約したことを告げられたのだ。
アルマンと結婚したら、ジスランも家族になるねと笑ったブランシュに祝福の言葉をかけながら、ジスランは世界が足元から崩れていくような絶望を感じていた。
神の子は、聖女としか結ばれない。ジスランが欲しいのは、ブランシュただ一人なのに。
兄のものになる彼女と交流を続けながらも、ジスランはブランシュに対する想いを捨てきれずにいた。
双子なのに、同じ顔をしているのに、瞳の色が違うだけでジスランはブランシュを手に入れられない。
成長するにつれ、さらに美しくなっていくブランシュ。その彼女を手に入れるのが、自分ではないなんて。
ブランシュの唇がアルマンの名前を紡ぐたび、ジスランは胸を掻きむしりたくなるほどに苦しくなった。
アルマンではなくて僕を見てと、何度も叫びたくなった。
彼女がアルマンのことを慕っているのだと頬を染めて教えてくれたその日、ジスランはどんな手を使ってでもブランシュを自分のものにすることを決めた。
だって、アルマンはたくさんのものを持っている。優しい両親も、自由な生活も、贅沢な暮らしも。
だから、少しくらい分けてくれてもいいはずだ。ジスランには、ブランシュしかいないのだから。
ジスランが過去を回想していると、眠っていたブランシュが小さく呻いてもぞもぞと寝返りを打った。
起きたかと顔をのぞき込んだが、彼女は再び気持ち良さそうに寝息をたて始めた。
その可愛い寝顔をしばらく見つめたあと、ジスランは立ち上がると壁にかけてある上着に手を伸ばした。
ポケットの中に入れてあった拳大の白い石を取り出して、まるでボールのように弄びながら寝台へと戻る。
シーツの上にころりと転がった石は、眠るブランシュの手に当たって止まった。
真っ白なまま色を変えないそれは、聖女が触れると赤く輝くとされる聖石だ。神殿に祀られているのは偽物で、今ここにあるのが本物。
何としてでもブランシュを手に入れるために、ジスランは触れると赤くなる石を密かに作らせたのだ。
ブランシュが聖女になれば、確実にジスランのものになるから。
神殿長が寄付金を着服していることに気づけたのは、思わぬ幸運だった。きっと神は、ジスランを応援してくれている。
横領を黙っている代わりに偽物の聖石を作らせて、ブランシュが聖女であるというお告げを出させた。
何も知らない彼女は神殿にやってきて、そして聖女になった。
アルマンと結ばれないことに最初は泣いていたようだが、彼女はすぐに聖女としてこの国を支えていく覚悟を決めた。
その気高く尊い決意は、やはり聖女に相応しいものだとジスランは思う。
本物の聖女は処分したので、この国の聖女はブランシュだけ。彼女を抱くだけで、ジスランは身体中に力がみなぎるような気がするから、やはりブランシュが聖女で間違いない。
神の子ジスランと聖女ブランシュは、これからも二人でこの国を見守っていくのだ。
「……きみを手に入れたんだから、もうこれは必要ないよね」
そうつぶやいて、ジスランは白く輝く聖石を強く握りしめた。
パキリ、と音を立てて、聖石にひびが入る。破片が皮膚を傷つけるが、ジスランには癒しの力がある。血を流すこともなく、傷はできるそばからあっという間に塞がっていく。
力を込めて聖石を砕き続け、細かな破片となった聖石の残骸を見て、ジスランは声をあげて笑った。
朝起きたら、ブランシュはどんな顔をするだろうか。
媚薬の効果は切れているだろうから、恥ずかしがる彼女を今度はじっくりと蕩かしてやりたい。アルマンに自分のものだと見せつけるために、ほとんど彼女の身体に触れることなく挿入したので、ジスランはブランシュを味わいつくしていないのだ。
豊満な胸も、甘い蜜を垂らす秘部も、もっと触れて舐めて味わいたい。
この小さな口に自らの昂りを突っ込んで、奉仕させるのもいいかもしれない。
まだアルマンに気持ちを残している可能性もあるし、快楽に溺れさせてジスランのことしか考えられないようにしなければ。
神の子は、聖女を抱くのも大事な仕事。
この部屋に鎖で繋いで、ジスランだけが会えるようにするのもいいかもしれない。
もしも彼女が他の男に目を向けるようなことがあれば、ジスランは嫉妬で狂ってしまう。
もっともっと快楽を刻み込んで、ジスランなしでは生きていけない身体にしなければならない。
「もう二度と離さない。愛してる、僕だけの聖女」
そうつぶやいて、ジスランは眠るブランシュにそっとキスを落とした。
堪えていた笑い声は、だんだんと抑えきれなくなる。
「……ふ、あははっ、最高の気分だ。神の子なんて称号、面倒なものでしかなかったけど、これでブランシュは僕のものだ」
眠るブランシュを起こしてはならないと、笑い声が漏れないように口を押さえつつ、ジスランはそれでも笑い続けた。
ジスランは、生まれた時から赤い瞳を持っていた。それは神の子である証で、ジスランは両親から引き離されて神殿で育った。
誰もが、ジスランを王子として見ることはない。皆が求めているのは、神に愛された子。
確かにジスランは、強大な癒しの力を持っていた。
求められるまま、人々に癒しの力を与えるだけの単調な日々。
貴重な力を持つ神の子を失うわけにはいかないと、ジスランはほとんど神殿から出ることなく育った。同じ顔をした双子の兄は、視察と称してあちこち自由に出歩いているのに。
そんな退屈な日々の中、神殿に併設された孤児院へ慰問に訪れる少女と話せる日だけが、ジスランにとって唯一の楽しみだった。
母親の慰問活動に連れられてきた彼女は、ブランシュという名前だった。ジスランよりも年下で、まだあどけない少女だったが、輝くような白い髪も無垢で無邪気な笑顔も、今まで見たどんな人物よりも美しかった。
ジスランが神の子ならば、彼女は聖女に違いない。だってあの無垢で気高い美しさを、神が放っておくはずがない。
そう思っていたのに、はにかむように笑った彼女から双子の兄のアルマンと婚約したことを告げられたのだ。
アルマンと結婚したら、ジスランも家族になるねと笑ったブランシュに祝福の言葉をかけながら、ジスランは世界が足元から崩れていくような絶望を感じていた。
神の子は、聖女としか結ばれない。ジスランが欲しいのは、ブランシュただ一人なのに。
兄のものになる彼女と交流を続けながらも、ジスランはブランシュに対する想いを捨てきれずにいた。
双子なのに、同じ顔をしているのに、瞳の色が違うだけでジスランはブランシュを手に入れられない。
成長するにつれ、さらに美しくなっていくブランシュ。その彼女を手に入れるのが、自分ではないなんて。
ブランシュの唇がアルマンの名前を紡ぐたび、ジスランは胸を掻きむしりたくなるほどに苦しくなった。
アルマンではなくて僕を見てと、何度も叫びたくなった。
彼女がアルマンのことを慕っているのだと頬を染めて教えてくれたその日、ジスランはどんな手を使ってでもブランシュを自分のものにすることを決めた。
だって、アルマンはたくさんのものを持っている。優しい両親も、自由な生活も、贅沢な暮らしも。
だから、少しくらい分けてくれてもいいはずだ。ジスランには、ブランシュしかいないのだから。
ジスランが過去を回想していると、眠っていたブランシュが小さく呻いてもぞもぞと寝返りを打った。
起きたかと顔をのぞき込んだが、彼女は再び気持ち良さそうに寝息をたて始めた。
その可愛い寝顔をしばらく見つめたあと、ジスランは立ち上がると壁にかけてある上着に手を伸ばした。
ポケットの中に入れてあった拳大の白い石を取り出して、まるでボールのように弄びながら寝台へと戻る。
シーツの上にころりと転がった石は、眠るブランシュの手に当たって止まった。
真っ白なまま色を変えないそれは、聖女が触れると赤く輝くとされる聖石だ。神殿に祀られているのは偽物で、今ここにあるのが本物。
何としてでもブランシュを手に入れるために、ジスランは触れると赤くなる石を密かに作らせたのだ。
ブランシュが聖女になれば、確実にジスランのものになるから。
神殿長が寄付金を着服していることに気づけたのは、思わぬ幸運だった。きっと神は、ジスランを応援してくれている。
横領を黙っている代わりに偽物の聖石を作らせて、ブランシュが聖女であるというお告げを出させた。
何も知らない彼女は神殿にやってきて、そして聖女になった。
アルマンと結ばれないことに最初は泣いていたようだが、彼女はすぐに聖女としてこの国を支えていく覚悟を決めた。
その気高く尊い決意は、やはり聖女に相応しいものだとジスランは思う。
本物の聖女は処分したので、この国の聖女はブランシュだけ。彼女を抱くだけで、ジスランは身体中に力がみなぎるような気がするから、やはりブランシュが聖女で間違いない。
神の子ジスランと聖女ブランシュは、これからも二人でこの国を見守っていくのだ。
「……きみを手に入れたんだから、もうこれは必要ないよね」
そうつぶやいて、ジスランは白く輝く聖石を強く握りしめた。
パキリ、と音を立てて、聖石にひびが入る。破片が皮膚を傷つけるが、ジスランには癒しの力がある。血を流すこともなく、傷はできるそばからあっという間に塞がっていく。
力を込めて聖石を砕き続け、細かな破片となった聖石の残骸を見て、ジスランは声をあげて笑った。
朝起きたら、ブランシュはどんな顔をするだろうか。
媚薬の効果は切れているだろうから、恥ずかしがる彼女を今度はじっくりと蕩かしてやりたい。アルマンに自分のものだと見せつけるために、ほとんど彼女の身体に触れることなく挿入したので、ジスランはブランシュを味わいつくしていないのだ。
豊満な胸も、甘い蜜を垂らす秘部も、もっと触れて舐めて味わいたい。
この小さな口に自らの昂りを突っ込んで、奉仕させるのもいいかもしれない。
まだアルマンに気持ちを残している可能性もあるし、快楽に溺れさせてジスランのことしか考えられないようにしなければ。
神の子は、聖女を抱くのも大事な仕事。
この部屋に鎖で繋いで、ジスランだけが会えるようにするのもいいかもしれない。
もしも彼女が他の男に目を向けるようなことがあれば、ジスランは嫉妬で狂ってしまう。
もっともっと快楽を刻み込んで、ジスランなしでは生きていけない身体にしなければならない。
「もう二度と離さない。愛してる、僕だけの聖女」
そうつぶやいて、ジスランは眠るブランシュにそっとキスを落とした。
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