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ベッドの上、奈緒は身体をよじって与えられる快楽から逃れようとする。両手首を縛られてベッドのパイプに固定されているし、広げた脚も押さえつけられているから、ほとんど逃れられないのだけど。
ウィーンという無機質な機械音と、奈緒の喘ぐ声が、静かな部屋を満たしていく。
「あ、やぁっ……晴翔、くん……、もう無理っ」
首を振り、涙目で訴えてみても、晴翔は笑って奈緒の秘所に玩具をより強く押し当てる。何も着ていない奈緒とは反対に、晴翔は服を着たままだ。
「無理じゃねぇだろ。まだイけるって、ほら」
「も、嫌……っ、あぁっ」
悲鳴と共に奈緒の身体が大きく震え、秘所から勢いよく水分が噴き出して晴翔のジーンズを濡らした。それを確認して、晴翔は呆れたように笑う。
「あーあ、また潮吹いた。奈緒、ほんと嫌だってのは口だけだな。服濡れたし」
「あ……、ごめんなさ……」
必死で息を整えていた奈緒は、慌てて晴翔を見上げる。彼の身につけている服はいつも高級なものばかりで、それを汚してしまったことに焦りを隠せない。
「あの、クリーニング代、払うから……」
「別に、そういうのいいから」
奈緒の申し出をあっさりと跳ね除けると、晴翔は服を脱いだ。そして手早くゴムをつけると奈緒の脚を広げる。
「や、待っ……んんっ」
イったばかりの敏感な身体は、待ち望んだ晴翔のものを歓迎するように締めつける。絶え間なく快楽を与えられて、奈緒は何も考えられなくなっていく。
「奈緒、締めすぎ。力抜けって」
「そんな、分かんない……っ」
「あーほんと、奈緒の中、最高」
少し掠れた声で笑いながら、晴翔は奈緒の手を縛っていた紐を解く。
「ほら、ちゃんと抱きつけよ」
促されて、奈緒はゆっくりと腕を晴翔の首に回す。縛られていたせいで少し腕が痺れているけれど、密着が深まって温もりを感じられるのが嬉しい。晴翔にこうして抱きつくことができるのは、身体を重ねるこの時だけだから。
奈緒がしっかりと抱きついたのを確認して、晴翔は腰の動きを速める。勢いよく奥を突かれて、奈緒の口からは悲鳴のような喘ぎ声が漏れた。
「だめ、もう……っ」
「……っと、まだイくなよ」
「あ……」
あと少しで絶頂を迎えそうだったのに、晴翔は動きを止めてしまう。もどかしさで、奈緒は恨めしそうに晴翔を見上げた。
「生意気な顔して。こういう時は、何て言うんだった?ちゃんと教えただろ」
「……っ」
晴翔は楽しそうな表情で奈緒の顔をのぞきこむけれど、奈緒は思わず視線を逸らしてしまう。教えられた言葉は、奈緒にとっては直接的すぎて、口にするのはいつも躊躇ってしまう。
それでも、黙ってやり過ごすことが許されるはずもなく。奈緒はこくりと唾を飲み込むと、口を開いた。
「お願いします、……せて、ください」
「ん?何?聞こえない」
分かっているはずなのに、晴翔は楽しそうに聞き返す。そうしながらゆるゆると中を擦られて、その中途半端な刺激に、奈緒は涙目になりながら、晴翔の腕をつかんだ。
「……お願いっイかせ、て……くださ、あぁっ」
小さく叫ぶようにそう言った瞬間、晴翔が激しく奈緒の身体を突き上げる。懇願の言葉は、そのまま嬌声に変わった。
今度こそ、絶頂を与えられて、奈緒は甘い悲鳴をあげながら必死で晴翔にしがみついた。
◇
目を覚ますと、晴翔の姿はなかった。奈緒は怠い身体を叱咤しながらゆっくりと起き上がる。夜通し抱かれ、眠りについたのは明け方だった。
枕元の時計を確認すると、時刻は午前9時半過ぎ。晴翔はもう、大学に行ったのだろう。今日は、講義前に図書館に行くと言っていたから。
奈緒は今日、午後からの講義なので、午前中はゆっくりできる。シャワーを浴びて着替え、キッチンに行くと、奈緒の好きなパン屋の紙袋が目に入った。どうやら晴翔が買いに行ってくれたらしい。大好きなクロワッサンサンドが入っていて、奈緒は思わず笑みを浮かべた。
食事を終えた奈緒は、部屋の掃除と洗濯を始める。
晴翔が住むこの部屋は、一人暮らし用とは思えないほど広い。本当は、掃除も洗濯も、週に数回来ているという家政婦に任せればいいと晴翔には言われているけれど、色々なもので汚れたリネンの洗濯やゴムの残骸の処理なんて、他人に任せられない。
洗濯機のスイッチを入れて、奈緒は小さくため息をついた。
◇
晴翔は、奈緒の通う大学の同級生だ。
180近い長身に、甘い顔立ちをした彼は、まるで王子様のよう。晴翔の父親は誰もが知る大企業の社長なので、王子というのもあながち間違いではないと思う。
誰にでもにこやかに接するので、男女問わず好かれていて、彼のまわりにはいつも大勢の人がいる。
奈緒は、そんな晴翔の一応彼女を名乗っているけれど、その実態はセフレだ。大学に入学してから、毎日のように告白されるのにうんざりした晴翔が、隠れ蓑として奈緒を恋人に仕立て上げたのだ。
大学内で恋人として振る舞うかわりに、奈緒は晴翔に抱かれる。嗜虐的な性向を持つ晴翔と、被虐的な性向の奈緒。一致したふたりの欲を満たすための、誰にも言えない関係。
華やかな晴翔が、何故地味な奈緒と付き合っているのかと、不思議に思う人は多い。実際奈緒は、何人もの女子に嫌味を言われたり直接的な言葉を投げられたりしているから。
いつまでもこの関係が続くわけがないことは、奈緒が一番よく分かっている。
◇
セフレになる前から、晴翔のことは一方的に知っていた。地味で目立たない奈緒とは反対に、晴翔は入学式の時からすでに目立っていたから。
キラキラした人たちに囲まれて、その中でも一番輝いているのが晴翔だった。同じ学科とはいえ、そうそう話すこともないだろうと思っていたのだけど、大学2年の夏、奈緒は偶然、晴翔と交流を持つことになる。
ウィーンという無機質な機械音と、奈緒の喘ぐ声が、静かな部屋を満たしていく。
「あ、やぁっ……晴翔、くん……、もう無理っ」
首を振り、涙目で訴えてみても、晴翔は笑って奈緒の秘所に玩具をより強く押し当てる。何も着ていない奈緒とは反対に、晴翔は服を着たままだ。
「無理じゃねぇだろ。まだイけるって、ほら」
「も、嫌……っ、あぁっ」
悲鳴と共に奈緒の身体が大きく震え、秘所から勢いよく水分が噴き出して晴翔のジーンズを濡らした。それを確認して、晴翔は呆れたように笑う。
「あーあ、また潮吹いた。奈緒、ほんと嫌だってのは口だけだな。服濡れたし」
「あ……、ごめんなさ……」
必死で息を整えていた奈緒は、慌てて晴翔を見上げる。彼の身につけている服はいつも高級なものばかりで、それを汚してしまったことに焦りを隠せない。
「あの、クリーニング代、払うから……」
「別に、そういうのいいから」
奈緒の申し出をあっさりと跳ね除けると、晴翔は服を脱いだ。そして手早くゴムをつけると奈緒の脚を広げる。
「や、待っ……んんっ」
イったばかりの敏感な身体は、待ち望んだ晴翔のものを歓迎するように締めつける。絶え間なく快楽を与えられて、奈緒は何も考えられなくなっていく。
「奈緒、締めすぎ。力抜けって」
「そんな、分かんない……っ」
「あーほんと、奈緒の中、最高」
少し掠れた声で笑いながら、晴翔は奈緒の手を縛っていた紐を解く。
「ほら、ちゃんと抱きつけよ」
促されて、奈緒はゆっくりと腕を晴翔の首に回す。縛られていたせいで少し腕が痺れているけれど、密着が深まって温もりを感じられるのが嬉しい。晴翔にこうして抱きつくことができるのは、身体を重ねるこの時だけだから。
奈緒がしっかりと抱きついたのを確認して、晴翔は腰の動きを速める。勢いよく奥を突かれて、奈緒の口からは悲鳴のような喘ぎ声が漏れた。
「だめ、もう……っ」
「……っと、まだイくなよ」
「あ……」
あと少しで絶頂を迎えそうだったのに、晴翔は動きを止めてしまう。もどかしさで、奈緒は恨めしそうに晴翔を見上げた。
「生意気な顔して。こういう時は、何て言うんだった?ちゃんと教えただろ」
「……っ」
晴翔は楽しそうな表情で奈緒の顔をのぞきこむけれど、奈緒は思わず視線を逸らしてしまう。教えられた言葉は、奈緒にとっては直接的すぎて、口にするのはいつも躊躇ってしまう。
それでも、黙ってやり過ごすことが許されるはずもなく。奈緒はこくりと唾を飲み込むと、口を開いた。
「お願いします、……せて、ください」
「ん?何?聞こえない」
分かっているはずなのに、晴翔は楽しそうに聞き返す。そうしながらゆるゆると中を擦られて、その中途半端な刺激に、奈緒は涙目になりながら、晴翔の腕をつかんだ。
「……お願いっイかせ、て……くださ、あぁっ」
小さく叫ぶようにそう言った瞬間、晴翔が激しく奈緒の身体を突き上げる。懇願の言葉は、そのまま嬌声に変わった。
今度こそ、絶頂を与えられて、奈緒は甘い悲鳴をあげながら必死で晴翔にしがみついた。
◇
目を覚ますと、晴翔の姿はなかった。奈緒は怠い身体を叱咤しながらゆっくりと起き上がる。夜通し抱かれ、眠りについたのは明け方だった。
枕元の時計を確認すると、時刻は午前9時半過ぎ。晴翔はもう、大学に行ったのだろう。今日は、講義前に図書館に行くと言っていたから。
奈緒は今日、午後からの講義なので、午前中はゆっくりできる。シャワーを浴びて着替え、キッチンに行くと、奈緒の好きなパン屋の紙袋が目に入った。どうやら晴翔が買いに行ってくれたらしい。大好きなクロワッサンサンドが入っていて、奈緒は思わず笑みを浮かべた。
食事を終えた奈緒は、部屋の掃除と洗濯を始める。
晴翔が住むこの部屋は、一人暮らし用とは思えないほど広い。本当は、掃除も洗濯も、週に数回来ているという家政婦に任せればいいと晴翔には言われているけれど、色々なもので汚れたリネンの洗濯やゴムの残骸の処理なんて、他人に任せられない。
洗濯機のスイッチを入れて、奈緒は小さくため息をついた。
◇
晴翔は、奈緒の通う大学の同級生だ。
180近い長身に、甘い顔立ちをした彼は、まるで王子様のよう。晴翔の父親は誰もが知る大企業の社長なので、王子というのもあながち間違いではないと思う。
誰にでもにこやかに接するので、男女問わず好かれていて、彼のまわりにはいつも大勢の人がいる。
奈緒は、そんな晴翔の一応彼女を名乗っているけれど、その実態はセフレだ。大学に入学してから、毎日のように告白されるのにうんざりした晴翔が、隠れ蓑として奈緒を恋人に仕立て上げたのだ。
大学内で恋人として振る舞うかわりに、奈緒は晴翔に抱かれる。嗜虐的な性向を持つ晴翔と、被虐的な性向の奈緒。一致したふたりの欲を満たすための、誰にも言えない関係。
華やかな晴翔が、何故地味な奈緒と付き合っているのかと、不思議に思う人は多い。実際奈緒は、何人もの女子に嫌味を言われたり直接的な言葉を投げられたりしているから。
いつまでもこの関係が続くわけがないことは、奈緒が一番よく分かっている。
◇
セフレになる前から、晴翔のことは一方的に知っていた。地味で目立たない奈緒とは反対に、晴翔は入学式の時からすでに目立っていたから。
キラキラした人たちに囲まれて、その中でも一番輝いているのが晴翔だった。同じ学科とはいえ、そうそう話すこともないだろうと思っていたのだけど、大学2年の夏、奈緒は偶然、晴翔と交流を持つことになる。
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