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7 頑張って育てたの ★

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「え、ちょ、待てってミリアム」
 顔を赤くしたイヴァンが、慌てたように毛布でミリアムの身体を包もうとするから、ミリアムはイヴァンの身体にしっかりと抱きついた。きっと媚薬の効果はまだ消えていない。せっかく脱がせたのに、イヴァンはあっという間にまた服を着てしまったけれど、ズボンの下の彼のものは、今も熱く昂っているから。
 
「まだ足りないでしょ?ね、だから私を抱いてよ、イヴァン」
「ミリアム……」
「イヴァンは、胸の大きい子が好きでしょう」
 つぶやきながら、ミリアムはイヴァンの手をとって自らの胸へと導いた。胸に押し当てたイヴァンの手はぴくりとも動かなくて、やっぱり自分は彼にとって対象外なのだろうかと悲しくなる。

「色々と頑張ったんだよ。マッサージもしたし、大嫌いな牛乳だってたくさん飲んだし、下着にだって気を使ってきたの。……まだ、足りないかな」
 少し震えてしまった声に、イヴァンの手が一瞬躊躇うように揺れた。
「ね、触ってよ」
 重ねたイヴァンの手に力を込めて、ミリアムは指先を胸に食い込ませた。大好きな人に触れられているはずなのに、そこに彼の意志がないことが悲しい。

「……本当に、いいんだな」
 低い声は、まるで怒っているよう。ミリアムは一度唇を噛みしめたあと、笑顔で顔を上げた。
「いいって、言ってる」
 たとえ彼にとっては媚薬のせいであっても、初めての相手はイヴァンがいい。きっと二度とイヴァンはミリアムを見てくれなくなるだろうけど、それでも構わない。他に初めてを捧げたい相手なんて、いない。

「……泣いて嫌だって言っても、やめてやれないかもしれない」
「平気。泣くわけない」
 イヴァンの言葉が終わる前に、被せるようにしてミリアムは言う。優しくしてもらえなくても、そんなの覚悟の上だ。絶対にもう涙なんて見せないと心に決めて、ミリアムは強気な笑みを浮かべた。
 それを見て、小さく唸ったイヴァンの手が、ぎゅうっとミリアムの胸を掴んだ。少し痛みを感じるほどのその強さに、一瞬声をあげそうになるけれど、ミリアムは必死に堪える。
「抵抗、しないのか」
 困ったような表情でイヴァンがつぶやく。どうやら、ミリアムが痛がって抵抗するのを待っていたらしい。それを理解した瞬間、ミリアムの中の闘争心に火がついた。
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