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1 感謝しろよな、りーげるくん
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元侯爵令嬢エリスの朝は同居している友人ニナを起こすことから始まる。寝室の隣り合うベッドの片方に、巨大な白いパンの如く布団に包まったニナを優しく揺する。
「ニナ、おはよう。朝よ」
「ぬー……」
眠そうな声。すぐには起きないので、エリスは先に寝室を出る。
秋の朝はもうだいぶん肌寒い。一枚上着を羽織ってからシャワールームにある洗面台へ向かう。小さな洗面台の蛇口をひねって出てくるのは冷たい水。貴族だったころ、冬場は魔動器により温められたぬるま湯が蛇口から出ていたが、別にそれが恋しいとも思わず、平然と冷水で顔を洗う。
洗い終わって、顔を拭いて、鏡に映る自分を見る。「金の髪に紫の瞳という貴族によくある色合い、そしてありふれた顔。いつみても平凡。でも昔より顔色が良くなったのはニナのおかげ」などと本人は思ったが、実際はここまで鮮やかな輝く金髪は珍しいし、その顔はとてつもなく整っている。貴族時代、家族からも婚約者からも愛されることがなかった故に異常に自己評価が低いのだ。
眠気が完全に飛ぶと、まず朝食を用意する。
台所の竈に──本来は火打ち石やマッチで火をつけるのが普通だが──魔法で火を入れる。初級攻撃魔法しか使えないエリスだが、明かり以外の魔導器が殆ど無い平民の暮らしでは有効利用できている。
竈の上にフライパンを置いて熱を通している間に、床下の食糧保存庫から卵二つと葉物野菜を取り出す。それから、机の上に置いていたパンを手に取る。これは昨夜仕事帰り、馴染みのパン屋でおかみさんが売れ残りをくれた。
台所のまな板の上でパンを横に切り、断面を熱したフライパンで焼く。軽く焦げ目が付いたらパンを取り出す。空いたフライパンに油をひいて卵を二つ落とす。エリスは半熟が好みだが、ニナの好みは固めに焼いたものなのでじっくり火を通した。塩胡椒は控えめにしておく。
出来上がった目玉焼きを切り分け、葉物野菜と共にバターを塗ったパンに挟んで完成である。
「いい匂いするー」
寝室からのそりとニナが出てくる。いつも朝食の匂いで起きてくるのだ。眠そうに目をこすっていたが、出来上がった簡単な目玉焼きサンドを目にして覚醒する。
「目玉焼きしゅき!」
「食べる前に顔を洗いましょうね」
「うん」
ニナが素直に洗面台に向かう。エリスはその間に机に朝食を並べる。自分のコップには水を注ぎ、ニナのコップには牛乳を注ぐ。顔を洗ったニナが席に着きながら、
「うー、牛乳嫌いじゃないけど毎日だとビミョー」
エリスは十八歳で成人。そしてニナもそういうことになっている。保護された当時、年齢が不明だったので、とりあえず見た目から五歳と判断されたらしい。それから十三年経過したが、ニナは小柄で十代前半にしか見えない幼さ。理由は幼いころの栄養不足と、貴族となってからも偏食だったことだと推察される。だから、エリスはニナの健康面を非常に気遣っていた。
「牛乳は体に良いのよ。それに背が伸びるかもしれないわ」
「そうかー」
ニナ自身、成人と見られないことに少し不満を感じているらしいので、牛乳をくいっと飲み干した。
エリスは簡易な祈りをしてから食事を始めた。特に信心深い訳ではないが、貴族であった時からの習慣であるし、止める理由もないので続けている。
あまり噛まずに早食いのニナはあっという間に食べ終わる。椅子に座ったまま、床につかない足を机下でプラプラさせながらエリスが食べ終わるのを待つ。
食後は二人で跡片付け。エリスが食器を洗ってニナが拭く。それが終われば、寝室に戻って身嗜みを整える。
エリスはまず、ニナの透き通る銀の髪を梳いて整えてやった後、自分の髪を整えたり薄い化粧をしたりする。その間、ニナはベッドで寝ころんでいる。せっかく整えた髪が台無しである。
そして、二人はそれぞれの所属の制服に着替える。エリスは白を基調とした清廉な印象の看護服に近い衣装。これは辺境伯の私兵、通称辺境軍の治癒術師が着るもの。ニナは簡素なワンピースの上に、黒い生地に金糸で装飾された重厚な印象な外套を羽織る。ニナには到底似合わないが、魔法師団の軍人はこの外套を身に着けるのが規則だ。
さて、出勤である。
エリスが向かうのは、この辺境の中心都市ズスルクの中央に存在する広大な城の敷地内にある辺境軍基地。ニナは本来であれば、城の隣にある小さな魔術師団辺境基地に向かうべきなのだが、最近ではエリスにくっついて辺境軍基地の医務室に居座っている。何故、ニナが魔術師団辺境基地に行かないかというと、行かなくてよくなったからである。
そもそも、中央の魔術師団から人員が派遣されるのは、辺境の隣にある魔族の国による侵攻を防ぐため。魔族は使い魔の大軍を用いて、規模はまちまちだが、定期的に戦を仕掛けてくる。
夏頃、ニナが辺境に配属された時期にも戦があった。当然、出撃命令を下された。魔術師団の辺境基地から転移陣を用いて国境付近の砦に移動し、すぐさま辺りが見回せる場所に移動したニナは向かってくる使い魔の大軍の真下を大規模爆散させた。結果地形が変わった。使い魔の大軍は爆散に巻き込まれて大体が絶命して、深いクレーターに落ちていった。
それからというもの、魔族の侵攻がピタリと止んだ。季節が秋に移り変わっても、戦を仕掛けてこない。
この辺境は魔素が満ちている山脈に囲まれている。そこからもたらされる恵は多いが、魔物も活性化されている上に数が多い。辺境軍はこの魔物討伐と魔族の侵攻を防ぐこと両方が主な任務であるが、魔術師団は魔族の侵攻を防ぐことだけが目的で派遣されている。つまり戦がなければ暇である。
ならば、辺境軍の魔物討伐を手伝えばいいではないかと、辺境の民は思うだろうが、魔術師団は有事の際に備えておかなければならない。魔物討伐で損傷したり、人員が減っていたりしたから、魔族の侵攻を防げませんでした、なんてことは許されない。故に、魔術師団の軍人は今日も今日とて、招集がかかるまで各々好きに過ごしている。
□
辺境軍基地の門に近づくと、門番たちが笑顔で迎え入れる。
「二人とも、おはよう」
「エリスさんの仕事の邪魔をしないよう大人しくしろよー、ニナちゃん?」
「大人しく過ごせたら、帰りにこの飴をやろう」
明らかな子供扱いである。この門番を含む辺境軍兵士のほとんどはニナが国境付近の地形を変えたことを知らない。知っているのは極一部だけ。魔術師団の外套を羽織っているのでニナを間違いなく軍人だと認識しているが、まさかそれほどの実力とは思っていないのだ。
「飴いらねーし、おっさんたち今日も今日とておっさんだなー」
「こら、ニナ。ちゃんと挨拶しなさい」
最初はむくれていたニナだが、子供扱いされた方が得なことがあるので受け入れている。しかし、ささやな抵抗を込めて、子供扱いしてくる兵士は年齢にかかわらず「おっさん」と呼んでいる。勿論エリスが注意するが、意に介さないニナである。そんな二人を門番たちは微笑ましく見送った。
医務室に向かう二人。医務室と言っても一室では無く、基地内の医療施設の建物のことを指す。それは門にほど近い場所にある。到着すると、エリスの先輩治癒術師アルカが既に仕事を始めていた。彼女は珍しい平民出身治癒術師の中年女性。しゃきしゃきとしていることと、釣り目で愛想が無いことから勘違いされやすいが、キツイ性格ではない。現に、本来先に来ているべき後輩エリスが後から来ても小言一つない。ニナが何者であるか知っているから、という理由もあるかもしれない。
治療室で負傷者を診るアルカを手伝うために、エリスはまず鞄を置いてこようと治癒術師の控室に向かった。その途中廊下で、清めた包帯の入った籠を持った看護師と遭遇した。
「エリスさん丁度よかった。この包帯を干してきてくれる?」
「ええ、いいですよ」
こういう雑務は看護師の仕事だ。治癒術師のエリスがやる必要はない。だが、看護師たちは度々エリスに仕事を押し付けている。そして、文句も言わずにすんなり引き受けるのがエリスだ。
ニナが不満そうな表情を作ったが、何も言わなかった。以前、看護師に破壊魔法を使いそうになったニナをエリスがきつく叱ったのが効いているのだ。
言われた通り、干すために屋上へ向かうエリス、その後をてくてく付いてゆくニナ。杖を突いて階段をゆっくり下りていた負傷兵がすれ違いざま「ニナちゃんはひよこみたいだなあ」と笑顔。ニナは「そこまで小さくない」と反論したが、負傷兵はさらににこにこするだけだった。
屋上に上がる。雲が少なく晴れているが少々風が強い。エリスは包帯が飛ばされないように注意しながら干し始める。ニナは一枚手に取ると、何を思ったかぶんぶん振り回して遊ぶ。
「こら、ニナ。包帯で遊んではいけません」
「うい」
大人しく持っていた包帯を籠に戻した。そして、ニナは屋上に寝転がって、風に靡く包帯を見上げながら、ぼそりと。
「麺類が食べたい」
包帯から麺類を想像したらしい。
「じゃあ、今日の夕食は麺類にしましょうか」
エリスは家にある食料を思い出して献立を考え始めるが、ニナは、
「今食べたい」
「さっき朝食を食べたばかりでしょう」
「じゃあお昼に食べたい」
「今日の食堂のメニューは確か鶏肉の……」
メニューを言い終わる前にニナが言葉を被せる。
「肉しゅき! 麺より肉だ! 肉さえあればそれでいい人生なのであった!」
「もう、ニナったら……ちゃんと野菜も食べるようにね」
「野菜ヤダー」
「なら、お肉は無しよ」
「それはヤダー」
などと実りのない会話を続けていると、階段から足音が聞こえてきた。現れたのは黒髪で、背が高く体格の良い男。
「エリス、ここに居たのか」
「辺境伯様、おはようございます」
辺境伯と呼ばれた男はわずかだが嬉しそうに表情をやわらげた。この城の主である彼は、主に城内で執務をこなすのが主な役目。しかし、こうして基地に足を運んで毎朝エリスに会いにきている。
「ああ、おはよう。エリスは今日も綺麗だな。私は一日の始まりにお前の顔を見ないと何のやる気も起きない男になってしまった」
エリスはそれには答えずに少し眉を下げて困り気味の笑みを作る。辺境伯は毎日この調子で周囲の目も憚らずエリスに好意を向けてくる。エリスが看護師たちにあまり好かれていないのはこのせいだ。
看護師たちの多くは、美しい顔立ちで頭も良く腕も立つのに未だ独身の辺境伯に少なからず好意を抱いていた。まさか自分が辺境伯に見初められるなどとは思っていないだろうが、もしかすると、という望みは捨てきれない者が多いようだった。だから、元貴族令嬢で貴重な治癒術師のエリスが辺境伯の興味を掻っ攫っていったのは面白くないらしいく、わかりやすく苛めはしないが少し仕事を押し付けたりはしている。
辺境伯はエリスがそういう状況になっているのは知っているのか知らないのか不明だが、エリスの反応がよくなくてもアプローチを続けている。
「おーおー辺境伯よー。このニナさんを無視するとは良いどきょーしてるじゃないか」
寝転がったままのニナが不服そうな声を出す。ニナに辺境伯の相手を任せてエリスは作業に戻った。
「無視はしていない。エリスのことばかり考えているせいか、お前の存在は認識していても、つい頭の隅に追いやってしまう」
辺境伯が真剣な表情でそう言うと、ニナはにやりと笑った。
「おーおー、エリスの可愛いニナさんへの扱いがなってないなー。そんなんだとリーゲルに負けるぞ。リーゲルはニナさんのこと友達と思ってるからな。ミョーの毛皮買ってくれたし」
辺境伯がニナに近づいて屈み、小声で、
「ふむ、つまりお前に賄賂を贈れば良いのか」
「そんな物で釣られる簡単な二ナさんじゃないんだなー。ちなみにニナさん今はりーげるくんをがんばれしてるからな」
「……エリスを手に入れる上でお前は重要な存在だということを理解しているが、お前が支持しているからといって、あの小僧に私が負ける道理はない」
「本当にそう思うかー?」
クスクスとニナが笑えば辺境伯は少し思案の顔になる。そこへ包帯を干し終わったエリスが戻ってきた。
「ニナ、私はアルカさんの手伝いに行くわね」
「じゃあ、ついてくー」
むくりと起き上がり、服のほこりを払ったニナがエリスの傍に移動する。
「私もそろそろ城に戻らねば」
と、辺境伯もエリスの隣に並ぶ。距離が近いことと、何やら熱の籠った眼差しでじっと見詰められることに戸惑い少し頬が赤くなるエリス。ニナが間に割り込むが、お構いなしにエリスの初心な反応を楽しむ辺境伯。ニナが抗議の声をあげようとすると、またもや階段から何者かの足音。
「あ、リーゲル、はよっす」
上がってきたのは空色の髪の少し幼さを残す顔立ちの青年。この国の第四王子リーゲルだ。
「エリス様、ニナ嬢、おはようございます。……それから、辺境伯も」
明らかに最後は声のトーンを落としていた。
「おはようございます、殿下。どうなされたのですか」
リーゲルは普段、中央の官吏として城近くの役所に勤めている。特に用事が無ければ基地には来ない。エリスが問うとリーゲルは辺境伯へ視線を移す。
「書類の受け渡しで城へ向かったのですが、お忙しい秘書官殿が辺境伯を呼び戻すために基地に行くと言っていたので、代わりに僕がその役を引き受けたのです」
それを聞いた辺境伯が無表情で冷たい声を出す。
「今戻ろうとしていた」
「そうですか、では早く」
微笑んでいるが明らかに好意的ではないリーゲルが辺境伯へ先に行くよう促す。辺境伯は渋々と階段を降り始めた。
「では、僕もこれで。エリス様、ニナ嬢、次の休みを楽しみにしていますね」
リーゲルは笑顔を更に優しく変化させてから、そう告げて去っていった。
「次の休みって?」
ニナがエリスを見上げて首を傾げる。
「数日前、辺境に来たばかりの殿下を案内する約束をしたじゃない」
「え? あれって結局私とエリスだけでお出かけするんじゃなかった?」
「……そういえば、そういう流れになった気がするわ」
エリスが思い出しながらそうだったと頷く。
「どうする?」
「そうね……殿下は約束したと思っているようだし、ニナが嫌でないなら三人でお出かけしましょうか」
「うん、じゃあリーゲルも入れてやる」
ニナは心の中で「感謝しろよな、りーげるくん」と呟いた。
「ニナ、おはよう。朝よ」
「ぬー……」
眠そうな声。すぐには起きないので、エリスは先に寝室を出る。
秋の朝はもうだいぶん肌寒い。一枚上着を羽織ってからシャワールームにある洗面台へ向かう。小さな洗面台の蛇口をひねって出てくるのは冷たい水。貴族だったころ、冬場は魔動器により温められたぬるま湯が蛇口から出ていたが、別にそれが恋しいとも思わず、平然と冷水で顔を洗う。
洗い終わって、顔を拭いて、鏡に映る自分を見る。「金の髪に紫の瞳という貴族によくある色合い、そしてありふれた顔。いつみても平凡。でも昔より顔色が良くなったのはニナのおかげ」などと本人は思ったが、実際はここまで鮮やかな輝く金髪は珍しいし、その顔はとてつもなく整っている。貴族時代、家族からも婚約者からも愛されることがなかった故に異常に自己評価が低いのだ。
眠気が完全に飛ぶと、まず朝食を用意する。
台所の竈に──本来は火打ち石やマッチで火をつけるのが普通だが──魔法で火を入れる。初級攻撃魔法しか使えないエリスだが、明かり以外の魔導器が殆ど無い平民の暮らしでは有効利用できている。
竈の上にフライパンを置いて熱を通している間に、床下の食糧保存庫から卵二つと葉物野菜を取り出す。それから、机の上に置いていたパンを手に取る。これは昨夜仕事帰り、馴染みのパン屋でおかみさんが売れ残りをくれた。
台所のまな板の上でパンを横に切り、断面を熱したフライパンで焼く。軽く焦げ目が付いたらパンを取り出す。空いたフライパンに油をひいて卵を二つ落とす。エリスは半熟が好みだが、ニナの好みは固めに焼いたものなのでじっくり火を通した。塩胡椒は控えめにしておく。
出来上がった目玉焼きを切り分け、葉物野菜と共にバターを塗ったパンに挟んで完成である。
「いい匂いするー」
寝室からのそりとニナが出てくる。いつも朝食の匂いで起きてくるのだ。眠そうに目をこすっていたが、出来上がった簡単な目玉焼きサンドを目にして覚醒する。
「目玉焼きしゅき!」
「食べる前に顔を洗いましょうね」
「うん」
ニナが素直に洗面台に向かう。エリスはその間に机に朝食を並べる。自分のコップには水を注ぎ、ニナのコップには牛乳を注ぐ。顔を洗ったニナが席に着きながら、
「うー、牛乳嫌いじゃないけど毎日だとビミョー」
エリスは十八歳で成人。そしてニナもそういうことになっている。保護された当時、年齢が不明だったので、とりあえず見た目から五歳と判断されたらしい。それから十三年経過したが、ニナは小柄で十代前半にしか見えない幼さ。理由は幼いころの栄養不足と、貴族となってからも偏食だったことだと推察される。だから、エリスはニナの健康面を非常に気遣っていた。
「牛乳は体に良いのよ。それに背が伸びるかもしれないわ」
「そうかー」
ニナ自身、成人と見られないことに少し不満を感じているらしいので、牛乳をくいっと飲み干した。
エリスは簡易な祈りをしてから食事を始めた。特に信心深い訳ではないが、貴族であった時からの習慣であるし、止める理由もないので続けている。
あまり噛まずに早食いのニナはあっという間に食べ終わる。椅子に座ったまま、床につかない足を机下でプラプラさせながらエリスが食べ終わるのを待つ。
食後は二人で跡片付け。エリスが食器を洗ってニナが拭く。それが終われば、寝室に戻って身嗜みを整える。
エリスはまず、ニナの透き通る銀の髪を梳いて整えてやった後、自分の髪を整えたり薄い化粧をしたりする。その間、ニナはベッドで寝ころんでいる。せっかく整えた髪が台無しである。
そして、二人はそれぞれの所属の制服に着替える。エリスは白を基調とした清廉な印象の看護服に近い衣装。これは辺境伯の私兵、通称辺境軍の治癒術師が着るもの。ニナは簡素なワンピースの上に、黒い生地に金糸で装飾された重厚な印象な外套を羽織る。ニナには到底似合わないが、魔法師団の軍人はこの外套を身に着けるのが規則だ。
さて、出勤である。
エリスが向かうのは、この辺境の中心都市ズスルクの中央に存在する広大な城の敷地内にある辺境軍基地。ニナは本来であれば、城の隣にある小さな魔術師団辺境基地に向かうべきなのだが、最近ではエリスにくっついて辺境軍基地の医務室に居座っている。何故、ニナが魔術師団辺境基地に行かないかというと、行かなくてよくなったからである。
そもそも、中央の魔術師団から人員が派遣されるのは、辺境の隣にある魔族の国による侵攻を防ぐため。魔族は使い魔の大軍を用いて、規模はまちまちだが、定期的に戦を仕掛けてくる。
夏頃、ニナが辺境に配属された時期にも戦があった。当然、出撃命令を下された。魔術師団の辺境基地から転移陣を用いて国境付近の砦に移動し、すぐさま辺りが見回せる場所に移動したニナは向かってくる使い魔の大軍の真下を大規模爆散させた。結果地形が変わった。使い魔の大軍は爆散に巻き込まれて大体が絶命して、深いクレーターに落ちていった。
それからというもの、魔族の侵攻がピタリと止んだ。季節が秋に移り変わっても、戦を仕掛けてこない。
この辺境は魔素が満ちている山脈に囲まれている。そこからもたらされる恵は多いが、魔物も活性化されている上に数が多い。辺境軍はこの魔物討伐と魔族の侵攻を防ぐこと両方が主な任務であるが、魔術師団は魔族の侵攻を防ぐことだけが目的で派遣されている。つまり戦がなければ暇である。
ならば、辺境軍の魔物討伐を手伝えばいいではないかと、辺境の民は思うだろうが、魔術師団は有事の際に備えておかなければならない。魔物討伐で損傷したり、人員が減っていたりしたから、魔族の侵攻を防げませんでした、なんてことは許されない。故に、魔術師団の軍人は今日も今日とて、招集がかかるまで各々好きに過ごしている。
□
辺境軍基地の門に近づくと、門番たちが笑顔で迎え入れる。
「二人とも、おはよう」
「エリスさんの仕事の邪魔をしないよう大人しくしろよー、ニナちゃん?」
「大人しく過ごせたら、帰りにこの飴をやろう」
明らかな子供扱いである。この門番を含む辺境軍兵士のほとんどはニナが国境付近の地形を変えたことを知らない。知っているのは極一部だけ。魔術師団の外套を羽織っているのでニナを間違いなく軍人だと認識しているが、まさかそれほどの実力とは思っていないのだ。
「飴いらねーし、おっさんたち今日も今日とておっさんだなー」
「こら、ニナ。ちゃんと挨拶しなさい」
最初はむくれていたニナだが、子供扱いされた方が得なことがあるので受け入れている。しかし、ささやな抵抗を込めて、子供扱いしてくる兵士は年齢にかかわらず「おっさん」と呼んでいる。勿論エリスが注意するが、意に介さないニナである。そんな二人を門番たちは微笑ましく見送った。
医務室に向かう二人。医務室と言っても一室では無く、基地内の医療施設の建物のことを指す。それは門にほど近い場所にある。到着すると、エリスの先輩治癒術師アルカが既に仕事を始めていた。彼女は珍しい平民出身治癒術師の中年女性。しゃきしゃきとしていることと、釣り目で愛想が無いことから勘違いされやすいが、キツイ性格ではない。現に、本来先に来ているべき後輩エリスが後から来ても小言一つない。ニナが何者であるか知っているから、という理由もあるかもしれない。
治療室で負傷者を診るアルカを手伝うために、エリスはまず鞄を置いてこようと治癒術師の控室に向かった。その途中廊下で、清めた包帯の入った籠を持った看護師と遭遇した。
「エリスさん丁度よかった。この包帯を干してきてくれる?」
「ええ、いいですよ」
こういう雑務は看護師の仕事だ。治癒術師のエリスがやる必要はない。だが、看護師たちは度々エリスに仕事を押し付けている。そして、文句も言わずにすんなり引き受けるのがエリスだ。
ニナが不満そうな表情を作ったが、何も言わなかった。以前、看護師に破壊魔法を使いそうになったニナをエリスがきつく叱ったのが効いているのだ。
言われた通り、干すために屋上へ向かうエリス、その後をてくてく付いてゆくニナ。杖を突いて階段をゆっくり下りていた負傷兵がすれ違いざま「ニナちゃんはひよこみたいだなあ」と笑顔。ニナは「そこまで小さくない」と反論したが、負傷兵はさらににこにこするだけだった。
屋上に上がる。雲が少なく晴れているが少々風が強い。エリスは包帯が飛ばされないように注意しながら干し始める。ニナは一枚手に取ると、何を思ったかぶんぶん振り回して遊ぶ。
「こら、ニナ。包帯で遊んではいけません」
「うい」
大人しく持っていた包帯を籠に戻した。そして、ニナは屋上に寝転がって、風に靡く包帯を見上げながら、ぼそりと。
「麺類が食べたい」
包帯から麺類を想像したらしい。
「じゃあ、今日の夕食は麺類にしましょうか」
エリスは家にある食料を思い出して献立を考え始めるが、ニナは、
「今食べたい」
「さっき朝食を食べたばかりでしょう」
「じゃあお昼に食べたい」
「今日の食堂のメニューは確か鶏肉の……」
メニューを言い終わる前にニナが言葉を被せる。
「肉しゅき! 麺より肉だ! 肉さえあればそれでいい人生なのであった!」
「もう、ニナったら……ちゃんと野菜も食べるようにね」
「野菜ヤダー」
「なら、お肉は無しよ」
「それはヤダー」
などと実りのない会話を続けていると、階段から足音が聞こえてきた。現れたのは黒髪で、背が高く体格の良い男。
「エリス、ここに居たのか」
「辺境伯様、おはようございます」
辺境伯と呼ばれた男はわずかだが嬉しそうに表情をやわらげた。この城の主である彼は、主に城内で執務をこなすのが主な役目。しかし、こうして基地に足を運んで毎朝エリスに会いにきている。
「ああ、おはよう。エリスは今日も綺麗だな。私は一日の始まりにお前の顔を見ないと何のやる気も起きない男になってしまった」
エリスはそれには答えずに少し眉を下げて困り気味の笑みを作る。辺境伯は毎日この調子で周囲の目も憚らずエリスに好意を向けてくる。エリスが看護師たちにあまり好かれていないのはこのせいだ。
看護師たちの多くは、美しい顔立ちで頭も良く腕も立つのに未だ独身の辺境伯に少なからず好意を抱いていた。まさか自分が辺境伯に見初められるなどとは思っていないだろうが、もしかすると、という望みは捨てきれない者が多いようだった。だから、元貴族令嬢で貴重な治癒術師のエリスが辺境伯の興味を掻っ攫っていったのは面白くないらしいく、わかりやすく苛めはしないが少し仕事を押し付けたりはしている。
辺境伯はエリスがそういう状況になっているのは知っているのか知らないのか不明だが、エリスの反応がよくなくてもアプローチを続けている。
「おーおー辺境伯よー。このニナさんを無視するとは良いどきょーしてるじゃないか」
寝転がったままのニナが不服そうな声を出す。ニナに辺境伯の相手を任せてエリスは作業に戻った。
「無視はしていない。エリスのことばかり考えているせいか、お前の存在は認識していても、つい頭の隅に追いやってしまう」
辺境伯が真剣な表情でそう言うと、ニナはにやりと笑った。
「おーおー、エリスの可愛いニナさんへの扱いがなってないなー。そんなんだとリーゲルに負けるぞ。リーゲルはニナさんのこと友達と思ってるからな。ミョーの毛皮買ってくれたし」
辺境伯がニナに近づいて屈み、小声で、
「ふむ、つまりお前に賄賂を贈れば良いのか」
「そんな物で釣られる簡単な二ナさんじゃないんだなー。ちなみにニナさん今はりーげるくんをがんばれしてるからな」
「……エリスを手に入れる上でお前は重要な存在だということを理解しているが、お前が支持しているからといって、あの小僧に私が負ける道理はない」
「本当にそう思うかー?」
クスクスとニナが笑えば辺境伯は少し思案の顔になる。そこへ包帯を干し終わったエリスが戻ってきた。
「ニナ、私はアルカさんの手伝いに行くわね」
「じゃあ、ついてくー」
むくりと起き上がり、服のほこりを払ったニナがエリスの傍に移動する。
「私もそろそろ城に戻らねば」
と、辺境伯もエリスの隣に並ぶ。距離が近いことと、何やら熱の籠った眼差しでじっと見詰められることに戸惑い少し頬が赤くなるエリス。ニナが間に割り込むが、お構いなしにエリスの初心な反応を楽しむ辺境伯。ニナが抗議の声をあげようとすると、またもや階段から何者かの足音。
「あ、リーゲル、はよっす」
上がってきたのは空色の髪の少し幼さを残す顔立ちの青年。この国の第四王子リーゲルだ。
「エリス様、ニナ嬢、おはようございます。……それから、辺境伯も」
明らかに最後は声のトーンを落としていた。
「おはようございます、殿下。どうなされたのですか」
リーゲルは普段、中央の官吏として城近くの役所に勤めている。特に用事が無ければ基地には来ない。エリスが問うとリーゲルは辺境伯へ視線を移す。
「書類の受け渡しで城へ向かったのですが、お忙しい秘書官殿が辺境伯を呼び戻すために基地に行くと言っていたので、代わりに僕がその役を引き受けたのです」
それを聞いた辺境伯が無表情で冷たい声を出す。
「今戻ろうとしていた」
「そうですか、では早く」
微笑んでいるが明らかに好意的ではないリーゲルが辺境伯へ先に行くよう促す。辺境伯は渋々と階段を降り始めた。
「では、僕もこれで。エリス様、ニナ嬢、次の休みを楽しみにしていますね」
リーゲルは笑顔を更に優しく変化させてから、そう告げて去っていった。
「次の休みって?」
ニナがエリスを見上げて首を傾げる。
「数日前、辺境に来たばかりの殿下を案内する約束をしたじゃない」
「え? あれって結局私とエリスだけでお出かけするんじゃなかった?」
「……そういえば、そういう流れになった気がするわ」
エリスが思い出しながらそうだったと頷く。
「どうする?」
「そうね……殿下は約束したと思っているようだし、ニナが嫌でないなら三人でお出かけしましょうか」
「うん、じゃあリーゲルも入れてやる」
ニナは心の中で「感謝しろよな、りーげるくん」と呟いた。
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