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17 おしまい
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「ニナ! 久しぶりね、元気だった?」
どこか懐かしい声に呼び止められて、銀の髪を揺らして少女が振り向く。
「おー……エリザ、久しぶりだなー」
金色の髪と瞳を持つエリザと呼ばれた少女はニナに抱き着いた。ほんの少し前までニナの方が背が高かったはずだが、今ではエリザが追い越している。
「エリザ大きくなったなー」
「ふふ、私が王都の学園に行ってから、もう三年よ? ニナにとっては昨日みたいなものかもしれないけど」
「流石に昨日は無いなー、ちょっと前くらいだよ」
そう言ってニナは少し背伸びしてエリザの頭を撫で始める。
「ホントに大きくなったなー、それに……ますますエリスそっくり」
ニナの瞳は昔を懐かしむように哀愁帯びたものになった。エリザはニナが遠くに行ってしまいそうに感じて抱きしめる力を強める。
「そんなに私、高祖母様に似てるの?」
「うん……声もそっくりだし、違うのは目の色くらいだなー」
「高祖母様は紫の瞳だったのよね、私も紫の瞳だったら良かったのに」
エリザはそうだったらニナはもっと喜んだかなと思ったのだ。ニナは高祖母のエリスが何よりも大好きだったと、今でも良く言っている。育ての親と同じくらい育てて貰ったと。
「今の金色もいいと思うぞ。金色も色々あるけど、エリザのはそのままリーゲルの色だ。少し薄くてキラキラしてるの。懐かしいよ」
「そう、それならよかったわ」
ニナの昔話には高祖父もよく出てきた。ニナはいつもリーゲルを困らせていたと少し申し訳なさそうにして話していたけど、高祖父は後年、ニナのおかげで騒がしくも楽しい人生だったと日記に書いている。今よりも奔放なお子様精神だったニナは高祖父と高祖母の恋人期間中をグッダグダなものにしたらしく、交際は8年もの長期間になり、高祖父は一進一退の関係を根気強く深めてやっとのことで結婚にこぎつけたらしいが、それはそれで良い思い出になったという。
「学園も無事卒業したし、これからはずっとニナと一緒に居られるわ」
「言う事までエリスと一緒だー」
「だって、高祖父様も高祖母様も、その後のお祖父様もお祖母様も、みんなニナをよろしくね、と遺言を残しているもの」
「でも、それ、全部強制じゃないよー。みんな好きに生きたらよいのだ」
「みんなニナが好きだから好きで一緒にいるのよ。勿論、私もね」
ニナはエリザにとってよき友人であり姉であり妹であり家族であった。誰もが時間の流れにより変わっていく中、殆ど変わらないニナの元に帰ると皆とても安心できるのだ。まるで楽しかった子供の頃に戻れたようで嬉しくもある。だから離れて暮らす家族や親族たちも定期的にニナの元へ帰ってくる。どれだけ離れても帰って来れる場所があるのは良いものだ。
「嬉しいこと言ってくれるな―。まあ、一時期はタナカの方が好きだったみたいだけど」
「うっ、それは初恋だったから……それにすぐ熱は冷めたじゃないの」
魔族のタナフォス。まだ故郷に帰れない為、時折、十年単位で他国を渡り歩いて暇を潰している。エリザが生まれた頃はまさにその暇つぶし中で、数十年ぶりに辺境に戻ってきたのはエリザが十歳の頃だった。ニナの様子を見に来たタナフォスにエリザは恋をしてしまったのだ。
タナフォスはニナの事を孫のように思うようになったこともあり、ニナへの接し方からエリザはタナフォスが優しい人物と勘違いしてしまった。
だが、タナフォスの趣味が複数の人間の女性と交際し、嫉妬心を煽り破傷事件を起こさせることだった為、早々に熱が冷めたのだった。ちなみにタナフォスは自分を刺しに来て無理心中を図る女性がお気に入りだが、それは弱き者が必死になっているから面白いのであって愛情の類では無いらしい。
「タナカは魔族だから人間は恋愛対象じゃないんだぞーって言い聞かそうと思ったら、言い聞かすまでもなくタナフォスがエリザの恋心に気が付く前に行動でエリザの恋を終わらせてくれて助かった。もし気が付いてタナカがエリザで遊んだらニナさんタナカと大喧嘩するとこだった」
タナフォスの遊びが度を過ぎたらニナは叱っている。タナフォスの方が圧倒的に強いが、付き合いが長いのでタナフォスも叱られたら暫くは遊びを控えるのだ。
「も、もう! この話は終わりにしましょう! それより、お兄様は元気?」
エリザの兄は次期辺境伯だ。三年振りに帰って来たエリザは真っ先にニナに会いに来た為、まだ家族に会っていない。
エリザにとっての高祖父母、エリスとリーゲルの唯一の娘は、当時の辺境伯であるネフリードの息子と結婚したのだ。つまり、エリスの子孫はずっと辺境伯家の者である。エリスの娘が己の息子と結婚することをネフリードは喜んだ。
しかし、リーゲルはネフリードの息子に己の娘を渡したくなかった為、娘が欲しくばリーゲルが修めた学問全てにおいて、リーゲルを越えよとの条件を出したそうだが、卒業後も官吏として働く傍ら幅広く学を深め国内有数の賢人となった彼を超えるなど無理難題であって、リーゲルとネフリードは大変なギスギスバトルを繰り広げた……というのはまた別の話。
「おー、元気だぞ。毎日エリザに会いたいとぼやきつつも、ちゃんと仕事はしてるぞ」
「三年間、手紙送るの禁止にすればシスコンもマシになるかと思ったけど変わらないのね……」
「まー、あいつ典型的な辺境伯家嫡男だからなー。エリスとかエリザみたいなのに夢中になるんだな」
「うちの家系ってそんな性質あったのね……」
兄の結婚が心配になったエリザだが、心配は他にもある。
「それよりもニナの為に私も良い人を探して、良い子孫を残さなきゃ」
「まーた、エリスみたいなこと言ってー。そんなのは気にしなくていいから、とりあえず旅の疲れを癒してこーい」
そう言って、エリザの背を押した。エリザも素直に「そうするわ」と言って懐かしの自分の部屋へ向かっていった。去るエリザの背を見送ったニナは、彼女が見えなくなってから、空を見上げる。
エリスがいなくなってもう何年経つだろう。すっかり慣れたと思ったけど、エリスにそっくりな子孫を前にすると、どうしようもなくエリスに会いたくなる。似てはいてもエリザはエリザだ。エリスではない。でも、嬉しいのは間違いない。エリスが確かに存在していた証だからだ。
見上げる空の先、お伽噺に言うような天の国があるならば、エリスはそこにいるのだろうか。ニナの寿命はまだまだ長い。ニナはエリスの子孫の傍で彼らを見守り続ける。それが終わった時、またエリスに会えるといいなと小さな願いを胸に抱きながら。
────────────────────────────
面白くならないのでプロットを練っては消しして、最終的に終わらせることだけを考えて、この終わりになりました。お読みいただきありがとうございます。
本編に入れたかったエピソードを番外編として何度か書きたいですが予定は未定です。
どこか懐かしい声に呼び止められて、銀の髪を揺らして少女が振り向く。
「おー……エリザ、久しぶりだなー」
金色の髪と瞳を持つエリザと呼ばれた少女はニナに抱き着いた。ほんの少し前までニナの方が背が高かったはずだが、今ではエリザが追い越している。
「エリザ大きくなったなー」
「ふふ、私が王都の学園に行ってから、もう三年よ? ニナにとっては昨日みたいなものかもしれないけど」
「流石に昨日は無いなー、ちょっと前くらいだよ」
そう言ってニナは少し背伸びしてエリザの頭を撫で始める。
「ホントに大きくなったなー、それに……ますますエリスそっくり」
ニナの瞳は昔を懐かしむように哀愁帯びたものになった。エリザはニナが遠くに行ってしまいそうに感じて抱きしめる力を強める。
「そんなに私、高祖母様に似てるの?」
「うん……声もそっくりだし、違うのは目の色くらいだなー」
「高祖母様は紫の瞳だったのよね、私も紫の瞳だったら良かったのに」
エリザはそうだったらニナはもっと喜んだかなと思ったのだ。ニナは高祖母のエリスが何よりも大好きだったと、今でも良く言っている。育ての親と同じくらい育てて貰ったと。
「今の金色もいいと思うぞ。金色も色々あるけど、エリザのはそのままリーゲルの色だ。少し薄くてキラキラしてるの。懐かしいよ」
「そう、それならよかったわ」
ニナの昔話には高祖父もよく出てきた。ニナはいつもリーゲルを困らせていたと少し申し訳なさそうにして話していたけど、高祖父は後年、ニナのおかげで騒がしくも楽しい人生だったと日記に書いている。今よりも奔放なお子様精神だったニナは高祖父と高祖母の恋人期間中をグッダグダなものにしたらしく、交際は8年もの長期間になり、高祖父は一進一退の関係を根気強く深めてやっとのことで結婚にこぎつけたらしいが、それはそれで良い思い出になったという。
「学園も無事卒業したし、これからはずっとニナと一緒に居られるわ」
「言う事までエリスと一緒だー」
「だって、高祖父様も高祖母様も、その後のお祖父様もお祖母様も、みんなニナをよろしくね、と遺言を残しているもの」
「でも、それ、全部強制じゃないよー。みんな好きに生きたらよいのだ」
「みんなニナが好きだから好きで一緒にいるのよ。勿論、私もね」
ニナはエリザにとってよき友人であり姉であり妹であり家族であった。誰もが時間の流れにより変わっていく中、殆ど変わらないニナの元に帰ると皆とても安心できるのだ。まるで楽しかった子供の頃に戻れたようで嬉しくもある。だから離れて暮らす家族や親族たちも定期的にニナの元へ帰ってくる。どれだけ離れても帰って来れる場所があるのは良いものだ。
「嬉しいこと言ってくれるな―。まあ、一時期はタナカの方が好きだったみたいだけど」
「うっ、それは初恋だったから……それにすぐ熱は冷めたじゃないの」
魔族のタナフォス。まだ故郷に帰れない為、時折、十年単位で他国を渡り歩いて暇を潰している。エリザが生まれた頃はまさにその暇つぶし中で、数十年ぶりに辺境に戻ってきたのはエリザが十歳の頃だった。ニナの様子を見に来たタナフォスにエリザは恋をしてしまったのだ。
タナフォスはニナの事を孫のように思うようになったこともあり、ニナへの接し方からエリザはタナフォスが優しい人物と勘違いしてしまった。
だが、タナフォスの趣味が複数の人間の女性と交際し、嫉妬心を煽り破傷事件を起こさせることだった為、早々に熱が冷めたのだった。ちなみにタナフォスは自分を刺しに来て無理心中を図る女性がお気に入りだが、それは弱き者が必死になっているから面白いのであって愛情の類では無いらしい。
「タナカは魔族だから人間は恋愛対象じゃないんだぞーって言い聞かそうと思ったら、言い聞かすまでもなくタナフォスがエリザの恋心に気が付く前に行動でエリザの恋を終わらせてくれて助かった。もし気が付いてタナカがエリザで遊んだらニナさんタナカと大喧嘩するとこだった」
タナフォスの遊びが度を過ぎたらニナは叱っている。タナフォスの方が圧倒的に強いが、付き合いが長いのでタナフォスも叱られたら暫くは遊びを控えるのだ。
「も、もう! この話は終わりにしましょう! それより、お兄様は元気?」
エリザの兄は次期辺境伯だ。三年振りに帰って来たエリザは真っ先にニナに会いに来た為、まだ家族に会っていない。
エリザにとっての高祖父母、エリスとリーゲルの唯一の娘は、当時の辺境伯であるネフリードの息子と結婚したのだ。つまり、エリスの子孫はずっと辺境伯家の者である。エリスの娘が己の息子と結婚することをネフリードは喜んだ。
しかし、リーゲルはネフリードの息子に己の娘を渡したくなかった為、娘が欲しくばリーゲルが修めた学問全てにおいて、リーゲルを越えよとの条件を出したそうだが、卒業後も官吏として働く傍ら幅広く学を深め国内有数の賢人となった彼を超えるなど無理難題であって、リーゲルとネフリードは大変なギスギスバトルを繰り広げた……というのはまた別の話。
「おー、元気だぞ。毎日エリザに会いたいとぼやきつつも、ちゃんと仕事はしてるぞ」
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「まー、あいつ典型的な辺境伯家嫡男だからなー。エリスとかエリザみたいなのに夢中になるんだな」
「うちの家系ってそんな性質あったのね……」
兄の結婚が心配になったエリザだが、心配は他にもある。
「それよりもニナの為に私も良い人を探して、良い子孫を残さなきゃ」
「まーた、エリスみたいなこと言ってー。そんなのは気にしなくていいから、とりあえず旅の疲れを癒してこーい」
そう言って、エリザの背を押した。エリザも素直に「そうするわ」と言って懐かしの自分の部屋へ向かっていった。去るエリザの背を見送ったニナは、彼女が見えなくなってから、空を見上げる。
エリスがいなくなってもう何年経つだろう。すっかり慣れたと思ったけど、エリスにそっくりな子孫を前にすると、どうしようもなくエリスに会いたくなる。似てはいてもエリザはエリザだ。エリスではない。でも、嬉しいのは間違いない。エリスが確かに存在していた証だからだ。
見上げる空の先、お伽噺に言うような天の国があるならば、エリスはそこにいるのだろうか。ニナの寿命はまだまだ長い。ニナはエリスの子孫の傍で彼らを見守り続ける。それが終わった時、またエリスに会えるといいなと小さな願いを胸に抱きながら。
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面白くならないのでプロットを練っては消しして、最終的に終わらせることだけを考えて、この終わりになりました。お読みいただきありがとうございます。
本編に入れたかったエピソードを番外編として何度か書きたいですが予定は未定です。
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