追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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15話 離脱

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 僕は狼型モンスターの道を塞ぐが、そんな事を意にも介さないように狼型モンスターは跳躍の構えをとる。
 ……こいつ、僕を飛び越えてエマ達を襲うつもりなのか!?

「させるかっ!」

 僕は即座に狼型モンスターに向けて『呪い』を放つ。

「グラァッ!?」

 跳躍する直前、狼型モンスターは千鳥足になり、まるで自分から地面に飛び込んだように転倒する。

 どうだい?
 泥酔するのは初めてだろ?

 僕が今回使った呪いの名は『酔朧之天ドランカード』。
 相手を即座に泥酔させる『呪い』だ。

 初めての酩酊状態で狼型モンスターは満足に動けないようでだ。
 時間稼ぎにはもってこいの強力な呪いだけど、その分代償もでかい。
 その代償は……。

「おぇぇぇぇ」

 呪った対象以上に酩酊状態に陥ってしまうことだ。
 その気持ち悪さに、思わず嘔吐してしまう。

 うぇぇぇ……地面が回って立ってられない。
 僕も狼型モンスター同様に地面に倒れ込んでしまう。

 今まで何回か『酔朧之天ドランカード』を使ったことはあるけど、これほど強い泥酔代償は初めてだ。
 それだけコイツが強い敵ってことなんだろう。

 それに時間は十分に稼いだはずだ。
 泥酔状態でうつろな視界の中で、『帰還の魔石』が輝いているのを僅かだけど確認できたしね。

 これで僕の最低限の仕事はやり終えた訳だ。

 狼型モンスターは『呪い』への抵抗力が強いのか、ゆっくりと地面から立ち上がる。
 それと同時に僕の泥酔状態も解除される。
 ……ちっ、もう時間切れか。

 だけど、エマをこの場から撤退させることができたし、後は消化試合みたいなものだ。
『呪い』を警戒して逃げてくれれば儲け物だけど……どうやら、そういうわけにもいかなそうだ。

「グッギャァァァァァァアアアアアア!!!!」

 モンスターの言葉は分からないけど、狼型モンスターがブチギレてるのだけは分かる。
 そりゃあ、敵を逃した上に、視界を奪ったり泥酔状態にしたらキレますよねー。

 さて、どうしたものか……。
 エマに伝えた作戦だと、この後、僕は敵の隙をついて自前の『帰還の魔石』を使って戦線離脱することになっているけど、実はそう簡単な話じゃないんだよなぁ。

 だって、僕、『帰還の魔石』なんて準備してきてないもん。
 あんな高価なマジックアイテム、毎回準備できるはずがない。

 それに、エマは知らないだろうけど、もし僕が魔石を持っていたとしても、魔石を使って転移することはそもそも不可能なんだよね。

『帰還の魔石』の使用方法は、まず1人が魔石に向かって魔力を流す。
 そうすると魔石は青く光り、転移を開始するまでに数秒の準備時間を要する。
 その間に、他の冒険者も魔石に手を触れてさえいれば、一緒に予め設定していた転移地ポイントに転移できるって寸法だ。

 つまり、少なくとも魔石の効果を最初に発動させる人は魔力を有していなければいけない。
 だけど、残念な事に僕には『呪詛師』っていう職業ジョブの影響なのか、この世界に存在する者なら必ず流れているはずの魔力が全く流れていないんだよね……。

 魔力の代わりに呪力と呼ばれる力が流れているけど、『帰還の魔石』に呪力を流しても転移できなかったのは既に実証済みだ。

 もしエマが、僕が転移できない事を知っていたら絶対にこの計画には乗らなかっただろうな。
 だけど、こればっかりは仕方ない。

 僕にとって最優先されるのがエマの命で、次がエマの望みだから。
 エマを絶対に守る上で、ケイネス達を助けるにはこの手段しか思いつかなかった。

 だけど、僕もただでられるつもりは毛頭ない!
 一か八かだけど、策は……ある!

「『呪怨纏鎧カーズドアーマー』」
「ガッ!?」

 僕は自分自身に対し、百以上の呪いをかける。
 無数もの呪いは僕の体を蝕み、僕の体の至る所が黒く変色していく。

 これが秘策、『呪怨纏鎧』だ。
 今の僕は猛毒状態ならぬ、猛呪状態になっている。

 狼型モンスターは猛呪状態の僕を見て、反射的に一歩後ろに下がり出す。

 狼型モンスターが人間のことを捕食対象としてみているのか、それとも暇つぶし程度の相手と見ているのかは分からない。

 どうだい、今の僕を食べるのはおろか、触れることすら嫌悪するだろ?

 ……だから、ここは痛み分けってことで引いてくれないかな?

「ガッ……ルゥアッッッッ!!」

 ……ああ、くそっ……。
 どうやら僕の読みは甘すぎたようだ、

 狼型モンスターは逃げるどころか、大きく口を開け、炎を吐き出す。
 ……君、そんな事もできたのね。
 確かにこれなら手を触れる事なく僕を焼き殺すことができる。

 僕の身長をゆうに超える大きさの炎球が真っ直ぐと飛んでくる。
 そして、僕にはこの攻撃を防ぐ手段はない。

 ……ここまでか。
 冒険者として他の命を奪っている以上、自分の命が奪われる覚悟は、とうの昔からしている。

 だけど、たった一つだけ後悔はある。

「もっとエマと冒険したかったな……」

 やっと信じられる本当の仲間を見つけたのになぁ。
 でも、僕は仲間に恵まれた。
 エマと一緒にいた時間は短かったけど、僕の誇りだ。

 僕は覚悟を決め、呪いを解除し、スッと目を閉じる。
 すると……。

「『螺旋嵐破ガル・ウェルシア』!!」

 後方から魔法が放たれ、僕の横を竜巻が通過し、そのまま炎球に衝突する。
 まるで爆発音のような轟音が鳴り響き、狼型モンスターの放った炎球は風によって霧散した。

「……えっ?」

 僕は後ろを振り向くと、そこには離脱したはずのエマが立っていた。

「ど、どうしてここに? 転移したんじゃなかったの?」
「こ……の……バカノロワ!!」
っだぁぁぁ!?」

 エマは近づくなり、僕の頭を杖でぶん殴ってきた。
 めちゃくちゃ痛いんですけど!?

 紙耐久の僕には、魔術師の物理攻撃さえ大ダメージになる。
 頭を押さえながらうずくまっていると、エマは顔を真っ赤にして怒りだす。

「どうしてここにじゃないわよっ! ノロワの考えそうな事なんて仲間のアタシにはお見通しなのよ!!」

 そう言いながら、エマは杖で僕のことを叩き続ける。
 最初の一撃ほどじゃないけど、地味に痛い……。

 それにしても、まさか僕が『帰還の魔石』を持っていないのをバレていたなんて。

「そもそも、アタシが仲間のことを置いて逃げるわけないでしょ!」

 ……あぁ、そうだった。
 エマは誰よりも優しいんだ。

 そんなエマが僕を置いていくって選択肢を選ぶはずがなかった。

 どうやらエマは、僕が自身を囮にする事を察知し、ケイネス達を転移させた後、魔法で援護する機会をうかがっていたようだ。

 って、そうだ。
 今は内輪揉めこんなことをしている場合じゃない。
 早く狼型モンスターの追撃を警戒しないと……!

「グッルゥゥゥ」
「犬はそこで待ってなさい! 今、大事な話をしてるの!!」
「ガウッ!?」

 狼型モンスターは自分の息吹ブレスを相殺したエマのことを警戒していたら、突如恫喝され、驚いたのか動きを固める。

 ……すっごい剣幕……。
 思わず僕も固まってしまった。

 エマは一通り怒り終え、肩の力が抜けたのか最後にポカンと優しく僕の頭をこづく。

「ノロワがいなきゃ意味がないのよ……。だから、二度とこんな作戦考えないでよ」
「うん……ごめん」

「……よし、許した! それで、この後はどうするつもり? ちなみにアタシは全くのノープランよ」

「そうだね。僕はひとつだけプランあるけど……聞く?」
「聞く!」

 僕の中でエマの安全は最優先事項だった。
 だけど、このプランは僕とエマ、両方が助かる可能性はあるけど、その分エマにも危険がふりかかる可能性がある。
 だから、このプランは隠していたけど、この状況になったら仕方ない。

「最後のプランは『二人でモンスターと戦う』ってやつだけど……どうする」
「いいわね。実に冒険者らしい案じゃない。乗ったわ!」

 なぜだかエマは乗り気のようだ。
 命の危険があるって本当に分かってますかね!?

「だけど、ちょっと違う点があるわよ。『二人で戦う』んじゃなくて、『二人で勝つ』……でしょ?」

 ……ああ、僕は本当に大バカだ。

 僕はエマのことを知らず知らずのうちに、仲間じゃなくてただの庇護対象と思い違えていたのかもしれない。
 だけど、本当の仲間ってのは守ってあげるんじゃなくて、こうやって肩を並べて困難に立ち向かう事を教えてもらった。

「うん……そうだね。勝とう、エマ!!」

 僕とエマは横並びで杖を構える。
 さあ、戦闘開始だ!

 二人で勝つんだ!!
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