追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

文字の大きさ
16 / 44

16話 全力

しおりを挟む
 
 僕とエマは横並びで杖を構える。

「……ところで結局はどうするの? 真正面からやって簡単に勝てる相手とは思わないけど」

 横に立っているエマがこそこそと小さい声で聞いてくる。
 うん、僕もそう思う。

 鋭い牙や爪による攻撃力の高さは当然ながら、巨体に見合わないほどの俊敏性。
 しかも、狼型モンスターだから、五感……特に聴力と嗅覚は高いだろう。
 おまけにこのモンスターは火まで吐ける上、学習能力も高いときた。

 近距離、遠距離ともに弱点がない。

 一方、僕たちは『呪詛師』と『魔法使い』という後衛職しかおらず、戦力が偏ったパーティーでバランスが悪い。

 客観的に見たら戦力な差は歴然だよね。

「それに、どうして直ぐに襲ってこないのかしら? お陰でアタシ達はこうやってゆっくりと作戦を練れるから助かってはいるけど……」

 エマの言う通り、狼型モンスターは僕たちから一定の距離をとり続けている。
 しかし、常に牙は剥いており、いつでも臨戦態勢に入れるよう警戒はし続けているようだ。

「さっきのエマの恫喝が怖かったんじゃって、痛ったぁっ!?」

 場の空気をすこしでも和らげようと冗談を言ったら、杖で思いっきり腹を殴られてしまった。

「冗談はいいから!」
「はい、すいません!!」

 僕は痛めた腹をさすりながら現状を分析する。

「多分、あのモンスターは僕たちを警戒して攻めあぐねているんだろうね。でも、逃がすつもりはないからこうして距離をとったまま威嚇し続けているんだと思う」

 実際あのモンスターからしたら、人間を見ることは勿論、魔法や呪いなんてものは初見だろう。
 でも、その警戒心のおかげでエマと戦闘の打ち合わせができるから助かっている。

 正直、この瞬間にでも襲われたら、僕たちは間違いなく全滅するだろう。

「さて、じゃあ今度は僕からエマに質問があるんだけどいい?」
「何?」

「もしエマが『呪紋』の縛り無しで全力の攻撃魔法を放ったらアイツを倒せる?」

 現在、エマの背中には僕の『呪紋じゅもん』が刻まれており、この『呪紋』による呪いの効果でエマの魔力出力を極端に抑えている。
 そうすることで、過剰なほどの魔力量を誇るエマの魔力を外部的にコントロールしている状態だ。

 呪いの縛りがない状態でエマが魔法を使うと、その過剰な魔力のせいで、初級魔法ですら並の『魔法使い』の上級魔法級の威力になってしまう。

 そんなエマが『呪紋』無しで上級魔法を使えば……おそらく僕なんかじゃ想像もつかないほどの威力があるに違いない。

「……多分一撃で倒せると思う。でも問題もあるよ」

 この均衡状態を打破する可能性があるのに、エマは浮かない顔をする。

「アタシの本気の上級魔法は、必要魔力が異常に大きいから、その分魔法の発動まで時間がかかっちゃうの」
「時間ってどれくらいかかる?」
「50……ううん、60秒は最低でも欲しい。それにもう一つ……上級魔法の詠唱中は極度の集中状態に入るから、その場から一歩も動けない上、詠唱以外に一切気を使えなくなるのよ」

 つまり魔法の詠唱中、エマは無防備になるわけだ。
 それに敵もバカじゃない。

 エマがそれほどの魔力を練り上げている間、今みたいに待ってくれるはずがない。
 必ず妨害のため襲いかかってくるだろう。

 つまり、エマが上級魔法を放つためには一分間、エマをこの狼型モンスターから守り続けなければいけないってことになる。

 ……気が遠くなるほどの長い時間稼ぎだね。

 僕は大きく息を吐き、そして覚悟を決める。
 狼型モンスターに勝つためにはエマの魔法が絶対に必要。
 それなら、僕がやることはもう決まっている。

「分かった。僕が全力で一分間、エマを守るから……信じて、ゆだねてくれる?」
「……バカね。もう、とっくに信じてるわよ!」

 エマはそれだけ言うと、杖を再度構えて『呪紋』を解呪したと同時に詠唱を始める。
 どんな風に敵を足止めするかとか、詳しい説明もまだしていないのに、だ。
 ……つまり、エマは僕の『守る』って言葉だけを信じてくれたってわけだ。

 この信頼は絶対に裏切れないし、裏切らない!

「さて、それじゃあ僕たちもやろうか」

「ガルァッ!?」

 どうやら狼型モンスターも周囲の異変に気がついたようだ。
 エマが上級魔法を発動するために詠唱を始めてから、周囲一帯から強力な魔力が溢れ出している。
 それに多分、炎に関する上級魔法なんだろう。
 周囲の気温が急激に上昇していく。

 魔法の存在を詳しく知らなくても、エマが何かヤバい事を始めたって事を本能的に察せられるだろう。

 狼型モンスターはエマに向けて攻撃態勢に入る。

「させないよっ!」
「ガッ……!?」

 僕は狼型モンスターに向けて呪いを放つ。
 今回使った呪いの名は『絶対静止アブソル・ゼロ』。

 その効果は『対象の動きを強制的に静止する』といったものだ。
 呪った相手の能力によって止められる時間は異なるけど、この狼型モンスターだと精々三秒が限界だろう。

 敵の動きを強制的に数秒止める呪い……強力な呪いだけど、その分代償もでかい。

 その代償は……。
「がっ、ぐっ……あああぁぁぁぁ」

 術者への強烈な痛みだ。

 呪いの代償として僕の全身に電流が走ったような痛みが駆け抜ける。

 たった一回でこの痛みか……。
 覚悟してたけど、かなりキツイな。

 エマが集中状態でよかった。
 これで僕がどれだけ痛みでみっともなく転がり回っても、気を逸らさないですむ。

 ……恥ずかしい姿も見られなくてすむしね。

「ガルゥ……、ガッ!?」
「ぎっ、がっ、ぐぅぅぅ」

 狼型モンスターへの呪いが時間切れで解けたと同時に、再び『絶対静止アブソル・ゼロ』で呪う。

 今回僕が取った作戦はいたって単純。

 エマの上級呪文の詠唱が終わるまで『絶対静止』で狼型モンスターの動きを止め続けるってものだ。

っ、ぐっぅぅぅ……。はぁ、はぁ……、さぁ、我慢比べをはじめようか!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...