追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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17話 耐久

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「『絶対静止アブソル・ゼロ』!」
「ガルアッ!?」
「うっ、ぐっうううああああああ!!!!」

 三度目の『絶対静止』を発動し、狼型モンスターの動きを止める。
 そして、僕は呪いの代償で全身に強烈な痛みが駆け抜ける。

 痛い……辛い……苦しい……。
 あまりの痛さに視界がゆがみ、その場に倒れ込みそうになる。

 僕はなんとかそれを踏みとどまり、体勢を立て直す。

『絶対静止』で狼型モンスターの動きは約三秒停止できる。
 そして、エマが上級魔法を発動させるのに必要な詠唱時間は六十秒。

 つまり、単純計算で二十回はこの痛みに耐え続けなければいけない計算になる。
 実際は呪いと呪いの繋ぎの時間や敵の挙動を開始する隙間の時間もあるから、二十回も発動する必要はないけど、それでも十数回は『絶対静止』を発動させなければならない。

 ……痛みで僕、ショック死するんじゃないか?

 だけど、しょうがない。
 エマはこんな僕のことを信じてくれて、今も詠唱を続けている。

 エマは極度の集中状態で魔力を練り続け詠唱をしている。
 多分、今のエマに僕や狼型の声や姿は届いていないだろう。
 つまり、完全な無防備状態ってことだ。

 そんな状態で狼型モンスターからの攻撃を受けたらエマは瀕死の重症を負うのは間違いない。

 だから、僕がエマを守らないと!

「はぁ……はぁ……『絶対アブソル……静止ゼロ』!」
「ガッ!?」
「づっ、がっ……ぐぅぅぅぅ、おぇっっっ」

 あまりの痛さに嘔吐してしまう。
 さっきも吐いたからもう胃液しか出ないけどね。
 ……エマに汚いところを見られなくて安心したよ。

 頭が割れそうで、関節も引きちぎれそうだ。
 それに視界もチカチカしてきた。

 だけど、狼型モンスターからは視界を絶対に外さない。

 ……あぁ、自分の力不足に情けなくなってくる。
 もっと優秀な冒険者だったらもっと色々な手段があるだろうになぁ。

 もし、狼型モンスターに遠距離攻撃の手段がなければ、『暗闇の幕劇ブラックカーテン』や『酔朧之天ドランカード』といった呪いを使って時間稼ぎができただろう。
 だけど、コイツは炎の息吹ブレスを使える。

 もし、『絶対静止』以外の呪いを使ったとしても、闇雲に息吹ブレスを放たれたエマを守れなくなってしまう。
遅延行為スロウ』を使おうとも考えたけど、このレベルの敵だと、大して動きを遅らせることもできないと判断した。

 結局、僕に残った手段は身を削ってでも『絶対静止アブソル・ゼロ』を発動し続けるものしか残っていなんだよね……。

 はぁ……そろそろ三秒経つな。

「『アブ……』」
「ギャウッ」

 ……もう呪い名すら言えなかった。
 吐くほど痛いけど、もう胃液すら出ない。

 極度の痛みに意識を失いそうになるけど、ギリギリのところで意識をとどめ続ける。

 もう碌に思考もできない。
 ただ、狼型モンスターが動きだす素振そぶりを見せたら反射的に呪いをかけるだけに専念する。

 ◇◆◇◆◇

 ……もう何秒経ったのだろう?

 三十秒か、六十秒か、それともまだ十秒くらいだろうか。
 もう何回呪いを使ったのか記憶もない。

 指一本すら痛みで動かない
 視界は既に失いかけているが唯一、狼型モンスターだけを捉え続けている。


 あぁ、そろそろまた呪いをかけないと。

 ……あれ?
 そういえば、なんで僕はコイツに向かって呪いをかけつづけてるんだろう。

 思い出せないけど、こんなに辛い思いをしながらでもやり続けている事なんだからきっと大事なことなんだろう。

「ありがとう、ノロワ。この戦い……アタシ達の勝ちよ」

 頭がボンヤリしながらもまるで義務のように呪いをかけようとすると、肩に温かい手が添えられる。

 ……ああ、なんで忘れていたんだろう。
 僕は仲間エマのために戦っていたんだった。

 真っ白な世界で今にも泣き出しそうなエマが心配そうな顔で僕を見つめる。

「エ……マ……」
「喋らなくていいわよ。今は休んで」

 エマからの『休め』という言葉で、糸が切れたように力が抜けエマにもたれかかってしまう。
 ここにエマがいるってことは、どうやら僕はやり遂げたようだ。

「本っ当にバカなんだから……。無茶しすぎなのよ、バカノロワ」

 ははっ、ひどいなぁ。
 誰のためにここまで頑張ったと思ってるんだか。

 そんな軽口を叩く体力ももうないようだ。

「後はアタシに任せない」

 ……うん、頼んだよ。
 口に出せない代わりに、最後の力を振り絞り親指や立てる。

 本当なら今すぐにでも意識を手放し、この場でぶっ倒れたい。
 だけど、この戦いの結末を見届けるため、飛びそうな意識をなんとかこらえる。

「さあ、待たせたわね犬公わんこう。選手交代よ!」

 エマがまるで僕を守るように、僕の前に立つ。
 全く……頼もしいね。

 だけど、狼型モンスターの視点はエマじゃなく、その更に上に向いている。
 そういえば、さっきからなんでアイツは僕たちを襲ってこないんだ?

 もう『絶対静止アブソル・ゼロ』で呪っていないんだから自由に動けるはずなのに。

 その答えは少しづつ回復してきた視界が教えてくれた。
 ……な、なんだこれ?

「炎超級魔法……『炎獅子王の憤撃レオ・インパクト』」

 エマの上空にはこの空間を覆い尽くすほど巨大な炎の獅子が現れていて、狼型モンスターを見下ろしていた。
 それは、本来巨大なはずの狼型モンスターがまるで子犬に見えるほどだった。

 ……完全に把握した。
 狼型モンスターは攻撃しなかったんじゃない。
 ビビって出来なかったんだ。

 既にエマは魔法を放っていた後だった訳ね……。

 それにしても上級魔法じゃなくて、その更に上、超級魔法か。

 本来ならAランク冒険者の魔法使いが複数人でやっと発動できるほどの魔法。
 それをひとりで扱うだなんて、どれだけ桁外れの魔力量なんだよ……。

「いきなさい、炎獅子王レオ! そいつを……ぶっ潰しなさい!!」

 狼型モンスターは反射的にこの場から逃げようとするけど……もう遅い。
 エマの指示に呼応するように炎の獅子は狼型モンスター目掛けて燃え盛った腕を振り下ろす。

「グッ……ギャオオオォォォォンンンンン」

 轟音と熱風が空間を埋め尽くされ、狼型モンスターは自身の断末魔と共に炎獅子の腕に潰され、燃やされていく。

 ……ははっ、凄すぎるでしょ。
 本当に一撃なんだもんな。

 まさに消し炭すら残さないほどの超火力だった。

 そして、決着を見届けたとこで僕の集中の糸がプツンと切れる。

「ノ……ア! ノロ……!!」

 消えいく意識の中でエマの声が聞こえてくる。
 ……最後まで心配かけてごめんね、エマ。

 謝罪の言葉を口にできずに、僕はゆっくりと意識を失っていく。
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