24 / 44
22話 提案
しおりを挟む「うううう、酷い目にあった……」
飲み会の翌日、エマと約束していたためギルドの集会所に来たけど、まだ身体の節々が痛む。
朝になり、僕は粉々になった机の上で目を覚ました。
酒場はまるで地獄絵図になっており、机や椅子など、ほとんどが原型をなしていなかった。
『悪餓鬼』の連中を含め、当時店にいたほとんどの客がどうやら巻き込まれたようだ。
店内にはまだ沢山の人物が気を失っている。
……まさに、災害のような暴れっぷりの女の子だったなぁ……。
ここは冒険者ギルドから近い酒場で、血の気の多い輩も多く、常にケンカは絶えない場所だけど、ここまで酷い惨状は初めてだ。
……隅っこの方で酒場のマスターが膝を抱えて泣いているのは見ないフリをしておこう。
そりゃあ一晩で自分の店が破壊されたら泣きもするよね。
僕は昨日の飲み代をマスターの近くにそっと置き、そのまま店から立ち去ることにした。
時計をみると、エマと約束していた時間が迫っていたので、着替えだけをさっと済ませて、すぐに集会所に向かう。
「おはよう、ノロワ……って、なんでそんなにボロボロなのよ!?」
エマが約束の時間ピッタリに来るなり、僕の格好を見て驚く。
そりゃあ一晩明けて、パーティーメンバーが全身傷だらけになってたらこんなリアクションになるよね。
「いやー、実は昨日災害みたいなものに巻き込まれてさ……」
「……ちょっと意味が分からないわ。アタシが帰った後、何があったのよ……」
「あははは……。まあ、そんなに気にしないで。大したことじゃないから」
ナンパされていた女の子が、たった一人でBランクパーティーを含めて、店内のあらゆる物や人を蹂躙し尽くしたなんていっても意味不明だろうし、僕は早々に説明するのを諦める。
「それよりエマは元気そうだね。あれだけ酔ってたから二日酔いにでもなってると思ったのに」
「ロゼに家まで送ってもらった後、軽い回復魔法をかけてくれたからね。おかげで体調は万全よ!」
ロゼさんって回復魔法なんて使えたんだ!
今日会ったら、僕も回復してもらえないかなー……。
「それなら良かったよ。じゃあ、今日行くクエストを決めようか」
「そうね。クエストボートを見にいきましょ!」
クエストボードとは、クエストの依頼書が貼り付けられた掲示板だ。
ギルドからクエストを斡旋されたり、依頼主から直接依頼されることもあるけど、基本的には冒険者はこのクエストボードから自分にあったクエストを選ぶことになっている。
今まではEランクのクエストしか受けられなかったけど、僕たち『灰狼』は昨日からDランクパーティーに昇格したから更に上のクエストを受けることが出来るようになった。
クエストボードの前に着き、何か良いクエストがないか探してみる。
「うーん、どれがいいかなぁ?」
「ねえ、ノロワ。今日はこれなんてどう?」
沢山ある依頼書を眺めていると、エマはもう目ぼしいクエストを見つけたのか、一枚の依頼書を僕に見せてくる。
昨日、エマはダンジャンに挑戦したいって言ってたから、それに関わるクエストかなぁ?
僕はエマの持ってきた依頼書の内容を確認する。
「……これって!?」
依頼書に書かれていた内容は『ゴブリン討伐』で、クエストの難易度はEランクだ。
近隣の村でゴブリンの目撃情報が多発しているから討伐をギルドに依頼したらしい。
Eランクのクエストの中では上位にあたる難易度と報酬だけど、まさかエマがEランクのクエストを行こうと提案するとは思わなかった。
「昨日はあんなにダンジョンに行きたがっていたのに、このクエストでいいの?」
「だって今日のノロワ、ボロボロじゃない。別にダンジョン攻略なんていつでも行けるんだし、今日はこれくらいのクエストで肩慣らしでもしておきましょう」
……まさか、僕の心配をしてくれていただなんて……。
嬉しいと思う反面、遠慮させてしまった申し訳なくなってしまう。
僕は今一度この依頼書内容をよく確認する。
確かに体はしんどいけど、Dランクのクエストくらいならなんとかなると思う。
だけど、このクエスト自体は決して軽んじていいものではない。
ゴブリンは個体では最弱に近いモンスターだが、群れで襲われると脅威にもなるし、この先、村を襲撃しないとも限らない。
例え冒険者のランクが上がっても慢心せずに、こういうクエストを受けて事前に被害を減らすのも冒険者としての責務だよね。
「……分かった。じゃあ、今日はこのクエストを受けようか」
『灰狼』になって初めてのダンジャン攻略は次回に持ち越しだね。
僕は依頼書をギルドの受付に持って行きクエストを受注するための手続きに向かう。
ロゼさんがいれば手続きが楽だけど……。
何人かいる受付嬢からロゼさんを探すと、冒険者を対応しているロゼさんを見つける。
他の人でも手続きはできるけど、昨日エマがお世話になったお礼も言いたいし、後ろで待ってようかな。
僕は冒険者の後ろに立って順番待ちをしていると……。
「そこを何とかならないだろうか?」
「そう言われましても……」
話の内容までは分からないけど、どうやらロゼさんと冒険者が揉めているようだ。
……大丈夫かな?
「あっ、ノロワ君。おはようございます!」
心配をしていたら、ロゼさんが僕に気がつき声をかけてくる。
「おはようございます、ロゼさん。……ところで大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。こちらは、私が担当している冒険者の一人で……」
「私はカリンという。職業は『剣士』だ」
腰に剣を携えた、カリンと名乗る女性が挨拶をしてくる。
涼やかな声をしており、思わず背筋を伸ばしてしまった。
カリンは銀髪ながら、光が当たるとわずかに青みがかった綺麗な長髪を後ろで束にしている。
目も髪色と同様な蒼銀で、凛々しい目つきをしている。
背の丈は僕とほとんど同じくらいだろうか。
だけど、カリンのもっとも特徴的な部分はその顔の良さだろう。
エマを美少女とするなら、カリンは美女に分類されるだろう。
こんな美人、初めて見た……はずなのに、何故だか既視感を覚える。
……どこかで会ったことあったかなぁ……。
「どうも、ノロワっていいます。職業は『呪詛師』です」
「『呪詛師』……聞いたことがないな」
「ははっ……、まあ、マイナーな職業ですからね。……それより、僕たちどこかで会ったことありませんか?」
「……すまない、ちょっと記憶にないな」
「ですよね……」
カリンが確認のために僕のことをじっと見るが心当たりはなかったようだ。
うーん……、でも、初対面の気はしないんだよなぁ……。
これほど整った顔をしているから、僕がどこかで一方的にカリンを見て、無意識に記憶に残っているだけなのかもしれない。
だけど、何でかは分からないが、どこかで衝撃的な出会いをしているようの気がするんだよね。
……あー、ダメだ!
思い出せない!!
「そうだっ! いい事を思いつきました!!」
僕が悶々としていると、ロゼさんが嬉しそうに声を出す。
「カリンはノロワ君の『灰狼』に一時加入しませんか?」
「「……え?」」
ロゼさんからの思いがけない提案に、思わずカリンと一緒に驚きの声を出してしまった。
21
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~
eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」
王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。
彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。
失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。
しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる