25 / 44
23話 一時
しおりを挟む「……ということで、今日一緒にクエストを行う事になったカリンです」
「カリンという。よろしく頼む!」
「色々と待ちなさいよ」
カリンをエマに紹介するなり、エマは混乱したように頭を押さえる。
まあ、エマからしたら、いきなりの急展開に困惑するのも分かる。
だって、パーティーメンバーがクエストの受注に行って、帰ってきたらなぜな新しい仲間を連れてきたんだもんね。
しかも、昨日の話し合いで、新しい仲間はすぐに探す必要はないって方向性で決まっていたのにだ。
「カリンはちょっとそこで待っててもらっていい? ……ノロワ、顔貸しなさい」
「……はい」
僕はエマに襟を掴まれて少し離れたところまで引っ張られる。
「どういう事なのよ!? ちゃんと説明しなさい」
「いや、だからさっきも言ったけど、カリンはロゼさんからの紹介で……」
「その経緯を詳しく説明しなさいって言ってるのよ!!」
経緯って言われてもなぁ……。
僕はカリンをパーティーに一時加入させるまでの経緯をあらためてエマに説明する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「カリンはノロワ君の『灰狼』に一時加入しませんか?」
「「……え?」
ロゼさんの提案に、僕とカリンは同じリアクションをとってしまう。
一時加入というのは、文字通り、パーティーに冒険者が一時的に加入する事を意味する。
高難易度のクエストに挑む際の強力な助っ人や、足りない戦力の一時的な補助。
他にも、パーティーに正式加入するための見極めの際に使用される制度だ。
「えっと……どういう事ですか?」
いまいち状況が理解できず、ロゼさんに質問をする。
さっき、ロゼさんとカリンが揉めていた事と関係するのだろうか?
「あっ、説明不足ですいませんでした。実は、カリンは前に所属していたパーティーを抜けてフリーなんです。それに次のパーティー先もまだ未定の状態でして」
……へぇ。
僕の『呪詛師』みたいなマイナー職業ならまだしも、カリンの王道職業の『剣士』なら、すぐに次のパーティーも見つかりそうなのにな。
「それで、カリンはソロでクエストを受けたいって言ってきたのですが、ギルドとしてはカリンをソロでクエストに向かわせるのは許可できなくて……」
「なるほど……」
何となく話の筋が見えてきたぞ。
ソロでクエストを受注するにはギルドからの許可が必要になってくる。
これは冒険者の命を守ると共に、クエストの成功率を高めるための措置でもある。
そもそもクエストの難易度は複数人のパーティーで挑む事を前提に決められている。
ソロだと戦闘、探索、支援、回復……一人でやる事が多く、簡単なクエストでさえ難易度が跳ね上がる。
そしてクエストの失敗は結果ギルドの信用を下げる事になる。
そのため、冒険者がクエストをソロで受注するためには、ギルドがその冒険者の実績と能力を認めないとまず許可がおりない。
「ノロワ君とエマのパーティーは、ランクこそまだ低いですけど、私が自信を持ってオススメできるパーティーですし、カリンの事を安心して任せれると思ったんです。……どうでしょうか?」
伺うようにロゼさんがお願いをしてくるけど、ロゼさんの頼みを断るって選択肢は僕にはないんだよね。
それに、僕達『灰狼』は深刻な前衛不足だし、職業が『剣士』のカリンがパーティーに加入してくれるなら渡りに船だ。
エマの確認もとった方がいいんだろうけど……まあ、ロゼさんからの頼みって言えば断らないだろう。
「僕は構わないけど……カリンさんはどうですか? 僕のパーティーに入ることになっても構いませんか?」
「私にはタメ口でいいし、呼び方もカリンでいい。私としてもパーティーに入れてもらえるのは助かる。お世話になってもいいかい?」
「うん。一応仲間にもカリンの一時加入の確認はとるけど、多分反対はしないと思うし……それじゃあ、よろしくね、カリン!」
こうして、僕はカリンを『灰狼』に一時加入として受け入れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……という事があったんですよ」
「……そう。たしかにロゼの頼みなら断れないわよね。でも……、うーん……」
先程のやり取りをエマに詳しく教えたけど、エマは理解はしたけど納得はしていないような煮え切らない態度をとる。
そりゃあパーティーメンバーでもあるエマを置いて話を進めたのは悪かったと思うけど、カリンはあくまでも一時加入だし、それにカリンの参戦は僕たち『灰狼』にとっても悪い事じゃない。
待望の前衛職がパーティーに加入したことで、僕たちの戦略の幅が大きく上がるしね。
「エマはそんなにカリンの加入に反対なの?」
エマがどうしても嫌だっていうなら、カリンとロゼさんには悪いけどこの話は断らせてもらおう。
「そういう事じゃないのよ。戦力が増えるのはいい事だしね! ただ、その……何といえばいいか……。ノロワが連れてきたのが予想以上の美人だったというか……アタシとはタイプが違うから、ノロワはそういう方が好みなのかなというか……」
「……どういう事?」
そりゃあカリンは凄い美人だとは思うけど、それが何か関係するのだろうか?
それにタイプって……エマは『魔法使い』だし、前衛職のカリンとはタイプが違うに決まってるじゃないか。
それに僕の好みって意味もよく分からない。
「別に僕は前衛職とか後衛職に好みとかないよ?」
「そういう意味じゃないんだけど……。はぁー……、分かった、カリンの一時加入を認めるわ。……ただし、アタシたちと相性が悪いと思ったら次のクエストからは抜けてもらうわよ!」
「うん、了解!」
何はともあれ、エマからの許可も得た!
『剣士』カリンに『魔法使い』エマ。
そして、『呪詛師』の僕による三人パーティーが結成したわけだ。
とにかく、今回のゴブリン討伐、頑張るぞ!!
21
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる