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24話 大鯨
しおりを挟む「そういえば、なんでカリンはソロでクエストに行こうとしたのよ?」
ゴブリン討伐のクエストを受注した僕たちは依頼主の村に向かっている道中、エマはカリンに質問をする。
……それは僕もちょっと気になっていた。
ロゼさんからはカリンは前のパーティーを抜けたと聞いていたけど、『剣士』という職業持ちのカリンなら直ぐに次のパーティーくらい見つかりそうだけど。
「実は私がパーティーを抜けたのは昨日でな。それなのに、急遽お金が入り用になってしまって……。パーティーを探す時間がなかったんだ」
……なるほど。
それで直ぐにでもクエストに出て金を稼ぎたかった訳か。
「でも、それならEランククエストじゃ報酬は心許ないんじゃない?」
「そうだが、それでもクエストに行けないよりは幾分もマシだしな。それに、このクエストもEランクの中じゃ報酬はいい方だし、不満はないよ」
カリンがそう言ってくれるなら良かったよ。
実際ゴブリン退治の報酬はDランクの下位クエストよりは多くもらえるしね。
……それにしても、そんなに急にお金が必要になるって、何があったんだろう?
気になるけど、なんとなくデリケートな話題な気がしたから、これ以上その件について触れるのはやめておこう。
「ふーん。ところで、カリンが前にいたパーティーのランクってどれくらいだったの?」
「私が前にいたパーティーは『深淵の大鯨』という名前だ。Bランクに昇格するタイミングで方向性の違いで私は抜けたがな」
『深淵の大鯨』だって!?
若いながらも実力者が集まったパーティーだったはずだ。
確か、Aランク級のモンスターに遭遇したけど、誰一人欠けることなくそのモンスターを討伐した事で有名になり、Aランクに上がるのも時間の問題って噂されているパーティーだよね……。
そんなパーティーに所属していたってことは、もしかしてカリンって相当優秀な『剣士』なんじゃないだろうか。
「エマとノロワも以前は違うパーティーにいたんだろ? どんなパーティーだったんだ?」
「……アタシは色々所属していたけど、最高ランクはCランクだったわよ」
「僕は『紅蓮の不死鳥』ってパーティーにいたよ。……まあ、そこでは役立たずって言われて追放されちゃったんだけどね」
「『紅蓮の不死鳥』だって!? 『深淵の大鯨』よりも有名なパーティーじゃないか。 ……そういえば、そのパーティーから追放された冒険者がいたってギルドや酒場で噂になっていたが、それがノロワだったのか」
「あははは……お恥ずかしい」
冒険者にとって、所属していたパーティーに追放されることほど不名誉なことはない。
もしかしたら、カリンもこの話を聞いて僕の事を軽蔑したかもしれないな……。
「ふん。そんなの『紅蓮の不死鳥』の奴らがノロワを見る目がなかっただけじゃない。……カリンもそんなくだらない事でノロワの事を見下したら許さないわよ!」
エマが僕のことを庇ってくれるけど、僕としては、追放されたおかげでこんなに最高の仲間とパーティーを組めたから、結果的には良かったんだけどね。
エマは何回も追放されているから、追放された冒険者の辛さも僕以上に知っているから、こうして庇ってくれるんだろうなぁ。
「そんな事はしないさ。それにノロワの実力はロゼからお墨付きを貰っているから心配もしていないしな」
「……分かってればいいのよ」
「……まあ、私には追放者を見下したりする資格なんて無いがな……」
「えっ? どういう意味?」
「すまん、こっちの話だ。気にしないでくれ」
これ以上の詮索を嫌ったのか、カリンはこの話を切り上げる。
うーん、でもカリンが『深淵の大鯨』にいたのなら、ひとつ疑問が残る。
カリンの実績があるなら、ギルドからソロでクエストに挑む許可くらい降りてもおかしくないのにな……。
少なくとも、こんなEランクのクエストくらいなら『剣士』でもあるカリンなら余裕だろう。
……まあ、戦闘能力皆無の僕だと絶対無理だけどね!
それに未だにカリンに対して引っ掛かっている点もある。
……やっぱり、どこかでカリンとは会ってると思うんだよなー……。
うーん……ダメだ、やっぱり思い出せない。
何となくだけど、最近会ったような気がしてならないんだよね。
微かな記憶だから、正面で会話とかはしてないと思うんだけど、何故だか、カリンを見ていると強烈な印象みたいなものが残ってるんだよなぁー……。
これだけの美人なら中々忘れようと思っても忘れられないと思うんだけどね。
これ以上カリンに『本当に僕と出会った事ない?』ってしつこく聞いたら、まるでタチの悪いストーカーみたいに思われてしまうし。
でも、まるで喉に何かが引っ掛かってるみたいで気持ち悪いし、何とかして思い出せないだろうか。
カリンやエマと会話をしながらも、僕は頭の中で必死に思い出そうと試みる……けど、結局村に着くまでカリンの事を思い出すことはできなかった。
やっぱり僕の気のせいだったのだろうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕たちは村に着くと、依頼主である村長からゴブリンを見つけた詳しい場所を確認した。
そこで村から近い山奥にゴブリンがいるという情報を得た僕たちは、すぐに山を登りゴブリンを探す。
「……見つけた。ゴブリンの群れだ」
思ったより直ぐにゴブリンを見つける事ができた。
カリンは声をひそめながら、僕たちの目的であるゴブリンの群れを指差す。
ゴブリンの数は……ここから数えた限りだと十匹ってところか。
これくらいなら、エマの攻撃魔法で一掃できそうだけど、待望の前衛職がパーティーに一時的とはいえ加入してくれたんだ。
折角だし、ここはカリンに活躍してもらおう。
ついでにカリンの腕前も見せてもらいたいしね。
「僕とエマが後方から支援するから、カリンは群れに向かって特攻をかけてもらっていい?」
「……私が一人で仕掛けるのか?」
「うん。僕もエマも後衛職だしね。『深淵の大鯨』で前衛をしていたカリンならあれくらいの敵は余裕だよね?」
Bランクのパーティーに所属していた『剣士』ならゴブリンの十や二十は敵にもならないだろう。
まあ、僕も『呪い』で支援するし、エマの魔法もあるから万が一にも敗北はないと思うけど……。
「っ……! あっ、ああ、任せておけ!!」
カリンは引き攣った笑顔で浮かべるけど……緊張してるのかな?
でも戦闘の前に緊張することは決して悪いことじゃない。
雑魚だと思って慢心するよりも何倍も良い。
さぁ、カリンのお手並みを拝見させてもらおうか!
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