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【十三】ロケに大スター!

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 陰陽師おんみょうじ安甲晴美あきのはるみは続ける。

「最悪の場合、セリエさまとそこの天女さま」
「そして陰陽師の私の出番になりますが」

「その前に、最強女子高生キャビネットだからが出来ることが沢山あるのよ」
「大変だけどみなさんで考えて欲しい」

「たとえば、潜在意識の育み方とか」
「見ちゃいけないことや言霊などを含めてね」

 地球の守護神アセリアの神使の黒猫のセリエが現れた。

「陰陽師よ、神使のセリエにご用かにゃ」
「セリエさま、大変失礼をしました」

「万が一の場合にゃ」
「はい、左様でございます」

「永畑は、まだまだ鎮静化していないにゃ」
「鎮静化しても、長期間は接近は危ないだろうにゃ」

「大江戸という町は、この国の特異点なのだにゃ」
「その場所は、発展と破壊を繰り返すエリアなのだにゃ」

「今回は、破壊のインターバルに突入しているにゃ」
「最悪、どのくらいの大きな口になるかわからないにゃ」

「陰陽師は地縛霊を鎮めてにゃ」
「康代たちは、国民の不安と恐怖を軽減させてプラスにリセットさせることにゃ」

『物理的側面に加えて精神的側面のサポートですね』
「そうじゃ、学園という環境は国家のミニチュア模型のような環境にゃ」

「康代たちの政策がうまく行ってれば、学園の生徒も幸せじゃにゃ」
「学園の生徒が幸せを感じるような国造りが必要にゃ」

『セリエさま、第二段階ですね』
「そうじゃにゃあ、またにゃあ」

 セリエさまはいつものように消えて光になった。

 豊下秀美と明里光夏は、学園の大きな食堂の入り口でランチの献立表と睨めっこをしている。

「光夏、日替わりにしようか」
「そうだね、そうしましょう」

 遅れて、前畑利恵も合流する。

「もう決まったの」
「日替わり」

「じゃあ、席を確保しよう」
「後から、徳田さん、織畑さん、天宮さんも来るから六名テーブルね」

「八名テーブルでもいいよね」
「空いていれば、ラッキーでござる」

天宮、徳田、織畑も間に合った。

 六人は、久しぶりに学食で合流したのだ。

 神聖学園の学食は二ヶ所あって一階と二階に中央の階段から分かれている。
今日は、生徒会室に近い二階の食堂を選んでいた。
六名は、生徒たちの満足度アンケートを話し合った。

『アンケートは、多数決方式は取らないことにしましょう』
「生データ共有方式にしませんか」

「良いでござる」
「多数決には落とし穴があって外圧に弱いですからね」
利恵が言った。

『確かに多数決の暴力装置が悪政を支えていましたわ』
『選挙廃止も偏向防止と不正防止の意味合いが強いの』

『全部の意見を拾うのでなくて』
『倫理的な正当性に光を当てるのが重要じゃ無いかしら』

「康代の言う通りでござる」
「と言うことは、これ難しい仕事かも知れ無い」
信美が口を開いた。

『だから文殊の知恵が必要になるのよ』
『でも、みなさんは能力者なので、どうかしら』

「一般のスケールは通用しないでござる」
静女がフォローしている。

『ところで、さっきから外が騒しくありませんか』
「講堂で宝田劇団のスターが撮影しているそうよ」

生徒会メンバーの情報だった。

『時代が変わっても変わらない物があるのね』
「康代さま、秀美が見に行きましょうか」

「敵陣視察ということで」
「秀美、それ違うような気がするでござるよ」

「秀美が見たいのでしょう」
「信美さんまで、ご冗談でしょうか?」

「十分、本気ですよ」
「秀美、見に行こうか」

「利恵は、いつも優しいね」
「秀美、私も行くよ」

「光夏、ありがとうね」
「じゃあ、みんなで偵察に行くでござるか」

『そうね、六人全員で行きましょう』
「まるで、政府視察でござるな」

『静女ったら、いつも笑わせる』
「笑いは、免疫力をアップさせるバリアでござるよ」


 体育館に隣接する講堂の外には神聖女学園の中高の生徒達が居溢(いこぼ)れている。
 
 康代たちは、神使のセリエから授かった【透明化スキル】で接近することにした。
意識されず接近出来るが注意しないと接触してしまう。

 透明と言っても透明になる訳ではない。
相手との間に透明化のバリアを纏うと説明すれば分かり易いかも知れない。

 康代たちは、なるたけ会話をしないで覗くことにした。

グラマーな体つきの女性が声を上げた。

「シーン一三八!本番!」
「監督、スタンバイオッケーです」

「AD始めて!」
「三、ニ、一、ハイ」

スタートの合図のカチンコが鳴って空気が変わる。

(AD、アシスタントディレクターの略)

 宝田劇団の大スター大河原百合が高校の古典の教科書を片手に演技を始める。

台詞が始まった。

『かくあまたの人を・・・・・・』

「カット!」
「カット!」

「大河原さん、すみません、雑音が入ってしまいました」
「見学のみなさん、音を出さないでくださいね」

「大河原さん、もう一度お願いします」

「監督!本番、オッケーです」
「シーン一三八!本番!」
「三、ニ、一、ハイ」

『かくあまたの人を・・・・・・』
『・・・・・・心にとどまりはべりぬる』

「カット!」
「大河原さん、お疲れ様です」

「本日の大河原さんのシーンは、ここまでです」

「シーン、三九!テスト準備出来ました」
「赤城麗華さん、お願いします」

 赤城さんが、登場して、女子生徒達から大歓声が上がった。

 徳田康代は、心の中で呟いた。

「宝田劇団の演技を多くの国民と共有するのもいいかも知れない・・・・・・」
「国民の喜びを拡大する秘策はこれだ」
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