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【一二七】 セリエさま、静女、お待たせしました!

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 「明里さん、この左側のエレベーターと右側のエレベーターの操作方法の違いは・・・・・・。
ーー よく分かりませんが、もしかして」

 門田菫恋かどたすみれが言葉を切ると明里光夏あかりみかが答えた。

「門田さんは、勘が鋭いわね。
ーー そうなのよ。
ーー このエレベーターは、直行エレベーターなのよ。
ーー つまり、でね」

「オールフリーってなんですか?」

「つまり、乗り換えなし、セキュリティチェックなし」

「じゃあ、危ないじゃないですか?」

「門田さん、このエレベーターは、誰でも動かせるわけじゃありませんよ」

「じゃあ、エレベーターがセキュリティの役割をしているんですね」

「はい、正解です」



 明里光夏たちがリニア式エレベーターの中で会話を楽しんでいた時だった。

 地震学者の田沼光博士と若宮助手は、いつものルートで神聖神社に参拝していた。

 田沼と若宮は、問題になっている黒革のスカートスーツに黒タイツ、黒のショートブーツ、黒い野球帽の黒装束くろしょうぞく姿だった。
 遠目には、二人が地震研究者の先生には見えない出で立ちだ。

「田沼先生、おはようございます」

「あっ、安甲あきの先生、おはようございます」

「今日も、お二人でお参りですか」

「ええ、目に見えない世界を知って覚醒してしまいました」

「そうね。
ーー この神社も昔は、安甲あきの神社と呼ばれていた時代があったのよ。
ーー 大昔の先祖、安甲晴明あきのせいめいの分社として建てられたと聞いているわ」

「そうだったんですか。
ーー ここに来ると不思議に落ち着くので、不思議と思っていました」

「この話は、内緒よ。
ーー みんな、ただの神社と思っているから」

「分かりました。
ーー ところで、安甲先生、これからどうされますか」

「そうね、寒いから、お隣のショッピングセンターのカフェに寄ろうと思っていました」

「じゃあ、私たちも、お供して宜しいですか」

「田沼先生とも、色々話してみたいので、ご一緒しましょう」

 安甲晴美は、黒の革ジャンの下からピンク色のシャツのえりが見えていた。
黒のカラージーンズに黒のパンプスを履いていた。



 黒ずくめの三人は、ショッピングセンターの食品コーナーに寄ってからカフェに入った。

「田沼先生、不躾ですが、地震学者になって大変じゃありませんか」

「そうですね。
ーー 大地震や大噴火が一度ひとたび起こると、大惨事に繋がる研究です。
ーー ですから、良くも悪くもストレスが残ります」

「そんな大変な研究を続けるパワーは何処どこから湧くんですか」

「はい、アトランティスの前世の無意識だけでなく、
ーー 実は、昔、ご先祖が震災に遭った話を親から聞かされていました。
ーー そんな折、私も大きな地震で、怖い思いをしたことがありました」

「覚えているわ。その大地震」

「それで、地震予知が出来ないかを考え、
ーー 気付いたら地震研究に埋没していました。
ーー 事前に地震が分かれば、驚いて怪我をしませんでしょう」

 田沼光は、目をキラキラさせながら、安甲晴美あきのはるみを見つめながら話した。

「田沼先生、その地震予知の精度は、どのくらいなんですか」

「はい、昔と比べれば、良くなっていますが、
ーー まだまだ、不完全なところもあります」

「地震研究って、大変ですね。
ーー 当たるか外れるかしか見ない人が大半ですね」

「そうなんです。
ーー 地震科学を占いや予言レベルで考える人が多いですね。
ーー あっ安甲先生の陰陽道おんみょうどうのことではありません」

「陰陽道も、ある意味、昔の科学ですが予言はしませんわ」

「田沼先生と若宮先生は、何に着目していますか」

「はい、月や惑星から地球が受ける引力です」

「先生、宇宙ってロマンがありますね」

「ロマンだけじゃないんです。
ーー 調べて行く内に幾つもの偶然が見つかり
ーー 透明なガラスのパズルのように繋がります」

「それは、どういうことですか?」

 田沼光に代わって若宮咲苗助手が安甲晴美に説明を始めた。

「昔、あるアマチュアの地震研究者が統計データを見ていて気付いたのです。
ーー その人は、月のサイクルと距離に着目していたそうです。
ーー ある時、大地震や大噴火にの関係を整理していたそうです。
ーー そしたら、深い地震の発生と月の動きに共通点を発見して」

田沼が若宮の話を引き継ぐ。
「その人は、月の距離関係から、深い地震と大地震や大噴火のバイオリズムを見つけたそうです。
ーー 次々に地震や噴火の発生日を的中させたそうです。
ーー ですが、その時代の地震利権が、古い理論にこだわって
ーー その研究は、最近までお蔵入りしていたそうなんですね」



「田沼先生、面白いお話をありがとうございます。
ーー ところで、徳田大統領とはお会いしていますか」

「いいえ、先日の事件以来、お会いしていませんが」

「田沼先生、事件ってなんですか」

「この革のジャケットの販売ルートが、どうも裏組織の仕業だったとか」

「なるほど、分かったわ。
ーー 私も徳田さんに、あとで確認してみるわね」

「安甲先生、この件には、徳田幕府のプロが大統領のサポートに入っています」

「そう、それじゃ、ちょっと様子見してからの方が良さそうね」

「はい、直接聞いていませんが無難かも知れません」

 安甲あきのは、両腕を豊満な胸の前で組み替えながら考えていた。

「安甲先生、コーヒーをオーダーしますか?」
若宮がホログラムディスプレイのオプションをタッチしながら尋ねた。

「若宮さん、もう一杯、頂きましょう」



「康代さん、到着しました」
明里光夏あかりみかが徳田康代大統領に告げた。

 エレベーターが開くと、女子高生姿の神さま見習いセリエと天女天宮静女が立っていた。

「康代殿、遅いでござるよ」

「康代、大丈夫かにゃあ」

『セリエさま、静女、お待たせしました』
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