テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第九章: サバンナ・ハバンナ

第五話

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「ミナミさん、タミさん、少し話があります」

俺はそう切り出した。これに関しては、サバンナより保護者の二人に聞いた方が良いと思ったからだ。

サバンナ本人はアナとカンナたちに任せ、席を外してもらった。ここに残ったのは、俺とアーロン、そしてノアだけだった。

「落ち着いて聞いてください。サバンナさんは、神の子である可能性が非常に高いです」

これを言った時、俺は自分が先生にでもなったような気分だった。そして、ミナミさんとタミさんの表情が少し強張った。

「神の子‥‥‥?」

思ってたより、普通のトーンで聞いて来た。この二人は、サバンナが特別なことに気付いていたのかもしれない。

「はい、サバンナさんのような、特別な能力を持つ人たちのことを、我々は『神の子』と呼んでいます」

「笑わせるね、アンタ!サバンナが特別?そんなことがあるかい。あの娘はおてんばだけど、普通の女の子だよ」

タミさんの笑顔が、少し無理をしているように見えた。それに比べ、ミナミさんは真っ直ぐと俺のことを見ていた。

「サバンナの能力は何なんですか」
ノアに聞かずとも、ミナミさんが今考えていることが俺にも分かった。

嫌なんだ、この人は。本当はサバンナを手離すのが嫌なんだ。でも、俺たちに協力するために、無理をしている。

「まだ確定ではないですが、エレメントではない、人の心の底にある何かを認識出来る能力だと我々は考えています」

「その『何か』が『臭い』ってことなのね」
さっきまで引き締まっていたミナミさんの態度が、しぼんだ風船のように緩んだ。

これは安堵からではなく、彼女の中で何かが繋がったんだろう。今まで見てきたサバンナの不可解な行動を思い出し、俺たちの能力の仮説と繋げて気付いたんだ。サバンナが普通の人間、若しくは天使ではないと。

「はあ」
溜息を付き、ミナミさんが何かを言おうとしたが、タミさんが止めに入った。

「私が話すから、アンタはサバンナの所に行って来な」
そうタミさんが言うと、娘のミナミさんは俯き頷いた。その後、サバンナたちのいる庭へと出て行った。

ミナミさんが出たのを確認すると、深呼吸をし、タミさんが口を開いた。

「私は天使でね。ミナミは半天使なんだ。昔から将来の夢を聞くといつも、『お母さんみたいなお母さんになって、大家族を作るんだ』って言ってくれたんだ。それを聞くたびに私は嬉しかった。でも、ミナミは生まれつき子供が出来ない体質でね、それで旦那にも逃げられたんだ。それでもミナミは明るかった。少し見ただけで分かるだろう?」

「はい、明るくて強い女性に見えます」

「ああ」
老婆は頷き、続けた。

「私の旦那はアンタらみたいに軍人でね、戦死したんだよ。それからずっと、私とミナミで暮らすと思っていたら、ある日、家の前に女の子が倒れていたんだ。それがサバンナさ」

倒れていた。アナは自分が生まれた時のことを覚えていた。サバンナは何らかの理由で生まれた直後に気絶したんだ。だから記憶が無いんだ。

「神からの恵みだと思ったよ。私たちで育てようと決めるのに、そう時間はかからなかったさ。その子に、子供が生まれたら付けようと思ってた名前、『サバンナ』って付けたんだ。最初から大きかったし、サバンナは普通の天使だと思ってたんだが、外に出ると、急にあの娘が言うんだ。『臭い』って。最初は何を言ってるのか分からなかった。エレメントのことを言ってるのかとも思ったが、私たちには『臭い』と言わなかった」

やっぱり、この二人は気付いてたのか。でも、まさかそれが神の子だなんて思わないわな。

「神の子だか何だか知らないけど、あの娘は、サバンナは私たちの大切な家族なんだ。ミナミに出来た、最初の子なんだ。だから、あの子からサバンナを奪わないでくれ‥‥‥」

俺たちは、一旦家を後にすることにした。

『あの子からサバンナを奪わないでくれ』
タミさんの声が、俺の頭でループしていた。

神の子に家族がいる。それも、とても優しそうな人に拾われた。もうサウスエンドだからとか、闇のエレメントが多いからとか、そんなことでその人がどんな人か判断すべきじゃないな。

俺たちだけで、何とか出来るんじゃないか?出来るなら、サバンナをミナミさんたちから離したくない。こんなの、召集と同じじゃないか。

「どうすればいいんだよ‥‥‥」

「悩んでるみたいだね、ハジメ君」
俺が呟くのを見て、アーロンが来た。

「でも、悩む必要なんてないよ。僕たちは彼らを戦に連れて行く訳じゃない。保護するために来てるんだから。ここにいても、サウス軍が来る。そっちの方が、あの二人は悲しむんじゃないかな」

そうだ。その通りだ。俺は何を悩んでたんだろう。

「よし!二人を説得しに行くぞ」
家に入ろうとした瞬間、ノアが止めた。

「敵襲だ」

そうノアが言った。













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