見てるだけはもう終わり!~創造主は地上に降りる~

樹林

文字の大きさ
7 / 63
序章

6

しおりを挟む
「天司桜純です。よろしくお願いします」

ぺこりとお辞儀をする桜純を見て、誰もがポカンと口を開けて固まった。

この学園に来ると言う事は、半神であるかその血を濃く引くという事だけど、その全てが男だったんだ。
しかも、彼女の髪は桃色に銀が重なって輝き、その瞳は1日を表す5色に銀の星が瞬いている。

天司の聖女が薄紅様の子を宿した事、攫おうとする者が後を絶たず、薄紅様が聖女を隠した事も知っていたし、産まれた子供が異世界から戻ったという話も有名だったけど、女の子が産まれていた事は誰も知らなかった。

少し頬を赤らめて挨拶をしてから僕の隣の席に座る時に僕を見て笑った顔の可愛らしさ、机をくっつけて教科書を見せた時の真剣な表情。

きっと誰もが桜純を欲しいと思った。

でも、僕が「見つけた」と言っただけで全員が諦めたよ。
蓮水家の男は、伴侶を「見つける」からね。
その愛は、例え伴侶が先に死んでも消える事はなく、僕がの息が止まる瞬間まで愛し続けるんだ。

帰宅後、すぐに父にそれを伝えた。
大喜びした父は、数時間後には婚約の申し込みをしたけど天司家の答えはNO。

「蓮水家の事情は知っている筈だ」

怒り狂う父を宥め、僕は根気よく行く事にした。
もちろん、定期的に申し込みはしたけどね。
桜純と一番に挨拶をする為に、1時間も早く登校するボクを見た友人達も協力してくれるようになったよ。

桜純はその複雑な生い立ちから、人を簡単に信用する事ができないようだった。
暴力を振るわれていたと知った時は、その相手を殺したくなったし、薄紅様が神界の入り口に招いたと聞いた時は、なぜもっと早く連れて来なかったんだと憤った。

色々あったけど、婚約してからは伴侶として大切にしてきたんだ。

それなのに、僕は夢を見る。

桜純と同じ日から見る悪夢の僕は、桜純を放って別の女性と行動を共にして、愛しそうに女性を見つめるんだ。桜純を見ると時と同じように。


その日、僕は桜純から夢の話を聞いた。
嬉しそうでもあり、悲しそうでもある表情で話す桜純を見て、僕はそんなに向こうが恋しいなら帰ればいいと思ってしまったんだ。

僕は伴侶を捨てようというのか?
それができる僕は、本当に蓮水家の男なのか?
婚約式で行った蓮水家だけの契約はどうなる?

何度、自問自答しても答えは見つからない。

夢に出てくる女性に実際に出会ってしまったら、僕はどうなってしまうんだろう。

こんなに桜純が愛おしいのに、狂ってしまいそうな位に愛しているのに、それなのに僕は今日も夢を見る。

見たくないのに、見てしまうあの悪夢を。

あの女性を得る為に、無駄だと分かっているのにこの手で桜純を殺してしまうあの夢を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

四人の令嬢と公爵と

オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」  ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。  人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが…… 「おはよう。よく眠れたかな」 「お前すごく可愛いな!!」 「花がよく似合うね」 「どうか今日も共に過ごしてほしい」  彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。  一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。 ※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...