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第一章

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深夜12時、私はある山の中にいた。

「主様、ようこそいらっしゃいました」

頭を下げて私を待っていたのは1人のお爺さんだった。
その方の前へと行って肩をポンと叩くと、本来の姿が見えてきたわ。

「七福神にいるわよね?小さい頃に見た事があるわ」

「ほっほっほっ、これは光栄ですなぁ。ワシ如きを存じ上げていただけるとは長い時を過ごして来た甲斐がありましたわ」

顔を上げたお爺さんは、恵比寿様と呼ばれる神だった。柔和な顔は本体と変わらず、でもとてもダンディなお爺さん。
そういえば、3年前におじい様の事をイケオジって思ったわね。恵比寿さんもそんな感じだわ。

「此度は無理なお願いを聞いてくださって、本当にありがとうございます」

「我らはあなた様のご命令であれば何でも叶えてみせましょうぞ」

「そこにいる方達ね。人数的に他の七福神かしら」

チラリと後方を伺うと、イタズラが失敗したかのような苦い顔をした人達が出てきた。

「弁財天、福禄寿、毘沙門天、大黒天、寿老人、布袋尊ね。皆も来てくれてありがとう。福禄寿と寿老人は星ね?見た事があるわ。布袋尊はまたあなたなの?どれだけ化身がいるのよ」

「おや、バレましたかの」

「当たり前でしょ。姿は見た事がないけど、その気配と声はよく覚えているもの」

「しつこく通った甲斐がありましたのう」

「まぁ、それはいいわ。本題に入りましょう。全員に状況と桜純として生きた私を見せるわ」

彼らが私を取り巻くように立つのを確認して、記憶の全てを見せる。こういう事も得意なのよね。

「これはこれは、中々ハードな15年ですね」

「そうでしょう?あら、あなたは面白いわね」

「2つ名と役割がある事でしょうか?」

「ええ、自分で調べたいから頭の中を読むのはやめておくわ」

ウインクをして言うと、毘沙門天は楽しげに笑ってくれた。学生の本分は勉強とは言わないけど、自分で調べるのって楽しいのよね。

「お話中申し訳ありませんが、あなた様を匿ったとされる者に恵比寿殿がなるという事でしょうか?」

「ええ、そうなの。弁財天は不服かしら?」

「不服なのではなく、全員であなた様を匿ったとする方が良いのではと」

「それはどうして?」

「我らは全員、財界の重鎮と呼ばれる立場にございます。1人で子供を見るのは難しいですが、7人いれば如何でしょう?」

「確かにそうね・・・では、恵比寿天が私を見つけ、全員で匿い、住む場所と衣食住、そして知識を与えたという事にしましょうか」

「それで構わんがのう。あなた様はここに居ても良いのかの?」

やっぱり知っていたのね。

この人は侮れないわ・・・。
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