30 / 63
第二章
29
しおりを挟む
先程まで楽しそうに話しをしていた筈の武尊は、エステルさんを見て「君は誰?」と言ったの。
クラス中、いいえ学園中が騒がしくなった。
その内容は、今日は入学式なのにどうして授業をしているのかというものが多く、同級生達や先生はあの日に魅了にかけられた事が分かった。
エステルさんは周囲を見回しながら戸惑う素振りを見せているけれど、その瞳には怒りが灯り「誰がやったのよ」「絶対に許さない」と心の中で罵っているわ。
『魅了は奪ったわ。次は暗黒を探しましょう。お義母様はお義父様と来斗達を探すのよね?』
通信を全員に送ると、お義母様と蒼は頷いた。
お義母様はここから別行動になるけれど、不可視をかけているから大丈夫。3人を見つけたら合図を送ってもらう手筈も整っているわ。
私はエステルさんに追跡をかけてその場を後にする。
『パパ、暗黒の気配はあるのよね?』
『この学園を覆う程に強い気配がな』
『ここにいると思う?』
『ああ、確実にいる』
食堂へと向かっていると、大勢の声が聞こえてきたの。
「エステルという娘はどこだ!」
「あいつは悪神の手先だ、俺達はあいつに操られていたんだ」
「お待ち下さい。学園側も対応を考えていますので」
エステルさんを探す怒鳴り声と、戸惑いながらも彼らを止める教職員の声に、私達は学園中の魅了が解けた事を確認した。
『彼らはホールにいたようね。ではそれ以外という事かしら』
『そうでなければあいつらは出ては来れないだろうな』
蒼も頷いている。
通信を繋ぐ事はできても、蒼やお義母様は返事を返す事はできないの。
半神と人間は無理と言われたけれど、私は最初からできていたのよね。白い世界で会った時にはパパは神になると分かっていたみたい。
「これだけ騒がしければ声を出しても大丈夫だ。但し、小声でだぞ」
「分かりました」
「分かったわ。パパ、気配の濃い場所を見つけたの。エステルさんもそこに向かっているみたいだわ」
「どこだ」
「学園長室ね」
学園長室で何が起こっているかを確かめようとしたけれど、真っ暗で何も分からなかったからちょくせつ行く事になったのだけど、ホールを通った時に知った声が聞こえて来たの。
「武尊!桜純を見なかったか?」
「教室にはいなかったぞ。それより創星は知ってるのか?俺達が───」
私は久しぶりに見る創星を見て固まってしまったの。
何故、このタイミングで現れるの?戸惑いながらも創星から目が離せない私の肩に蒼が手を置いた。
「今は集中しないといけないんだろ?ほら行こう」
「そうね・・・行きましょう」
促されるままに足を進めようとした私の後ろで、創星が「桜純の声がした?桜純、どこにいるんだ」と人混みの中で叫んでいる。
この距離でも私の声を拾う創星に驚きを隠せなかったけれど、私達は2階にある学園長室へと向かった。
クラス中、いいえ学園中が騒がしくなった。
その内容は、今日は入学式なのにどうして授業をしているのかというものが多く、同級生達や先生はあの日に魅了にかけられた事が分かった。
エステルさんは周囲を見回しながら戸惑う素振りを見せているけれど、その瞳には怒りが灯り「誰がやったのよ」「絶対に許さない」と心の中で罵っているわ。
『魅了は奪ったわ。次は暗黒を探しましょう。お義母様はお義父様と来斗達を探すのよね?』
通信を全員に送ると、お義母様と蒼は頷いた。
お義母様はここから別行動になるけれど、不可視をかけているから大丈夫。3人を見つけたら合図を送ってもらう手筈も整っているわ。
私はエステルさんに追跡をかけてその場を後にする。
『パパ、暗黒の気配はあるのよね?』
『この学園を覆う程に強い気配がな』
『ここにいると思う?』
『ああ、確実にいる』
食堂へと向かっていると、大勢の声が聞こえてきたの。
「エステルという娘はどこだ!」
「あいつは悪神の手先だ、俺達はあいつに操られていたんだ」
「お待ち下さい。学園側も対応を考えていますので」
エステルさんを探す怒鳴り声と、戸惑いながらも彼らを止める教職員の声に、私達は学園中の魅了が解けた事を確認した。
『彼らはホールにいたようね。ではそれ以外という事かしら』
『そうでなければあいつらは出ては来れないだろうな』
蒼も頷いている。
通信を繋ぐ事はできても、蒼やお義母様は返事を返す事はできないの。
半神と人間は無理と言われたけれど、私は最初からできていたのよね。白い世界で会った時にはパパは神になると分かっていたみたい。
「これだけ騒がしければ声を出しても大丈夫だ。但し、小声でだぞ」
「分かりました」
「分かったわ。パパ、気配の濃い場所を見つけたの。エステルさんもそこに向かっているみたいだわ」
「どこだ」
「学園長室ね」
学園長室で何が起こっているかを確かめようとしたけれど、真っ暗で何も分からなかったからちょくせつ行く事になったのだけど、ホールを通った時に知った声が聞こえて来たの。
「武尊!桜純を見なかったか?」
「教室にはいなかったぞ。それより創星は知ってるのか?俺達が───」
私は久しぶりに見る創星を見て固まってしまったの。
何故、このタイミングで現れるの?戸惑いながらも創星から目が離せない私の肩に蒼が手を置いた。
「今は集中しないといけないんだろ?ほら行こう」
「そうね・・・行きましょう」
促されるままに足を進めようとした私の後ろで、創星が「桜純の声がした?桜純、どこにいるんだ」と人混みの中で叫んでいる。
この距離でも私の声を拾う創星に驚きを隠せなかったけれど、私達は2階にある学園長室へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる