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第一章

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ことわりを作ったのも創造主たる私。

 そこから外れて悪を成すというのは、人の体で例えれば風邪のウイルスのようなもの。
ならば、私は抗生物質かしら?
このウイルスは自然治癒というわけにはいかないものね。

『消えなさい』

これで学園中の精神体は全て消え去った。

また新しいのが出てくるでしょうから、堂々巡りになるなだけでしょうが、消える際に何かを残すものもいるかもしれないからどんどんやっていきましょうか。

誰を探しているのかも調べないとね。

ああ、やる事が多くて楽しくなってきたわ。

見ているだけよりかなりいいわね。

早く寮に戻って白銀に伝えないとね。

サーチして人がいない、見ていない事を確かめて寮へと転移する。

創造主は手出しするな、とパパの世界の神に言われたのだけど、私が創ったものを私が始末をつけないでどうするの?

フフ、ウイルスさん。

私との追いかけっこは大変よ?上手く逃げてくれないとすぐに終わってしまうから、知恵を使って頑張ってね。

「白銀、仕事よ」

「主さん・・・なんかめっさ怒っとるんちゃう?顔が怖いで!」

「そんな事はないわよ?あ、そうそう。女の事はウイルスと呼ぶ事にしたからそれでよろしくね」

「うっわ、やっぱ怒っとる・・・ウイルスは消されるんやろなぁ」

「徳を積んでも、妬みで堕ちるなんて神と成す資格がなかったという事よ。羨望も妬みも使いようによっては成長の翼になるわ。でも、そのせいで誰かを貶めたなら、その者は怪物になるのよ。私達はが倒すのは怪物とその手下になっている人間。もしもタバサがそれをしたら、エステルのように蝶にでもなってもらおうかしら」

クスクスと笑う私を見て、白銀やしもべ達は顔を青くしたけれど、そんなに怖いかしら・・・。
どんなに気を付けて創っても、魂を持つ者は好き勝手に動くから全てを正す事はできない。
だから、手の届く範囲でやっていくわ。

人を唆すのも、唆されるのも赦さないわ。


「とりあえず、タバサの見張りは続行。一応、ニーナにもつけておいて。それと、しもべ達は精神体が湧いてきたら教えてちょうだい。一匹たりともこの学園に入れたくないから」

「了解。ほな、全員行くで!」

全員が出て行くと部屋がガランとしてしまった。
手持ち無沙汰になった私は、机に座って自宅の監視システムにアクセスする。
自動で危険認知できるのはラクだけど、今は生体のみなのよね。戻ったら霊体も入れておかないと・・・。

戻った時にする事を確認していると、メイドが支度をしろと言って来た。今日は、王族・公爵家の歓迎会があるのよ。

「ドレスは水色のグラデーションのものを、ネックレスとイヤリングはサファイアにするわ。髪はお任せするから可愛くしてね」

3人のメイド達は、私の指示にパッと動いてあっという間に変身させてくれる彼女達は本当に凄いと思うけど、ダイアクロスでは使用人と用事以外の会話を禁ずる法律があるから、名前を呼ぶ事すら許されない。
これは学園でも同じ。男子生徒は男性使用人しか許されないし、意味が分からないわ。

「お嬢様、これでよろしいでしょうか」

「ええ、ありがとう。じゃあ行ってくるわね」

「「「行ってらっしゃいませ」」」


さあ、最初の戦いの時間よ。









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